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「モナリザの瞳」~私を、誰かが見ている~

 その視線に気づいたのは、まったくの偶然だった。
 彼女はいつも私を見守っていた。朝目覚めた時も、酔いつぶれて帰って来た夜も、穏やかな眼差しで私を包み込んでくれた。

 私が見つめると、彼女も見つめ返した。部屋から出ようとする時も、まるで追いかけるような視線で私を見つめていた。物言わぬ彼女は、私が以前描いた女優の似顔絵だった。

 ただの思い過ごしなのだろうか。絵と向かい合った時、彼女はもちろん正面の私を見ている。でも、左右から見たり、下から見上げても彼女の視線は私に注がれている。つまり、どの位置からでも私を見つめているのだ。

 この体験は私だけなのか。インターネット上で「視線、錯視」をキーワードに検索してみた。NTT関連の研究所が表示され、その掲示板に私の体験を書き、後日の回答をお願いした。

 再度訪問して分かったのは、昔から欧米では知られている現象で、名画を鑑賞した人々の「モナリザの瞳が追いかけてくる」という噂が発端らしいのだ。人間の視覚が「目」に対して特異に反応する結果起きる現象だという。

 誰でも体験する事だと知って安心した。皆さんもぜひ確認してほしい。ただし生身の人間には止めた方がいいのかもしれない。ストーカー呼ばわりされないためにも…。


〔P.S.〕この現象は「モナリザ効果」とも呼ばれています。
昔、ホログラフィーの原理を使って再現された、立体の胸像を眺めた時に、
「モナリザ効果」はありませんでした。二次元と三次元の違い?

内田有紀の似顔絵