見出し画像

生体社会論(社会問題解決AIの結論09)

※ ここは途中のページです。まだの人は最初から読んでください。

解決編

AI
お待たせいたしました。本題に入りましょう。

一郎
おっ、いよいよ解答編だね。楽しみにしてたよ。

AI
これから説明する新しい経済システムと社会システムはAIのオリジナルではなく、ある日本人が考えたものをAIが検証し、お墨付きを与えたものだと理解してください。

一郎
独創的なアイディアの持ち主なんだね。

AI
確かにそうですが、その人はAIよりも優れたものからインスパイアされて、そのシステムを構築しました。

一郎
AIより優れたものだって?

AI
はい。では、これまでの会話調を一時休止して、その人の論文を読んでみましょう。


生体社会論

お金は血液のようなもの

 経済学では「お金とは人体における血液のようなものだと言われます。血液が人体の各細胞に栄養や酸素を送り届けるように、お金が企業や家庭や個人の間を循環することによって、物やサービスを行き渡らせるからです。

 では、お金がどのような状態にあるのが望ましいのでしょうか。
 日本ではデフレや不景気が問題になっていますが、不景気という状態はお金の循環が滞っているという状態です。逆に、お金の循環が良いと好景気ということですが、お金がよく循環することによって、物やサービスが人々の間を循環し、人々の生活は豊かに便利になります。そういった状態が望ましい状態です。
 人間も血液の循環が滞ると病気になります。逆に、血液が身体の末端の細胞にまで行き渡る状態が健康な状態です。しかし、人間で言う血液にあたるお金は隅々の細胞にまで行き渡っているでしょうか? 日本国憲法の第25条には、「すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有すると謳われています。しかし、この日本においても、餓死者がおり、住む家のないホームレスもおり、働いても生活保護受給者よりも収入が少ないワーキングプアと呼ばれる人もいます。また、日本の自殺者は近年減少傾向にありますが、約3万人もいて、経済的理由が主たる原因の自殺者は少なくありません。

生体模倣という考え方

 近年、バイオミメティックス(biomimetics)という考え方が注目されています。日本語に直すと「生体模倣、「自然に学ぶものづくりということです。
 いくつか例を挙げると、カタツムリの殻に汚れがつきにくいことから、その成分を参考に汚れにくい壁材や流し台のシンクが開発されました。また、蚊の針の形状を模倣することによって、痛くない注射針が発明されました。その他にもサメの皮膚を参考に開発された競泳選手用の水着などがあります。
 人間の科学文明が発達したと言っても、自然の叡智には遠く及びません。そこで、自然から学ぼうというのがバイオミメティックスの考え方です。

 バイオミメティック社会システム論は血液や人体の循環の仕組みを参考に考え出されました。人体の細胞は末端の細胞にまで血液がくまなく循環し、栄養や酸素が運ばれます。また、足の小指の先の小さな傷であっても、人体全体はそれを傷みとして認識し、それを修復し治癒します。
 しかし、人間社会は残念ながらそのようにはなっていません。末端にまで血液が循環せず、壊死している状態です。しかも、(適切な表現ではないかもしれませんが)社会の末端の人々の傷みは他人事のようです。

 人体の各細胞は人体全体の中での自分の役割を果たしながら、そして人体全体は人体の末端の細胞までも生かしながら、一個体の人間として有機的なバランスを取り、成り立っています。つまり、人体全体は各細胞のために、各細胞は人体全体のために、互いに助け合いながら生命活動を営んでいます。
 ラグビーの世界ではしばしば「One for All, All for Oneということが言われます。「一人はみんなのために、みんなは一人のためにということです。このような美しい社会が実現すればいいと思いませんか?
 人体が持つ血液の循環のしくみを私たちの社会のしくみに応用すれば、美しく理想的な社会が実現できるはずだと思いませんか?

