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植物に癒されてきた(2) 困ったときのアリッサム
愛犬が旅立って、この夏で6年になる。
育て方が悪かったのだろう、留守番が大嫌いで、身支度をしている私に向かって、この世の終わりのように吠え続けるコだった。
今度は私の番だな。この世の終わりは。
愛犬を見送って、すぐに思った。
行かないでと泣き続けるのは、これからずっと私の番だ。
覚悟はしていたはずなのに、底が抜けたように空いた穴の大きさは、想像をはるかに超えた。
何かで埋めないと……何かで埋めないと。
心の中もアリッサムで埋められたらいいのに。
突拍子もないことをつぶやいた。
寄せ植えで、私はアリッサムをよく使う。花の苗をいくつか並べたあとに、まだここにスペースがあるな、なんかここ寂しいなと思ったとき、私はアリッサムを選ぶ。
正確にはスイートアリッサムという名で、甘い香りを放つ。 小さな花束のようなこんもりした感じが何とも愛らしいし、白、ピンク、私の好きな紫系の色もある。低く横に広がって花を咲かせるので、他の花の邪魔をしない。小さい花ゆえに脇役タイプだが、とても良い仕事をしてくれる。植えた途端に全体が美しくまとまって安定するように感じられる。
出番の多い売れっ子の脇役。私には欠かせない、困ったときのアリッサムなのだ。
6年経つんだな……残念ながら、アリッサムは舞台を選ぶようで、心の中にはまだ登場してくれない。ただ少なからず変化はあった。
忘れることも乗り越えることもしない。
二度とあの柔らかい毛に触れることができなくても、今もなお愛犬と一緒にいるんだ、一緒にいていいんだと思えるようになった。
どこにもいないという喪失感は消え、逆に、あらゆるところに愛犬がいるように感じられるようになった。
見上げる雲、すれ違った別の犬、ふと香った風の匂い…
そんな中にさえ、愛犬の存在を想う時がある。
これが受け入れるということなのかもしれない。
空いてしまった心のスペースに時間をかけて大がかりなリフォームをしていたような感覚だ。その場所に再び愛犬を迎え入れたような気がする。
これから先もまた大切な誰かを見送らなくてはならないのだろう。その度に私は同じような作業を繰り返すのだろう。
アリッサムは、相変わらずガーデニング部門で大活躍だ。
華奢な見かけに似合わず、こぼれた種で根付くこともあって、そんな一面も惚れ惚れさせてくれる。ただ高温多湿には弱く、夏に枯れてしまうことが多かった。
ところが近年、夏も耐えられる品種が現れた。その名もスーパーアリッサム!
やるなあ。困ったときのアリッサムは、ますます頼もしくなっている。
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写真は、「いつもは脇役アリッサムの、今回はひとり舞台! 」という題(笑)