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歩行時の歩幅変動と感覚運動野の活性化

▼ 文献情報 と 抄録和訳

歩行時の歩幅変動と感覚運動野の活性化

Max J Kurz, Tony W Wilson, David J Arpin: Stride-time variability and sensorimotor cortical activation during walking, Neuroimage (IF: 5.902; Q1). 2012 Jan 16;59(2):1602-7.

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

[目的] 同一の脚から連続して足を踏み入れるまでの時間を「歩幅」という。この歩幅の変化が歩行バランスに影響することがいくつかの研究で明らかになっている。本研究では、機能的近赤外分光法(fNIRS)を用いて、内側感覚運動皮質の活性化が歩幅時間間隔の変化に反映されるかどうかを評価した。

[方法] 13名の健常成人(年齢=23.7±1.4歳)が、プログラム可能なトレッドミルを用いて、前方および後方に向かって歩行した。各歩行条件は2セッションで構成され,それぞれのセッションは,静止または0.45m/sでの歩行を交互に5ブロック行うものであった。内側感覚運動野の活動は,4×4グリッドの赤外線オプトードのエミッタ/ディテクタペアで構成されたfNIRSシステムを用いて測定した。視標はInternational 10/20 systemを用いて参加者の頭部に配置し,Czは視標の前2列の中央の下に配置した。実験では,補足運動野,前中心回,後中心回,上頭頂小葉の上に配置したチャンネルで,酸素化ヘモグロビン(oxyHb)と脱酸素化ヘモグロビン(deoxyHb)の量をブロックごとに変化させて評価した。実験中、フットスイッチシステムを使用して、歩幅の時間間隔に存在する変動量を同時に測定した。

[結果] 補足運動野、中心前野、上頭頂小葉では、前方よりも後方に歩く方がoxyHbの値が大きくなることがわかった。さらに、後ろ向きに歩いているときは、補足運動野に存在するdeoxyHbの量が有意に減少していた。これまでの研究と同様に、歩幅の時間間隔の変動量は、前進時に比べて後方歩行時の方が大きいことがわかった。さらに、前進歩行時の歩幅の変動量は、中心前野および補足運動野で見られたoxyHb反応の最大値と正の相関があった。

[結論] このような神経行動学的な関係は、歩幅の時間間隔に見られる微妙な変化が、前方の時間的運動を調節するための運動皮質の処理要求と一部関連しているという考えを支持するものである。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

前方歩行より後方歩行の方が当然、運動機会が少ないから、それに伴う脳活動の変化が生じているのだろうか。面白いと感じたところは、上記の研究を踏まえると、stepなどによりマルアライメントを認める立脚を修正させる運動学習exを狙う場合、前方へのstepを行うより、後方へstepをした方が新たな運動学習を定着させやすいのでは?というところだ。この思い付きには全く根拠がないし反論もあるだろうが、何故後方歩行を行うか、後方stepを選択するのか、考えれば考える程面白い。

少しでも参考になりましたら、サポートして頂ければ幸いです。