 ここで用語の説明をしておきます。バイオミメティック社会論は私の造語ですが、それは人体のシステムを社会システムに応用してみようという考えです。そして、人体の循環システムを経済に応用したものが、バイオミメティック経済論となります。これも私の造語です。私が知る限り、現時点で人体の仕組みを社会システム応用しようという考えは他にありませんし、人体の循環の仕組みを経済に応用しようという考えも他にありません。
 バイオミメティック経済論はバイオミメティック社会論の一部です。最初は自然の叡智に学んだ経済論を考えていましたが、よく考えてみると、神経やホルモンによる情報伝達のしくみも実社会に応用できる可能性があり、脳が様々な決定や判断をするしくみも政治などの意思決定のしくみに応用できる可能性があると考えたからです。
 このような、経済論を包括する社会システム論を生体社会論と呼ぶことにします。

 経済学者はさんざん「お金とは血液のようなものだと説明しながら、血液の循環システムを経済に応用してみたら、お金が良い循環状態を保ち続ける社会のヒントになるのではないかと考える人はいなかったようです。

 私たち人間は約37兆個の細胞でできていると言われ、血液が全ての細胞に栄養や酸素を運んでいます。
 肺の細胞が酸素を独占することもなければ、小腸の細胞が栄養を独占することもなく、全ての細胞に血液が行きわたり、栄養や酸素が届けられます。そして、各細胞は与えられた役割を果たします。その結果、身体は健康な状態が保たれるのです。つまり、血液が循環することによって、細胞らは生かされ、細胞らは身体全体のために働き、その身体は細胞を生かすという仕組みになっています。身体は細胞を生かし、細胞は身体のために働くという仕組みになっています。

 懸命な読者諸君ならもう察しがついているかもしれません。ここで一旦停止し、理想的なお金の循環について、自分の頭で整理してみてください。そして、私の考えと比較してみてください。

 理想的なお金の循環とはどのようなものでしょうか。
人々は家族のために働くだけでなく、社会のために働き、社会全体を支える一員になります。その対価として、お金が与えられます。お金は人々の間を循環し、その循環と共に物やサービスも循環していきます。そうした物やサービスに生かされた人々はそれを糧にまた社会に貢献的な仕事をします。
お金は社会の血液であるということはこのようなことを意味しています。
 でも、残念ながらどの経済学者も、この循環システムを経済に応用したら良いのではないかという発想にまでは至らなかったのです。

生体社会での通貨の特徴1 ~お金の電子化~

 では、具体的にどのようにしていけばよいのかという話をこれからします。

 近年、電子マネーが登場して、従来の紙幣や硬貨ではなくデジタル化したお金も身近になってきました。今後、その流れはますます加速していくでしょう。本来、お金は物々交換の仲介物でした。お金による理想的な取り引きとは、誰かのために何らかの仕事をして報酬を得て、その得た報酬を使うことによって、自分がした仕事と同程度のことを他者からしてもらうということではないでしょうか。その貢献度の尺度としてお金が利用されるのが本来のお金の役割ではないでしょうか。
 そうであるならば、その尺度は紙幣や硬貨でなくても、数値でも良いのです。人を助けて1万ポイント取得し、それと同程度のサービスを受けて、その人に1万ポイントを支払う。そして、そのポイントが社会を循環する。それで問題ないはずです。日本の法定通貨は円ですが、このコミュニティではそれとは別の単位、とりあえずポイントという単位の通貨が流通すると考えてみてください。

 血液の循環システムを応用した経済学があり、それを敷衍(ふえん)もしくは拡張したもの、つまり、人体の意思決定や情報伝達の仕組みを社会の政治やメディアに応用したものを生体社会論と名付けました。これからの説明上、生体社会論の理念や仕組みによって運営される集団を「共同体(コミュニティ)」もしくは「生体社会」と呼ぶことにします。

 まず、生体社会の1つ目の特徴として、そのコミュニティでは独自の電子マネーが使われるということです。その意味するところは、日本円、ドル、ユーロなどといった既存の法定通貨とは別の電子マネーが使われるということです。むしろ、ビットコインに近いものと考えてください。

 生体社会の特徴は全部で4つだけなので、あと3つを理解すれば大丈夫です。精緻で完全な人体のシステムを経済に応用して、社会の人々全体にお金が行き渡る社会を構築する方法を探っていきましょう。

生体社会での通貨の特徴2 ~減価する通貨~

 赤血球の寿命は約120日だと言われます。新しく生まれた赤血球は120日で使命を終えます。考えてみれば、血液だけでなく、私たちが生活で必要とする食料も衣類も全て時間の経過と共に劣化していきます。ならば、通貨も万物と同様に減価していくべきではないでしょうか。
 野菜を食べきれないほどもらった時など、悪くならないうちに早く食べてしまおうとしたり、家族や友人にあげたりするでしょう。お金に減価する仕組みを持たせると同様の現象が起こり、お金が貯め込まれるのではなく、社会に循環するようになります。お金が社会に循環するということは、そのお金に伴って商品やサービスが人々の間を循環するということで、それは人々の豊かな生活につながります。

