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(15)芸備線再構築協議会の設置

 ドーモ、パスタライオンです。今日は3/31、ジャパニーズ・サラリマンの大晦日です。1年の中でも大きなひとつの節目ですね。
 だいぶこのテーマでのnoteを書くのをサボって『美味しんぼ』の読み込みにハマってしまっていたので、節目つながりで、改正地活化法に基づく再構築協議会が全国で初めて設置された芸備線のことについて少しまとめようと思います。


前回の記事でこんなことを書きました。

 ここに改正地活化法の趣旨、改正に至った経緯、芸備線のこれまでの協議等の経緯を書いています。

○3/26 芸備線再構築協議会設置、初会合

 まずはニュースのリンクをご紹介します。

6日の会議では、幹事会を設けて、鉄道の利用促進やバスに転換した場合の効果を検証するための実証事業を検討することを決めました。

再構築協議会の開催は全国で初めてで、実証事業の結果などを踏まえて、鉄道を存続させるか、廃止してバスに転換するかなど、地域の実情に沿った形で公共交通のあり方が話し合われます。

協議会では3年以内をメドに結論を出すことにしています。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240326/k10014402751000.html

 地活化法改正後、年度内に再構築協議会が設置できてよかったな…と胸をなでおろしたのが私の本音のところです。これまで広島県・岡山県および沿線自治体は態度の硬軟の差こそあれ、当初は再構築協議会の設置・参加を拒んできたからです。(以下参考記事のリンク)

 '23年10月の改正法施行後、すぐにでも再構築協議会を設置するものと目されていましたが、斉藤国交相が「地元の同意なしに設置することはない」と発言し、その影響もあってか先延ばしとなり、その間にどんな「調整」が行われたのかはわかりませんが、ようやく3月の下旬に再構築協議会設置となりました。長かったね…ほんとうに。

・初会合で再認識されたJR西⇔自治体のギャップ

 初会合では改めてJR西と、自治体の問題認識ギャップが浮き彫りとなった形でした。
 JR西は、利用客の減少が著しいことを強調し、「鉄道が地域の役に立てていない」「今よりも地域にとって便利で、持続可能性な交通体系を議論したい」
  ↑ ↓
 自治体は「JRが維持するのがベスト」「JRが維持できない理由がわからない」「芸備線はまちづくりの中核である」「欠かせない移動手段だ」という感じです。

・そんなこと言っても数字は覆せないぞ

 私なんかは、本当に芸備線がまちづくりの中核であって、欠かせない移動手段であるなら、利用者が80~400人/日なんてことにはならんだろう+駅前が閑散としていて郊外の国道沿いに大型店舗が並びみんなそこに車で行くのをただ見てただけのくせにと、斜に構えてしまいます…

 両者の溝はどうやって埋めていくのかの方策や、「鉄道を維持するに足る」利用者増に向けた取り組みなど、これからの本邦鉄道の閑散線区対策においては非常に重要な議論がかわされるはずですので、今後の議論の行く末に期待したいです。これまでも三江線等であった議論と、また違うスキームで議論することになるので、改正地活化法をうまく使って、新しい解決策を見出してほしいなと期待しています。

・ パスタライオン、だいぶ穏健になったか?ヒヨった?

 これはNOです。心の中の黒いマグマは激しくうねっている、けれども私は「一度3年くらいは様子を見ようや」という再構築協議会の趣旨に賛同しているし、じゃあ3年間は「無駄なことやってんじゃないよ」とか「さっさと線路無くせ」とかってことを言わないように努力するようにしています。

◯ 残念すぎた広島県・湯崎知事の記者会見

 それでも言わずにおれないほど残念だったのが、これまでもいわゆる内部補助論でJR西が芸備線を維持すべきと再三に亘り主張してきた、広島県・湯崎知事の記者会見でした。

 このツイート&ツリーで、粗くはあるしカットした部分もあるけど、芸備線再構築協議会開始についての湯崎知事の記者会見をまとめています。そしてそのまとめを見た方のリアクションやご指摘も、リプや引用という形で残っていますので、よろしければ是非お読み下さい。
 湯崎知事は、乱暴に要約すれば

・JR西はめっちゃ儲けてるのに、なんで赤字線区をその儲けで維持できないの?
・もともとそういう、都会の儲けで地方を維持するっていう商売のはず
・JR西が再構築議論の対象にしたい線区の選定は恣意的

 っていうことを言っています。国、JR西の論点はそこにはなくて、あくまで「鉄道が地域の役に立てていない」「今よりも地域にとって便利で、持続可能性な交通体系を議論したい」です。この噛み合わなさは今に始まったことではなく、お互いにずーっと同じことを言い続けて今に至ります。
(湯崎知事の発言は事実誤認を多分に含んでいる上に、議論を膨らませて、話を大きくしていって、動き出さない大義名分にしようとしてる感じがしてとても嫌だ)

◯ 鉄道というのは馬鹿げた装置

 このマガジンで過去にも書いておりますが、鉄道というのは馬鹿げた装置なんですよ。(以下リンク参照)

「鉄道をやる意義って何?」それは定時+大量輸送です。列車なんていう馬鹿げた鉄の塊を運転し、それが安全に高速に運動するための線路という専用路を確保し、利用するために駅という専用乗降設備を設け、それだけの土地を確保し、設備を維持し、そのための人員も大量に必要となる。産業革命の生み出した鉄道というのはなんというバカげた装置なんでしょう…それが必要となるのは、大量の輸送需要があってこそであって、鉄道でなければ運びきれない人数が一斉に、定期的に、A駅からB駅に移動するって形態が実在しないなら、こんなバカげた装置は必要ないんです。環境負荷にしたってそうです、大量に使う前提であれば一人あたりがA駅からB駅まで移動するための排出CO₂も希釈されますけど、そうでないならあんな巨大な鉄塊を動かして環境にいいことなんてありえない。しかも、これ移動するときの排出CO₂とかNOxですからね。施設や設備、大型構造物の建設、維持補修にかかわるものは除外されてます。私は鉄道会社で働いていて、鉄道自体がエコだと思ったことは一回もありません。

 またSNSでも同様の発信をしました。

 観光促進、地元利用、改正地活化法のスキームを使って実証事業をやるために、大いに知恵を絞ってやったらいいのですが、鉄道の本分を忘れてほしくないな、とも思います。 

○最後に

 早々に県と沿線自治体はポジショントークのターンを終えて、地域住民に対して責任ある態度を示してほしい。地元・JR西・国がウィンウィンウィンというのは望むべくもないけれど、それぞれ損を分け合う、分担し合う形を目指して、ギアを上げて議論と行動を加速してほしいと願うばかりです。


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