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光害関連ニュースまとめ 2023年6月

2023年6月の光害関連ニュースです。

地上の光害に関するニュース


台北植物園、環境にやさしい照明具採用 光害から植物守る

2023年6月3日にフォーカス台湾に掲載された記事です。台北植物園は台北の街中にある植物園ですが、「園内の夜間照明で、花の開花時期が乱れたり、木の幹から側枝が出たりする現象が見られたことから、同園は5、6年前から照明器具の高さの調整にとりかかった。」とのこと。光害は、単に星が見えなくなるだけではなく、動物にも植物にも影響があります。新しい照明の様子はサムネイルでも見られますが、歩く人の視点からも電球が直接見えない、質の高い照明になっていることがわかります。

読む写真:Photo 星と街、分け合う空

2023年6月10日に毎日新聞に掲載された記事。福井県大野市の星空保護区申請を取り上げています。良い写真でもありますが、「分け合う」というタイトルがやはり一番印象的です。星だけでなく、街明かりだけでもなく、共存していくという考え方は、光害を考えるときにも、また電波の周波数の共用を考えるときにも重要なキーワードです。

守山でホタルの「光害」防ぐ観賞用ランタン 「ホタル保護活動を広めたい」

2023年6月9日にびわ湖大津経済新聞に掲載された記事。今度はホタルを守るためのランタンの話題です。淡い光を放つホタルは、強烈な人工光のある所を嫌います。実は国立天文台のすぐ近くにもホタルが舞う場所がありますが、近くの歩道を照らす街灯にはホタルのいる方向には光が出ないように覆いがついています。ホタルを守ろうとしている地域では水質の保護だけではなく、光環境への配慮も必要です。

消えゆくホタル、救うために私たちができる5つのこと

2023年6月17日にナショナルジオグラフィックに掲載された記事。ホタルの季節なので、光害と結び付けた記事も多かったですね。この記事ではホタルを守るための方策として「生息地をつくる」「照明を消す」などが挙げられています。(3つ目以降は有料記事のため、読めていません)ホタルは世界中でも数を大きく減らしているそうで、対策が求められています。

夜がまぶしくて交尾相手も探せない。ホタルの悲鳴に耳を傾けよう

2023年6月18日付のギズモードの記事。Journal of Experimental Biologyに掲載された、光害がホタルの雌雄の出会いを阻害しているという研究結果を紹介する記事です。短い記事ですが、ホタルを守るためにどうしたらいいか、という問いに対して「屋外照明をOFFにしたり、家の光が漏れないようにカーテンを閉めたりするだけでも違いは出る。」という研究者のコメントが紹介されています。水質汚染や大気汚染ではその汚染源を止めるのが困難なことが多いうえに影響が継続するのに対し、光害の場合はライトを消せば即座に解決する、とよく言われます。もちろんそんなに簡単にライトが消せれば苦労はないわけですが、それでも対策がすぐ手の届くところにある、というのは重要なことです。

夏至の夜 闇に溶け込む岡山城 温暖化防止へ県内でライトダウン

2023年6月21日付の山陽新聞の記事。夏至に合わせてライトダウンした岡山城や商業施設の話題が紹介されています。夏至のライトダウンは環境省が2003年から呼びかけていてある程度広まってきたと思っていたのですが、2019年に呼びかけをやめてしまったのですね。環境省のクールアース・デーのウェブサイトによれば

国民の皆様に日常生活の中で地球温暖化対策を実践する契機としていただくことについては定着してきており、また、近年のLED照明の普及状況を鑑み、環境省による呼び掛けは終了することとしました

環境省

とのこと。CO2削減が大きな目標であったのでこのような決定に至ったようですが、「近年のLED照明の普及」というのはむしろどんどん光害が大きくなりかねない状況なので、少し残念です。コストが低くCO2排出量も小さいとはいえ、きちんと考慮されていないLED光には無駄なものもあるでしょう。照明がすべて無駄なわけではもちろんありませんが、ライトダウンは光を当てる意味を考えるきっかけを与えてくれる重要な事業だと思いますので、今後も続けてもらいたいですね。

Scienceで光害特集号

https://www.science.org/toc/science/380/6650

(7月3日追記)2023年6月16日発行の科学誌Scienceは光害特集号でした。光害に関する6本の記事が掲載されています。また改めてこちらのnoteでも内容をご紹介したいと思います。

光害と関係した衛星コンステレーションに関するニュース

ハッブルの画像に写りこむ人工衛星と、その対策

2023年6月13日にWIREDに掲載された記事。ハッブル宇宙望遠鏡の画像にも人工衛星が写りこんでしまう、というのはこのnoteでもご紹介しましたが、写りこんだ人工衛星の飛跡をより確実に検出し、データにマスクをすることで影響を軽減しようとしている研究者の話題が出てきます。とはいえ飛跡を取り除いた部分のデータの質は下がってしまうし、同じ領域を深く観測するよりも広い範囲を浅く観測する地上の望遠鏡では同じ手法が使いづらいのです。しかも衛星の数は増える一方。衛星事業者との議論は続いていますが、とにかくビジネスのスピードが速いのが頭の痛いところです。

2023年6月12日にUniverse Todayに掲載された記事。こちらも上記と同じ話題なのは、ハッブル宇宙望遠鏡を運用する宇宙望遠鏡科学研究所(STScI)が、この話題についてのプレスリリースを行ったからのようですね。6月に開催されたアメリカ天文学会でも、衛星の飛跡を検出し除去するツールが発表されたそうです。

スターリンク第2世代は第1世代よりも暗そう

2023年6月19日にUniverseTodayに掲載された記事。衛星コンステレーションの代表格であるスペースXのスターリンクですが、より通信機能を向上させた第2世代機の打ち上げが始まっています。今打ち上げられているのはStarlink Gen2 mini と呼ばれるもので、従来機よりはサイズが大きいけれど本格的な第2世代機よりは小さいものです。となると反射光の明るさが気になりますが、観測によればGen2 miniはGen1より4倍大きいのに1/10の明るさで、約8等級とのこと。衛星の影響を懸念する天文学者は衛星の反射光を7等より暗くすることを推奨していますので、8等ならクリアしていることになります。本格的な第2世代機(スペースXのStarshipで打ち上げ想定)はもっと大きいのでまだ予断は許しませんが、ともあれ衛星を暗くする対策をきちんと講じてくれているスペースXには感謝と称賛を送りたいですね。


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