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ライターにとってChatGPTは敵か、それとも友達か?【編集部コラム】


「Singularity is here(おそらく)」

「DX?Web3?NFT?今度はChatGPT?LLM?もう無理……」と、IT・Web界隈のバズワードに嫌悪感を持っている人も少なくないと思う。

実際のところ、NFTについて無視して生活していても、何も影響はないかもしれない。

ただ、ChatGPTの登場と生成AI・対話型AIの普及は、これまでのバズワードとはちょっと質が違っていて、革命がいままさに起きているのではないかと私は思う。だから、嫌悪感を持たずに読んでほしい。

安宅和人さんの資料では、「Singularity is here(おそらく)」と表現されていた。私の実感も同じだ。

安宅和人氏 ⽂部科学省 今後の教育課程、学習指導及び学習評価等の 在り⽅に関する有識者検討会(第3回)提出資料「これからの⼈材育成を考える」より引用

ChatGPTなどのAIは、ライター業界にも大きな変化をもたらす。「ライターの仕事が奪われるのではないか?」と巷では言われている。おそらく、実際にそうなる。すでにライティングの一部をChatGPTにやらせている企業もあると耳にする。AIは、大量のテキストデータを短時間で分析・生成できるため、時間とコストを削減することができる。

しかし、ライターの全ての仕事がなくなるわけではない。AIによって「ライターの仕事がなくなる」というより、「格差が広がる」が正確な認識なのではないか。AIが進歩し、普及しても、人間のライターに残される仕事はたくさんある。だから、AIを活用できるライターは、よりクリエイティブで人間にしかできない仕事に集中することができる一方で、AIを活用できないライターにとっては、AIが敵となる。

編集者でコルク代表の佐渡島庸平さんが興味深い発言をしている。

AIを使って80点を気軽に超えるような週刊連載ができて、土日もちゃんと休みがある…そんな余裕を持てる漫画家がAIで作ったものを直したときに初めて人間の機微が繊細に描けるんじゃないかな

「AIで80点の漫画が作れるからこそ、「100点」を見極める人間の価値が高くなる!?──『宇宙兄弟』『ドラゴン桜』編集者・佐渡島庸平に訊く「エンタメ業界・うまい飯といい話」第1回」より引用

これは漫画家についての発言だが、ライターにも当てはまると思う。どういうことなのか、以下で見ていこう。

AIって何がすごいの?これからライターの身に起こること

ChatGPTは、人間の指示(プロンプト)を受け、膨大なデータに基づいて正しいと予測されるテキストを生成し、即時に返してくれる。「対話型」であることも重要なポイントだ。返ってきたテキストに対して、人間は「この部分をもっと詳しく」「〇〇の観点を含めて」「ほかのアイデアで」というように「対話」していける。対話によって、AIが返すテキストの精度が高まっていくのだ。

ライターとして仕事をしてきた私が、ChatGPTでいろいろなテキスト生成を試した感想は、「ChatGPTは(うまく使えば)文章を書ける」だ。仕事を奪われるライターも、残酷だが、一部にはいるだろうと私は思う。「でも、間違った情報を出してくるでしょ?」といった反論もあるだろう。それには、以下で応じたい。

AIとライターのタッグ

ライティングおよび文章コンテンツ制作において、人間の役割がなくなるわけではない。むしろ人間がその力をより豊かに発揮できることに、私はワクワクしている。以下で、AIとライターがどのようにタッグを組めるかを考えてみたい。

①AIが書いた原稿を人間がチェックする

これは消極的な付き合い方だが、実際に必ず求められる役割だ。AIが生成した記事をそのまま公に出すことはできない。企業やメディアが主体となって、記事を制作してパブリッシュするとき、そこには責任が伴う。AIは間違えるということを前提として、AIに書かせた原稿だとしても、必ず人間が介在し、少なくともチェックをする必要がある。これはAIの業界で“human in the loop”と呼ばれる考え方だ。

②AIと対話しながら原稿を書き、人間だけで書く場合よりも、クオリティを高める

人間のライターは、情感やニュアンスを表現する能力、まったく別の分野のものごとを独自の視点や感性でむすびつける能力、異なる文化や背景を理解する能力がある。これらは、現在のAI技術ではまだ十分に模倣できない部分である。

