見出し画像

障害がある子どもを育てる時に一番大切なこと。後編。

「可愛がられること」が本人を守ってくれる。と前回書きました。では、どうしたら可愛がられる子に育つのでしょうか?

答えは簡単です。可愛がって育てれば良いのです。

子どもはどんな子でも可愛いですよね。その「可愛い」と思う気持ちをそのまま子どもに伝えてください。ぎゅっと抱きしめてもいいし、「大好き」と言葉にしても良いし、目を見つめるだけでも構いません。すると子どもは反応を返してくれます。それを見たら、更に可愛いと思うでしょう。それをまた子どもに伝えてください。

そうやって、愛情のキャッチボールをするのです。

愛情のキャッチボールは、次第に大きくなって私たちを包んでくれます。キャッチボールするうちに、愛情がどんどん膨らんでくるのです。それに包まれた時の幸福感は何ものにも変えがたいものです。「この子を産んでよかった」と心から思えるでしょう。

そういう愛情の循環を幼い頃に何度も経験した子は、人から可愛がられます。ふと目が合った時、挨拶をしたとき、ありがとうと言った時。私たちは「小さな好意」を相手に投げかけています。それを素直にキャッチして相手に返せること。これを身につけさせてあげれば良いのです。

それには何も言葉を話す必要はありません。目が合えば心は伝わるからです。お子さんに自閉症があると目が合いにくいとか、感情が表に出にくいということで悩まれるかもしれません。でもちゃんと伝わります。自閉症の子の繊細な感情表現は、繊細だからこそ私たちの心に染み込んできます。それはとてもかけがえのないものです。

愛情の循環は、親以外でもかまいません。私が以前会った方に、幼い頃から施設で暮らしてきた方がいました。でもちゃんと愛情のキャッチボールができるのです。ふと目が合って、互いにニコッとした時などに、ちゃんと心と心が通じるます。また、兄弟の多い末っ子の方もいました。その方もとても可愛らしくて、笑う時には本当に素直に笑うのです。きっとお兄さんやお姉さんにたくさん可愛がられて育ったのだと思います。

ここで最初の話に戻りますが、将来仕事をする上で一番大切なのは、毎朝決まった時間に職場に行くことと、挨拶をすること、周りのみんなとうまくやれること。というのは、本当にその通りなのです。これまで私が出会った障害を持つ方には、能力はあるのに仕事が続かない方が少なからずいました。そういう方は、まず例外なく周りの人とうまくやることができません。

疲れても仕事を頑張るとか、仲間のために苦手なことも引き受けるとか、人に合わせるとか、「相手のためになること」を辛抱するのが苦手なのです。そして自分と周りを比べてはその不公平について文句を言います(自分が得している時は何も言いません)。これはもう、障害のある無しは関係ありません。健常者にもそういう人はたくさんいますから。

自分と他者との間に愛情があると、相手が喜ぶことがうれしい。という感情が生まれ、それが行動に現れます。愛情がないと、または愛情を信じられないと、自分と他者との間に「損得」しか見ることができないのだと、私は思います。そして障害のある方は良くも悪くも正直ですから、「損」だと思うとそれを隠せません。すぐに「不平不満」が表に出てしまいます。

でも「この人が笑うと嬉しい」ということが心に定着し、「愛情をあげれば相手も返してくれる」という、愛情のキャッチボールが身についていると、自分から挨拶したり、嬉しいことを共有したり、相手のために何かしたいと思うことが自然にできるようになります。また自分がいる場所が安全だと思う時、人は無邪気な笑顔を見せることができます。無邪気な笑顔は一瞬で人の心を解きほぐし、周りから可愛がられ、親身になってくれる人が現れ、そのことが本人を守ってくれるのです。それが私がたどり着いた結論です。