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政治取材の現場では無力しか感じない/「専門性って何?」というお話

 ブロガー上がり風情とはいえ、自分もなんだかんだで政治家や公官庁・自治体の取材をするようになって10年が経過した。最初は政治のネット活用といったところからはじまり、民主党政権時に大臣会見がフリーランスにもオープンになったのに便乗して潜り込むようになり、第二次安倍内閣になった以降も、児童ポルノ法改正やクールジャパン政策、知財戦略などを中心に取材した。この間、自分なりに手応えのあったお仕事もいくつかあったけれど、基本的には無力感に苛まれることが多かった。


 菅内閣になってから、内閣府特命担当として河野太郎・平井卓也両大臣が就いたということもあり、多少ネット関連と紐付けやすいということもあって、ぼちぼち機会を見て会見への出席を再開していたのだけど、やはり政治の取材は事前の準備が大変だし、それを読者に届ける難しさを日々痛感している。やっぱり「読まれなきゃ意味ねーな」と思うし、政治家自身がSNSで発信している事を絡めて出すといったネットメディアらしい記事に仕上げることが求められる。「あんまり本質的じゃねーな」という時もあるけれど、他媒体との差別化だと割り切るようにしている。

 ただ。2021年1月19日にウイルス担当を兼務することになった河野大臣と平井大臣の会見をはしごした時に、「やっぱ自分って無力だわ~」と改めて思わされた。

 会見の模様は各会見の動画(こちらこちら)をご覧頂くとして。河野大臣が「まず現状を把握してから」と連呼するのはだいたい読めたのでいいとして、平井大臣が「マイナンバー使おうぜ」と言い出すと思っていたところ、果たしてその通りになった。なので、番号法をひと通り目を通して、厚労省がワクチン管理に導入しようとしている『V-SYS』の資料をざざっと見ておいて、会見で質問をして、両会見のテープ起こしをして、画像の選別と加工をして、記事を出した。我ながら取材終了から3時間程度でここまでの内容で出せる人、なかなかいないのではないかと思わないでもない。

 とはいえ、「読者まで届く」という観点でいえば、朝日新聞デジタルが20時過ぎに配信した記事の方がおそらく遥かに上なのは確実なんですよね……。

 で、Yahoo!ニュースは共同通信の「ワクチン一般接種、5月を想定 医療・高齢者の終了後」という記事をトピックスの一番上に持ってきているのだけど、これには河野大臣が否定ツイートをしていたりする。

 実は、2020年11月末で自分は『Yahoo!ニュース個人』のオーサーから外されていた。2013年に参加した時には、「気軽に書いてね!」というぽわっとした感じだったものが、ある時点で「専門性」を求められるようになって、「いや、自分に専門性なんてないけど大抵の事はそこそこ取材経験あるんだけど」となったのだけど、話し合いの末にひとまず「インターネットカルチャーにまつわる周辺領域」というところに落ち着いた。とはいえ、その後も自分の出した記事が「あなたの専門性から外れてます」的なことをしばしばご指摘頂いていたんですよね。その度に「いやいや、この件に関しては以前より取材重ねてますよ」と例示していたりしたのだけど、そのたびに「やはりあなたの専門性から外れてます」の一点張りで埒明かないな~と思っていたら、先方から「契約切ります」と通告された。正直まったく納得していないのだけど、編集チームがそういうなら仕方ないとなった次第。

 実際、『Yahoo!ニュース』のオーサーで「専門外」の記事やコメントを投稿しているように感じられるケースは散見されるけれど、要は自分にバリューがなかったと判断されたということだろう。だから個人的には「もっと研鑽積もう」となるのだけど、前述したようなメディアの「信用」を担保にしてミスリードするようなトピックスを見かけると、モヤモヤした気持ちになるし、「センスねーな」と言いたくなるし、もっと言えば社会悪だと思わざるを得ない。

 そういえば、言論サイト『アゴラ』が、ピーチ搭乗時にマスク着用を拒否した人の寄稿を載せていたりしていた。

 「多様な言論」を担保するということは、もちろん大事ではある。とはいえ、メディアとしてエンパワーメントする人選が「おかしくない?」と思うことが多々あるのも現実だろう。結局のところ「専門性」というのが過去の仕事や知見ではなく「経歴」「信用度」で担保しようとしているところが多すぎじゃないか、と思うのは負け惜しみだろうか? いや、負け惜しみですね(笑)。

 まあ、そんなこんなで。いろいろ自分でどうにもならないことを気にしすぎても仕方がないので、できることをありったけでやっていくの精神でコツコツとやっていくしかないな、と改めて感じつつ、原稿に戻りたいと思います。

 

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