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映画『HOKUSAI』感想(ネタバレ含む)

先月末封切りのHOKUSAI、観てきました。

もはや説明不要の浮世絵師、葛飾北斎の生涯を描いた映画です。トレイラーはこちら↓

青年期の北斎を柳楽優弥さん、老年期を田中泯さんが演じていらっしゃいます。

これから観に行かれる方のために、まずネタバレなしの感想を書きますと、

『この時代の江戸がどんな風だったか』と『その中でどのように葛飾北斎が生きたか』を描いた映画だったのかな、と自分は感じました。

同時期に活躍した歌麿と写楽が出てきたり、実際に浮世絵が売られているお店が出てきたり、実際の浮世絵作りの風景が出てきたりと、当時の江戸が感じられました。

本当にお店で浮世絵が売られていたんですよね。こんな風に店に並んでたのかなーと感動しながら観てました。

そして、出演してる俳優さんが豪華!お金かかってる!って思ってしまいました笑 完全な主観ですが、玉木宏さんが特にイケメンでした!出演時間はそんなに多くないのですが、玉木宏ファンの方はぜひ!

そしてなんといっても、田中泯さんがすばらしいです!ダンサーだけあって、立ってるだけで雰囲気というか、オーラがあって本当にかっこいいです。綺麗な人っていうのは、ああいう人のことを言うんでしょうね。田中さんでなければこんな表現はできなかっただろうなって思うシーンがありました。とにかくキャスティングが素晴らしい映画です。

次に、映像がキレイでした!浮世絵師の映画ですから、やっぱり色味にはすごくこだわったんだろうなーと感じました。また、カメラワークにもこだわりを感じました。切り取ったら絵になりそうなカメラワークだな、と感じるところがたくさんありました。特に後半が良かったですね。

そして、ここからはネタバレ感想になります。↓


①映画が投げかけたお題、答えを出さずに映画終了

実は観終わった直後、『え、ここで終わり?』と思ってしまいまして。。。というのが、この映画のキャッチコピー、『絵で世界は変わるのか?』というお題に対する答えが、こちらに丸投げされて終わったように感じたからです!!

劇中、何度もこちらにそれを考えさせるシーンはありました。この映画は、答えはそちらで考えてね、という映画だったようで。。(多分観終わったら答えは出せます。が、そのキャッチコピーで、その答えを出させたかったの?と思ってしまいました。。)

②北斎が自分のイメージと違う(完全に主観の問題で申し訳ない)

最近はテレビで一人の画家さんを彫りさげて紹介するような番組も増えましたよね。北斎を掘り下げた番組も見たことがあったのですが、その番組を見て自分が抱いたイメージとか、これまで作品を見て自分が持ってた北斎のイメージが、映画の北斎とちょっと合わないんですよね。

生涯何回も名前を変え続けて、常に新しいことに挑戦し続けていたとか、晩年は『画狂老人卍』なんていうエキセントリックな名前を名乗って活動してたとか、絵を描く以外何も興味がなく、家も散らかったら引っ越すとか、自分のイメージの中では相当人間味なくね?と思うような人なんですよ笑 wikipediaも念の為読んでみたのですが、私のイメージと近いことがたくさん書かれてるし笑

でも、映画ではそんなことないんですよね。一応常識を持ってる普通の人なんですよ。

絵狂いを現すシーンもいくつも映画には出てきましたが、なんとなくソレじゃない感があるんですよねー。もっと狂気じみたものがあったんじゃないかなぁとか。写楽が絵を描いてる時のような。

③ラストシーンの解釈

まず、どこまで史実に基づいて作っているのかな?と疑問を感じました。挿絵画家をしていたのは事実のようですが。。。

もし史実に基づいていたとしても、北斎は信濃に移動したりはしないんじゃないかな、と思いました。

信濃に移動したのは何を表してるのか?って考えると、絵で世界は変わらないことを悟った(=政府の弾圧に負けた)ってことなのかな、っていう結論にたどり着いちゃうんですよね。。ずっと挿絵を担当してた作家さんが自分のせいで殺された=やっぱり世界は変えられない→それを認めて江戸を離れるっていう構図が出来上がっちゃうんですよ。

それでも、ラストシーンで『とにかく絵が描きたい』と言って大きな波を描くシーンは、この『絵は世界を変えられない』って思ってしまった自分を奮い立たせるものとして描かれているのかな?と自分は解釈しました。

希望を残したエンディングにしてくれた点は良かったとは思いましたが、うーん。。。


結論として、浮世絵が好きで、当時の江戸の空気を感じる映画が見たい人にはおすすめできる、という印象を受けました。北斎の映画だ!って意気込んで観に行くのはおすすめしないかな。あくまで主観ですが。

最後に。

すごく好きな逸話がありまして。北斎は亡くなる直前、『あと5年、いやあと十年あれば、本物の絵描きになれたのに』と言い残して亡くなったと伝えられています。

ずっと勢力的に活動していて、作品も人気があって、画家として大成してるにも関わらず、常に探究心と向上心を持って絵を描き続けていた人ですよ?もうすでに間違いなく本物の絵描きですよ、凡人の私から見れば!笑 そんなすごい人が思う本物の絵描きって、どんな絵が描けたんでしょうね? もしあと十年長く生きていたら?このお話を知った時、そう思わずにはいられませんでした。

絶筆はこちら↓

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富士超龍図という作品です。90歳の時の作品ですよ?そんな年齢で描いたなんて感じられないくらい、力強さを感じますよね。幸運にも実物を見たことがあるのですが、この天に登っていく龍は、北斎自身なんじゃないかって思ってしまいました。絵から出るパワーがすごいんです!ぜひまた見たい!

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