本記事も、この方法を採っている。まず、<AIによって「ライターの仕事がなくなる」というより、「格差が広がる」が正確な認識なのではないか?>というアイデアがあった。それをもとに、ChatGPTに構成案を出させて、私が取捨選択、構成の入れ替えを行った。それから、「〇〇について250文字で出力して」というようにテキストを生成させ、必要な部分を残し、自分で書きたい部分を書いている。

③コンテンツ公開後のデータ解析をAIに任せ、人間によるリライトや次のコンテンツに活かす

コンテンツ公開後のデータ解析は、AIがかなり得意とする分野だ。特にウェブコンテンツはデジタルなデータを取りやすいため、かなりの領域を自動化できるかもしれない。これにより、読者の関心や反応を把握し、リライトや今後のコンテンツ戦略に活かすことができる。

人間にしかできないこと

ChatGPTは、ここまで見てきたように、文章コンテンツ制作においてかなり役に立つし、一部のライターの仕事を奪うだろう。それでは、人間であるライターにしかできないことは何だろうか。今のところ、私は下記のようなことだと思っている。

取材をして、まだデジタルデータ化されていない情報を、人とウェブに提供すること。そのとき、一方的に話を聞くのではなく、生成的な対話をして、インタビュイーがそれまで誰にも話していなかったことや考えていなかったことをアウトプットしてもらうこと。そういった目的を抜きにして、人とお茶をすること。ご飯を食べること。スポーツをすること。遊ぶこと。雑談すること。友達を作ること。興味のある人に会いにいくこと。知覚すること。五感を刺激すること。人と人、人とものの触媒になること。哲学すること。企画を立てること。「多動」であること。いろんなことを体験した固有の歴史を持つこと。エッセイを書くこと。

まだまだこれから思い浮かびそうだ。

AIを活用していくとき、倫理を大切に

AIを活用していくための障壁は「倫理」だと私は考えている。

①ライターが、編集者やドメインを持つエンドクライアント企業に対し、ChatGPTを使用していることを伏せるのはよくない。

②例えば取材音源の文字起こしデータをChatGPTに投げるのは、避けるべきだろう。私がよく関わるオウンドメディアなどの記事は、取材先に原稿をチェックしてもらうことが一般的だ(新聞やニュースメディアでは、ジャーナリズムの観点から、逆にチェックをしない傾向がある)。

チェックの段階で「この情報はやはり出してほしくない」といった指摘もよくある。だから、私はチェックを経た記事の内容以外のことを他言しないように気をつけている。同様に、生のデータをChatGPTに投げることはしないほうがいい。

ただし、公に行われた講演会などの文字起こしデータであれば、クライアントと相談の上、使ってもいいかもしれない。今のところ、本記事のようなコラムや、取材記事でも一般論にあたる部分であれば、ChatGPTを有効に使うことができる。しかし、今後はより便利になるようにルールが策定されていくかもしれない。

③当面は、ChatGPTを活用している文章コンテンツの場合、その旨を明記するのが誠実かもしれない。文章とは、比較的単純で抽象的な記号の組み合わせなので、「人間が書いたのか、AIが書いたのか」を見極めることは、本質的に、できなくなっていくだろう。皆がAIを使うのが当たり前になれば、注記は不要になるかもしれないが、過渡期では相応の配慮が求められる。

ライターにとってChatGPTは敵か、それとも友達か?


人間とAIが共存する未来のライター業界では、人間とAIがお互いの強みを活かし、協働して、より豊かなコンテンツを生み出すことができる。AIが人間の創造性をサポートするツールとして活用されることで、新たな表現方法やアイデアが生まれる可能性もある。このような共存のビジョンは、ライター業界にポジティブな影響を及ぼすだろう。

ライターにとってChatGPTは敵か、それとも友達か?

私にとって、その答えは「友達」だ。


ただし、残酷だが「敵」になってしまうライターもいるだろう。変化に適応し、共存を目指していこうと言いたい。

余談になるが、文章コンテンツを一度生み出せば、それを音声コンテンツや動画コンテンツに転用することも容易になっていくだろう。例えば『DESIGNING CONNECTED CONTENT』のような概念がさらに拡張され、より有用性を高めるかもしれない。

ライターは、コンテンツ全般に関心を持ち、対応できるようになることも大事だと私は思う。

ChatGPTがライター業界にもたらす変化の流れは、止められるものではないだろう。ならば、AIと友達になり、楽しく仕事をしていきたいものだ。幼い頃からドラえもんを見てきた私たちなら、きっとできる。


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この記事は、ChatGPTを活用しながら、parquetの遠藤光太が書きました。


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