『匿名』という名のレストラン

2年前に、大のお気に入りだったフレンチレストランが東京へ移転してしまった。それと前後するようにコロナ禍となり、外食もまったくしなくなった。まぁ、家の近くのカフェくらいは行くのだけれども。

今から7年ほど前、フランス語で「匿名」という名のフレンチレストランを訪れたことがある。
私が希望してパートナーに誕生日に連れて行ってもらった。その頃はカウンター席のみで、シェフがすべて対応するというお店だった。
実はそのシェフが最初に立ち上げた「エスパス」、そして移転して開いた「エスパス・トランキル」にも何度か足を運んだことがあり、好きなお店だった。

その流行っていたお店を突然閉じて、移転してこじんまりと始めたのがここだった。匿名というだけあって、入り口もわかりにくい。それでもお料理は素晴らしくて、大してフレンチに興味があるわけではない彼も「これは何度もトライアンドエラーを繰り返して作り上げた料理だな」を舌を巻いたほどだった。

そのお店を、母の誕生日で久しぶりに訪れた。
お店はコロナ前に改装されたそうで、カウンターではなくテーブル席になっていたけれど、調理からサービスまでシェフがこなすスタイルは変わらない。
そして、お料理は相変わらず素晴らしかった!相変わらずというのはちょっと違うかもしれない。お料理の方向性はずいぶん違った印象を受けた。以前は、盛り付け方にもかなりこだわりがあり、今風に言うとインスタ映えするような感じだったけれど、今は材料ととことん向き合って真っ向勝負!という感じ。スパイスや材料もエスニックなものやちょっと和風に感じるものも取り入れつつ、それでもちゃんとフレンチ。アミューズからデザートまで意外さに驚きつつ美味しく、大満足だった。

Instagramでお料理の写真はお断り、という文言を見た気がするので写真は撮らず、記憶に留めて目の前のお料理を堪能した。見かけが地味なのに、味がとても良かった場合、インパクトが大きい。なかでも二つ目のデザートの、栗とヘーゼルナッツのクリームの上にゆるい生クリーム、ベリーのソースを添えたデザートは、絶品だった。

飲食店はコロナで本当に大変だと思う。
特に、フレンチなんてワインが飲めなかったら楽しみが半減してしまう。
お店が続いていたことに感謝して、また伺おう。

L'Avenueでケーキとチョコレートを買って帰りました。


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