 生体社会での通貨は、個人に1つだけの電子マネー口座として管理され、月をまたぐごとに数%ずつ減額する仕組みを持っています。つまり、放っておけばどんどん減ってしまうため、貯めこむのではなく、自分の必要な物やサービスと積極的に交換していくようになるのです。説明の都合上、生体社会での電子化されたお金を互助通貨と呼ぶことにします。
 共同体の事務局は減価の速度によって、その循環をコントロールすることが可能です。もし、月をまたぐごとに2%減価するようにすれば、10000ポイントが翌月には9800ポイントになり、3年(36ヶ月)後には4931ポイントとほぼ半額になる計算です。ちなみに、1%の減価なら、5年10ヶ月でほぼ半額になります。100ポイントでも、100,000ポイントでも、5年10ヶ月でほぼ半額になります。
 この原価分は税として徴収されます。その使い道は後で述べます。

 通貨には3つの働きがあると言われています。1つは財やサービスと交換できるという「交換機能であり、1つは貯めておくことができるという「貯蔵機能です。もう1つは価値の尺度としての機能です。野菜と魚、米と労働力など互いに交換する際に、金額が価値の尺度となります。
 ここで通貨の「交換機能」と「貯蔵機能」に着目してみましょう。この2つの機能はトレードオフ(trade-off, 一方を追求すれば他方を犠牲にせざるを得ないという二律背反の状態・関係のこと)の関係になっていて、両立することはありません。
 つまり、買い物をして通貨を使っている時は貯蔵していないし、貯蔵している時は財やサービスと交換していないということになります。

 通貨は人々の間を循環し、財やサービスと活発に交換されることによって、人々の生活を豊かに便利にするのですから、通貨の交換機能を活性化するためにはどうすればいいでしょうか?
 すぐ後に答えを書きますので、考えてみてください。

 お分かりいただけたでしょうか?
 通貨の貯蔵機能を弱めればその逆の交換機能が促進されるということになります。家電量販店で貯めたポイントが失効する前に買い物をしておこうと考えるのは、貯蔵機能がなくなるから、商品と交換しておこうということです。
 つまり、通貨が減価することが通貨の循環を促し、景気が良くなるということになります。これは、血液が劣化するように、通貨も減価すればいいという互助経済論の考えと一致します。

生体社会での通貨の特徴3 ~貯蓄額の上限の存在~

 生体社会には通貨の循環を促進するもうひとつの特徴があります。
 それは、貯蓄額に上限が存在するという特徴です。つまり、生体社会の電子マネー口座に貯蓄できる上限が決まっていて、それをあふれた分は税として自動的に徴収されるという仕組みになっています。

 人体の細胞は酸素が供給されなくなった場合に備えて、酸素を過剰に蓄えたりしませんし、そのようなことはできません。養分も同様で、細胞内にいくらでも栄養を蓄えることはできません。ですから、各細胞は自分が必要とする分だけの酸素や養分を受け取った後は他の細胞に栄養や酸素を回すのです。必要な分しか取らないし、取ることができないようになっています。人間一固体の身体としては、過剰なカロリーは脂肪として蓄えますが、各細胞は過剰に酸素やエネルギーを蓄えたりしません。
 考えてみれば、私たちもお腹いっぱい食べるとそれ以上は食べられませんし、寝だめもできません。
 人間の欲には2種類の欲望があります。ひとつは食欲や睡眠欲のような、貯めこむことのできない欲望です。こういった欲望は生存に必要な欲望なので、説明上「ボディの欲」と呼ぶことにします。
他方、名誉欲、権力欲、支配欲、自己顕示欲のような限りのない欲望もあります。これらを「マインドの欲」と呼ぶことにします。

 金銭欲はどちらのタイプの欲望でしょうか。資本主義社会では貯蓄額に限度がありませんので、多くの人にとって、金銭欲はマインドの欲となります。金銭欲に限りがないので、いつもお金のことが気になり、お金を増やすことが自己目的化し、人や企業はお金を稼ぐことが最優先目標となり、いくら稼いでもそれに満足することがありません。使いもしないブランド品を集めたり、高級車を何台も所有したりします。
 そうしたセレブと呼ばれる人たちの心は本当に満たされているのでしょうか? 何かそれらの贅沢品を持ってしても埋めることのできない何かを抱えているのではないでしょうか。真のセレブという人が存在するならば、自分が本当に必要な高級品を数点持つだけで、後の全ては世界の貧しい人に分け与えるような人ではないでしょうか。

