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所有権より利用権(社会問題解決AIの結論19)

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一郎
ついでに、若い人の加入率とか状況についても聞かせてもらいたいんだけど。

雨宮
加入率は爆上がりですよ。
若者の特徴として、生体社会論の崇高な理念に共感というより、単に得だから、便利だからということで加入している人が多いです。
資本主義のファミレスに行っても、日本円を持ち合わせてなかったら、その分に相当するぐらいのポイントを送り合ったりして、よく利用している感じです。
私も数年前は女子高校生だったんだけど、女子高生が社会の流行を作るって部分も確かにあると思うし。

一郎
なるほど。
女子高校生に流行らせてもらうというのもいいね。

雨宮
あと、共同体に入ると生活力がアップします。
資本主義社会では、私たちがお金を稼ぐには、アルバイトとか企業を経由してでしか稼ぐ手段がこれまではなかったんです。
まあ、メルカリとか出てきたから、全くないっていうのも違うんだけど、個人間の取り引きって、なんか危ないことが多かったりもするので、不便は感じてました。
でも、ポイントのやり取りは企業を通さなくてもできるから、アルバイト感覚でポイントを稼げるの魅力ですね。

一郎
どんな風にお小遣い稼ぎしてるの?

雨宮
一人暮らしの高齢者の買い物代行とかしますね。
ご近所のおばあちゃんから連絡があって、千鶴子ちゃん「何々帰りに買ってきてくれないかな?」とか言われて。
買って帰ったら、お礼にポイントを少しくれたりして。
まあ、今までだったらお礼にお菓子とかだったけど、ダイエットしてると嬉しくないし、お金をもらうのも変だし、ちょうどポイントならお互いに便利なんです。

あと、月に何回かあるのが、保育園へのお迎え仕事。
近所の働いているお母さんで、急な残業でお迎えに行けない時に、お願いされるの。
最初は迎えに行った時に、保母さんに電話で状況を説明してもらったけど、もう何回もお願いされてるから、保母さんも「さっきお母さんから連絡があったからお願いね」みたいな感じで、やっぱ同じ人に依頼するのって、信用にもつながるし、便利なんだよね。
もちろん、そのたびにポイントでお礼をしてくれるんだけど、人間関係ができてくると、ポイント以外にもいろいろくれたりして、とても助かってる。

一郎
いい感じに、ポイントで助け合いが促進されてるんだね。


所有権より利用権

雨宮
あと、気に入ってるのは『ブランドバッグレンタル』かな。

一郎
何それ。教えて。

雨宮
生体社会論の考え方の中に、『所有権よりも使用権』という話があるんです。

一郎
『所有権』というのはよく聞くけど『使用権』といのはあまり聞かないけど、使うことができる権利ってことでしょうか。

雨宮
その通りです。
私たちでも、デートの時ぐらいブランドバッグでデートに行きたいと思うんです。
でも、若者の給料ではそんな高価なものを買う余裕はありません。

でもね。
よく考えたら、そのブランドバッグって、自分で買わなくてもいいですよ。
つまり、所有権がなくてもいいってことです。

一郎
確かにそうだね。

雨宮
使いたい時に使えるという使用権があればいいんです。

一郎
生体社会論らしい考え方だね。

雨宮
はい。
使いたい時には、共同体内企業のレンタルショップのサイトで予約すればそれで完了です。
その日に取りに行くか、郵送してもらえば使えます。
もちろん、きちんと返さないといけないし、ポイントの支払いも必要ですよ。

一郎
でも、資本主義下の企業に比べてずっと安いということなんだね。

雨宮
はい。
安い理由はもうお分かりですよね。

共同体の企業の目的は株主の利益を最大化することではありません。
その目的は、メンバーに喜ばれること、その企業では働いてくれる人がやりがいを感じることです。

一郎
「企業の所有者は株主なんだから、その目的は株主の利益を最大化することが目的」という考え方は日本人にはなじまない気がするね。
企業は社会のものという考え方は気に入ったよ。

雨宮
資本主義の会社だと、お金を払うお客さんの方が偉いということで、店員が理不尽なことを言われたりしがちですが、共同体ではそんなことはありません。
お客さんだろうと、店員だろうと、正しい方が正しいということです。

