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光害関連ニュースまとめ 2024年2月

2024年2月の光害関連ニュースです。


地上の光害に関するニュース

星空保護区になったはいいものの…目立つ観光客のマナーの悪さ 福井県大野市、対策いかに

2024年2月13日、福井新聞の記事です。2023年にダークスカイ・インターナショナルが認定する星空保護区となった福井県大野市南六呂師地区。観光PRもできて観光客が増えているようですが、それに伴って駐車場で車のライトを消さない人がいたり、駐車場に寝そべって星を観る人がいたり、という問題が起きているとのこと。観光客が増えればこういう問題も出てきてしまうでしょうから、これを見越した対策が必要ですね。星空保護区になって観光客が増えた結果星が見えにくくなったら、元も子もありませんし。

ダークサイドには星がある

2023年2月3日に公開された、欧州南天天文台の短編ビデオシリーズ Chasing Starlight の"What's wrong with our sky?" タイトルを日本語にするなら「私たちの空はどうしたんだ?」 欧州南天天文台(European Southern Observatory: ESO)はヨーロッパ16カ国が共同で運営する組織で、チリのパラナル天文台Very Large Telescope (VLT)、アルマ望遠鏡などを運用する世界に冠たる天文台です。このビデオでは、地上の光害と衛星コンステレーションによる天文観測への影響の両方が紹介されています。このnote記事の下のほうでも述べますが、ESOは衛星コンステレーションから天文学を守る活動においては国際的にも重要な役割を果たしていて、その活動についても触れられています。
英語字幕も選べるので、英語リスニングの練習にもいいかもしれません。

暗い夜が戻り、日没後すぐの三角形の輝き「黄道光」が見れる 今週の夜空

2024年2月26日にForbes Japanに掲載された記事。Forbesは最近天文・宇宙系の話題をよく載せている気がしますね。太陽系内の塵が太陽光を散乱して輝くのが黄道光。サムネイルでは天の川とVの字を描くように、中央下から左上に伸びているのがそれです。かなり淡い光なので、光害のない場所でなくては見ることが難しいもの。この記事でも、星空観賞のヒントとして光害に関する情報が掲載されています。光害によって夜空の明るさが毎年10%上昇している、という研究結果も紹介されています。これについては、昨年2月のnoteの記事「毎年、夜空が10%ずつ明るくなっている?【文献紹介】」も併せてごらんください。

南十字星はここだけ。沖縄でロマンチックに楽しむ絶景「星空」の旅

2024年2月28日にTripEditorに掲載された記事。沖縄本島の北端にある国頭村での星空観察体験のレポートや、石垣島、波照間島などの天文観測施設の情報も掲載されています。沖縄の自然は観光の大きな目玉だと思いますが、海ややんばるの森に加えて、星空についての認知度が上がってきているのは嬉しいことです。海や森を大切にするのと同じように、暗い夜空も大切にするという機運が高まってくるといいですね。

天文学と衛星コンステレーションに関するニュース

国連宇宙空間平和利用委員会、天文学と衛星コンステレーションの関係を議論

この間も衛星はどんどん打ち上げられています。衛星コンステレーションの反射光が天文学に影響を及ぼしてしまうことが懸念されていますが、頭の痛いことにそれを規制する枠組みは無く、「どこで議論するべきか」から議論しなくてはいけない、という状態でした。

宇宙空間の使い方を国際的に議論する場所のひとつが、国連の宇宙空間平和利用委員会(COPUOS)です。2024年2月に開催されたCOPUOSの科学技術小委員会で、"Dark and quiet skies, astronomy and large constellations: addressing emerging issues and challenges"(暗い空と電波静穏な空、天文学と大規模コンステレーション:新たな問題と課題への取り組み)が2025年から2029年までの期間の議題として認められました。COPUOS本体での承認が必要なようですが、これは衛星コンステレーションについての議論を深める第一歩となるでしょう。

COPUOSのオブザーバである欧州南天天文台とSquare Kilometer Array Observatory (SKAO) からもそれぞれニュースリリースが出ています。こういうところにきちんと代表を送り込んで議論を進められる天文研究機関には敬意を表したいと思います。

じゃあこれで問題が解決に向かうかと言えば、そう単純ではないだろうと想像します。各国はそれぞれの国の事業者の利益を邪魔したくないでしょうから、簡単に規制ができるとは思えません。さらに、外務省によればCOPUOS加盟国は102ヶ国(2023年6月現在)だそうで、これは国連加盟国196カ国の約半分です。法的な枠組みを把握できていないので、COPUOS未加盟の国にまで効力を及ぼすことができるのかどうか私にはわかりません。もしすべての国に対する規制ができないのであれば、未加盟国を(法的に)経由して打ち上げるという抜け道もできてしまうかもしれません。議論が始められる素地が整ったのはひとまず歓迎すべきことですので、今後はこの議論を実効的なものにできるかどうかが問われることになります。

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