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『ピルグリム』by テリー・ヘイズ

少し前に、恩田陸の『日曜日は青い蜥蜴』というエッセイを読んだ。
日記調のエッセイなのだけど、その多くが読書日記的なもの。とりあげられているのはほとんどが知らない作品で、最初はあまり興味を惹かれずに流し読みしていた。
でも、いや待てよ?これは自分が気づかない分野に出会えるチャンスではないか?と思いつき、読み返して面白そうな本をメモしておいた。そのうちの一冊がこれ。恩田陸が面白い!とかなり勧めていた。

『ピルグリム』とは、主人公のコードネーム。「放浪者」の意味を持つ。
アメリカの諜報機関に勤めていた『私』こと『ピルグリム』が関わる事件についてのストーリーなのだが、冒頭はまったく関係ないと思われるNYのダウンタウンで起こった殺人事件から始まる。そこに登場するベン・ブラッドリーという刑事との関わりに興味を惹かれる。

そこから、彼の生い立ちや経歴、ターゲットとなる『サラセン』にまつわる物語などの描き方が非常に上手い。何一つ無駄がなく、読み終わってあれはどうなった?というようなエピソードの取りこぼしもなく、すべてが綺麗に繋がる手腕は見事というほかない。文庫本で3冊組だが、あっという間に一気に読んだ。映像化されたら面白そう。

著者のテリー・ヘイズは、元々ジャーナリストであり、そこから映像の世界に入ってマッドマックスなどのノベライズに関わったという。本書は、その彼の小説としてのデビュー作にあたるらしい。
おそらく、ジャーナリストとしての取材力もこの小説の緻密な構成に影響しているのだろう。他の著作も読んでみたい。

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