一郎
資本主義下では『お金を払う方が偉い』という考えがあるけど、そうではないということなんだね。

雨宮
共同体の店員もお客さんを大切にする気持ちは同じです。
でも、それはお金のため、ポイントのためじゃないんです。
『お金を払う方が偉い』という考え方は、お金に支配されているとも言えそうです。
私たちは対等です。
ポイントを支払う人は、そのポイントと、交換される物やサービスが釣り合うと思うから取り引きするわけですから、対等なんです。
だから、ポイントを支払う方が偉いって感覚はないですね。

一郎
そうか。
最近の若者はコンビニの店員やウェイターさんやウェイトレスさんに丁寧に接するよね。
たまに、そういった人に横柄な態度を取る人を見かけるけど、だいたい高齢者だね。
若者から学ぶことも多いと思うよ。

雨宮
等価交換なんだから、この人には売りたくないって思えば、売らないことも当然できます。
まあ、共同体のメンバーにそんな人はほとんどいませんが。
仮に、共同体の居心地の良さを壊すような人がいれば、共同体から追い出されると思いますが。

一郎
なるほど。
「共同体の仲間に入りたいんだったら、お行儀よくしてね」ということなんだね。

雨宮
はい。
重大な犯罪をしても、日本国籍を剥奪されることはありませんが、共同体なら、口座を凍結させることも可能ではありますからね。

一郎
いろいろと気づきがあったけど、所有権と使用権の話に戻すね。
使いたい時に使えさえすれば、所有権は必要ないという考え方はエコにもつながるね。

雨宮
はい。
資本主義社会では大量消費でお金を循環させますが、共同体では節約してもお金は循環します。

一郎
家計レベルでは節約は好ましいことだけど、社会全体ではみんなが節約すると不景気になるという資本主義には矛盾が含まれていたんだね。
それに比べて、生体社会論ではそういった矛盾がなくなっていて、素晴らしいよ。

雨宮
資本主義下では、顕示的消費とか誇示的消費が占める割合が多いそうです。
顕示的消費も誇示的消費も同じ意味ですが、自らの財力とか、自分は成功者だということを周囲に見せるための消費ということです。
ブランドバッグ、高級車、高級腕時計とかを身に着けることによって、それを示そうとすることで、簡単に言えば見栄をはるための消費ってことです。

一郎
それって、かえってみっともないこともあるよね。
高級腕時計を見せびらかしても、社会的な尊敬は得られない気がするよ。

雨宮
共同体のメンバーを中心に、だんだんそういった価値観が広まってきているようです。
若い人の間では、コンビニの店員さんとか、清掃員さんにも親切にできる人がクールでかっこいいという価値観なんですが、だんだんその価値観が資本主義社会の中にも広まってきている感じがします。
そんな感じで、高級なものを所有している人に対して、うらやましいとか、すごいとか思う人は少なくなりつつあるような気がします。

誤解してほしくないのは、高級なものづくりの文化(伝統文化)は失われません。
漆塗りのお椀とか、西陣織とか、共同体でメンバー(会員)の共有の財産として、定期的に一定数を購入するので。

一郎
素敵な取り組みだね。
海外での文化財とか美術館や博物館に飾られている物といえば、昔の貴族が使っていた物とか、収集していた美術品がほとんどだ。
でも、日本ではそんなに極端な貧富の差がなくて、全国各地に庶民が使う優れた名産品がたくさんあるんだ。
現代の歴史教育は歪んでいるから、なかなかそう思っている人が少なくて残念なんだけど、みんなが幸せに、豊かに暮らす社会が日本にはあったんだよ。

雨宮
世の中の風を感じてみると、資本主義まっただ中の現代でも、シェアリングエコノミー(Sharing Economy)という考え方が広まってきたようです。
シェアリングエコノミーとは、『個人が保有する遊休資産(スキルのような無形のものも含む)の貸出しを仲介するサービスであり、貸主は遊休資産の活用による収入、借主は所有することなく利用ができるというメリットがある』と説明されています。

一郎
生体社会論が広まる時代の下地づくりができてきたって感じだね。
土地を囲って、「これは俺の土地だ」と主張するのもいいけど、共同体が所有する土地を「会員がみんなで有効に使う」のも、みんなが幸せになる方法だね。

雨宮
そうです。
所有権は必ずしも必要ではなく、使用権の方がより多くの人を幸せにする可能性があると感じています。



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金持ちの言い分(社会問題解決AIの結論20)

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