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City of City

学生の頃から、お気に入りの喫茶店があった。
その名は『City of City』。
フロアにはグランドピアノが置かれ、ゆったりとしたソファが配置され、コーヒーやロイヤルミルクティが供されるカップは、リモージュやロイヤルコペンハーゲンやウェッジウッドなど名品ばかり。優雅な雰囲気で低めの音量で流れる音楽はジャズが多かったように思う。

このお店を教えてくれたのは、他大学へ通う友達だった。
彼女とは、不思議なきっかけでおつきあいが始まる。
私の高校の同級生と、彼女のボーイフレンドが大学で同じ体育系クラブに所属。彼らの練習試合を観に行ったときに出会い、せっかくだからお茶でも飲まない?と彼女のボーイフレンドの誘いで4人で喫茶店へ。色々話すうちに、同じ市内に住んでいることがわかり、仲良くなった。

彼らが取り組んでいたスポーツの応援へ一緒に行くことはもとより、同じ市内なのでランチやお茶、コンサートへ行ったりなどもして学生時代の色んなことを共有した。
彼女は同い年ながら、とても魅力的な女性だった。言葉遣い、立ち居振る舞いがとても優雅で、私はひそかに憧れ、真似をしてみたりしたものだった。

City of Cityは、彼女が最初に連れて行ってくれて、私も色んな友達と訪れた。同じ大学の友達、就職してからは仲良しの同期、それから歴代の?ボーイフレンドとも。とても想い出の多いお店だった。
その頃は誰と会っても、〆は必ずCity of Cityでお茶を飲む・・・というパターンが多かった。長居しても嫌な顔をされることもなく、キャパシティの大きな素敵なお店だったなと思う。

そんな大好きなお店だが、今はもうない。
阪神大震災でビルが倒壊し、再開することなくそのまま閉店してしまった。
オーナー夫妻の消息を知る術もなく、それから20年近い月日が流れた。

そんなある日、彼女の訃報が届く。
共通の友人から知らされたときは、どういうこと?と飲み込めなかった。
彼女は大学の同級生と結婚し、子育ての傍ら重要な仕事を続けていて、結婚式以来もう何年も会える機会はほとんどなかったが、落ち着いたらまたゆっくり会えると信じていた。その彼女が天国へと旅立ってしまった。。どうして?あんなに大切にしていた子供たちを遺して。
さぞ心残りだったことだろう。。
神様は意地悪だ。
知らせてくれた友人の計らいでご主人の元へお悔やみへ伺い、それ以来、1年に一度か二度は食事をして、彼女との想い出を語り合う機会を設けていただいている。

そんなある日、ご主人のお宅で昔からコレクションしているというマッチ箱を見せていただいていると、City of Cityのマッチがあった!

思わず、わぁ懐かしい!と声を上げると、懐かしいやろ?いい店やったよなぁと話が続き、あのオーナー夫妻はとてもお金持ちでなかば趣味でお店をされていたこと。震災でお店は閉じたが、お元気であることを教えていただいた。お元気だったんだ~よかった!長年、気になっていただけにとてもホッとした。

そういえば、この4人でもダブルデートのような形で訪れたことがあったっけ。あのお店に一緒に訪れたことがある友達とは、今でも話題に上ることがある。
阪神大震災からだいぶ経って話をしたら、震災後にCity of Cityがどうなったのか見に行ったという友人、知人が数人いた。そんなお店、もうなかなかないのではないかしら?少なくとも今の私には他にはない。
ただ、そんなみんなの思い出が詰まったお店に一度でも出会えたことに幸せを感じている。


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