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若いサッカー選手と野球選手における症候性脊椎分離症の比較

▼ 文献情報 と 抄録和訳

若いサッカー選手と野球選手における症候性脊椎分離症の比較

Takuji Y, Takuya T, Hiroshi S, et al: Comparison of symptomatic spondylolysis in young soccer and baseball players, J Orthop Surg Res (IF: 1.777; Q2). 2020 Sep 3;15(1):378.

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

[背景] 脊椎分離症は若いアスリートにおける腰痛の主な原因である。しかし、スポーツ活動の異なる若年アスリートの脊椎分離症の違いを分析した研究は少ない。本研究の目的は、症状のある脊椎分離症を有する若いサッカー選手と野球選手の臨床的要因と、磁気共鳴画像(MRI)スキャンにおける脊椎分離症の病変の分布を比較することである。

[方法] 2017年から2020年の間にLBPの原因を評価するためにMRIを受けた7歳から18歳の若手アスリート267名の医療記録をレトロスペクティブにレビューし、脊椎分離症の患者を特定した。症状のある脊椎分離症の若年アスリートのうち、サッカー選手と野球選手の臨床要因とMRI所見をレトロスペクティブに評価した。臨床的要因としては、年齢、性別、LBP発症からMRIまでの間隔、スポーツフィールドでの利き足側などが挙げられた。MRI所見は、病変の数、腰椎レベル、病変の側方などであった。

[結果] 症候性脊椎分離症のサッカー選手33名(平均年齢15.4±1.4歳)と野球選手49名(平均年齢15.4±1.6歳)が登録された。患者はすべて男性であった。年齢とLBP発症からMRIまでの間隔には、両群間で有意な差は認められなかった。サッカー選手は野球選手に比べ、多発性(p < 0.001)、両側性(p < 0.001)の病変数が多かった。野球選手では、ピッチングやバッティングの際の手の利き手側と対側の病変が相関していた(p = 0.001)。

[結論] 脊椎分離症の病変の分布は、若いサッカー選手と野球選手で異なっていた。野球選手では、利き手でのピッチングやバッティングが対側病変と関連すると考えられる。症状のある脊椎分離症の若い選手を治療する際には、スポーツ特有の動作や利き足の側を考慮する必要がある。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

個人的には「身体特性・動作特性」を把握することは、非常に重要だと感じている。例えば、膝OAであれば内反膝はもちろん、脛骨の過外旋や立脚後期でのアブダクトリーツイストなど、様々な身体特性・動作特性がある。こうした疾患だけでなく、スポーツの分野においては競技ごと(同競技内での年代ごと)の身体特性・動作特性が明確になれば、障害予防にもなるし、障害を認めた際に、「どういう力学的負荷がかかっているか」の仮説が立てやすくなると感じる。・・・と考えると、こうした研究の臨床における意義がみえてくるのではないだろうか。


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