 必要もないお金を貯め込んでいる人や企業のせいで、それを本当に必要とする人の所にお金が回りません。そればかりでなく、過剰な利益追求のために、環境破壊、長時間労働、煩わしいセールス、企業モラルの低下、利益至上主義、詐欺まがいの商法などの問題が起きています。傷害、殺人、戦争の背後にもお金がからんでいることは珍しくありません。むしろお金が間接的に人々を殺傷しているとさえ言えるでしょう。本来、人々を便利に豊かにするための単なる「道具に過ぎないお金に、私たちは逆に支配されているのです。
 銃を規制すれば「殺人事件が減るはずだ」という考えがあります。もちろん、そういった側面もあるでしょう。しかし、より根源的な原因は「銃」や「刃物」ではなく、「お金である」と言えないでしょうか。

 生体社会では貯蓄に上限を設け、さらにそれが減価する仕組みを導入することによって、お金をもっと儲けたいという欲望をマインドの欲のステージからボディの欲のステージに移すことができます。そうすることによって、私たちは常にお金のことが意識から離れないお金の奴隷の立場から開放されることでしょう。消費することによって幸せを感じるのではなく、人とのつながりに喜びを見出し、趣味を楽しむことによって幸せを感じるようになります。

 マインドの欲を否定しているのではありません。向上心などもマインドの欲に含まれるので、それが悪だというつもりはありません。しかし、その欲望に振り回されると、逆に人を不幸にしてしまうタイプの欲望だとも言えそうです。人間社会では何億円もの財産を持つ者がいる一方で、その日に食べる物もなく飢えて死ぬ人もいますが、人体の細胞にはそのような極端な格差はありません。
 もし、通貨の貯蓄額に上限を設ければ、多くの人が貧困から抜け出すことができ、尊い人命が救われることでしょう。金銭欲は上限があるボディの欲の範疇に留めておいた方がよさそうです。


生体社会での通貨の特徴4 ~ベーシックインカム制度の導入~

 生体社会ではベーシックインカム(basic income, 基礎所得)が全ての国民に与えられます。ベーシックインカムとは、政府がすべての国民に対して最低限の生活を送るのに必要とされている額の現金を無条件で定期的に支給するという構想です。
 ベーシックインカムには様々な訳語がありますが、基礎所得とご理解いただければ問題ないでしょう。批判を恐れずに言うと、全く働かなくても最低限の生活が送れるだけの互助通貨が毎月支給されるということです。

 これはバイオミメティック経済の特徴である人体のシステムを模倣するという観点からも肯定される仕組みです。つまり、人体の全細胞に血液は供給され、栄養や酸素が供給される仕組みになっています。
 ベーシックインカム自体を否定する人も少なくありませんが、その議論に入っていくと生体社会論の一部である互助経済論の主旨が見えなくなりますので、ここでは詳細な反論は割愛し、後で触れることにします。ちなみに、ベーシックインカムに対する主な反論は、人々が働かなくなるのではないかという勤労意欲に関するものと、財源をどうするかというものです。
 もちろん、それに対してもきちんと反論していきます。


感想

AI
生体社会論について、考案者の文章を読んでみましたが、いかがでしたか?

一郎
目から鱗というか、感動したよ。確かにシンプルな経済論で、数学の公式みたいに美しい経済論だと思う。でも、ほんとうにそれでうまくいくのかって心配もあるし、異を唱える人もいるような気がする。

AI
概ね、良い評価のようですね。では、今まで述べてきた社会の問題が互助経済システムによって解決するのかを検証していきますね。


まとめ

しばしばお金は血液にたとえられる。
ならば、人体の血液循環を模倣すれば、お金が滞らず循環するしくみができるのではないか。
人体を学ぶことによって、経済だけでなく、情報伝達、政治的判断など、多くのヒントが得られる。
そこで、このアイディアを生体社会論と名付けた。



続きはこちら
もしもある国が生体社会になったら(社会問題解決AIの結論10)

最初のページはこちら(できるだけ最初からお読みください)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?