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縄文人に見る “祈りと感謝” の精神文化〜その3〜

執筆:ラボラトリオ研究員 杉山 彰

人類社会は、自然循環型文明と自然収奪形文明に二分された。

人類には、そもそも自然との関係において、特徴的な二つの方向性があり、時代や地域や集団によってどちらかが選択された。一つは自然との共生共存を目指すものであり、一つは自然を従属させて、自然に対して主導権を握り、ときには積極的に征服する意識をしたりする。人類の流れからすれば、前者は伝統的、保守的であるのに対して、後者は革新的である。また、後者が農耕・牧畜の二本柱を基盤とするのに対して、前者は本格的な農耕に背を向け、狩猟・漁撈・採集の三本柱を基盤とする。農耕民はごく少数の栽培作物に集中するが故に、自然をあるがままにしておくわけにはいかず、開墾に精出し農作物用の耕地を確保する方向に一途に邁進する。そこでは自然を利用する効率が問題となり、<自然の克服>という合い言葉が生まれ、投入した時間と労働力の見返りの最大効果を目論むにいたる。<自然の克服>という合い言葉は、やがて地下資源に手を出し、大気をも汚染し、オゾン層すら破壊しながら依然として止むところがない。

図3

一方、縄文人の選択は、日常的生活の根拠地として、住居より半径2~3kmの里山を生活圏とし、自然との密接な関係を結ぶにいたる。農耕民が自然を利用対象として干渉を強める姿勢をとり、容赦なく物理的侵略の挙に出るのと好対照である。縄文人は、生活舞台としての里山の自然に身勝手な干渉を加えたりして里山自体の存亡に影響を与える事態を招くとすれば、縄文人自身の生活基盤の破壊につながりかねない。だからこそ共生共存こそが自然の恵みを永続的に享受しえる保障につながるのである。

縄文人は、里山の自然のさまざまなモノに対して人格を認め、主従関係というよりは同格の同士として尊重する心をものにするにいたったのである。万物ことごとく、草木皆モノいうと認識するが故に、耳を傾け、聴くことができるのだ。こうして鳥虫獣魚草木の自然界にまとうカタチの奥に潜む精霊と付き合い、八百万の神々の存在を感じ、すべてのモノに生命が宿り、それがあの世とこの世を循環しているという世界観があった。縄文人が1万年以上、こうした自然との関係を維持継承するなかから、縄文の世界観が醸成され、しだいに日本人的心の形成の基盤となったのである。

図4

閑話休題。紀元前600年(2600年前)頃、つまり縄文の時代が終わろうとする時期に、古代イオニアではイソノミアの自然哲学が出現し、中国では、都市国家が争った春秋戦国時代に諸子百家と呼ばれる思想家たちが排出したという。世界史的な「飛躍」が同時多発したという。 

まさに紀元前1万3000年から続いてきた縄文文明が幕を閉じようとしたときの頃であるとするならば、はたして縄文文明の存在が、世界史的な「飛躍」の播種として、シェルドレイクの形態共鳴プロセスとして機能したとは考えられないだろうか。(つづく)

※参照文献:「大地の哲学/小坂洋右 著」、「縄文の思考/小林達雄 著」、「文明の環境史観/安田喜憲 著」、「縄文人に学ぶ/上田篤 著」、「一万年の天皇/上田篤 著」、「哲学の起源/柄谷行人 著」、「縄文の遺伝子/佐藤眞生 著」、「縄文文明の発見/梅原猛・安田喜憲 著」、「進化論的世界観/市川惇信 著」、「料理の三角形/レヴィ・ストロース 著」等々

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【杉山 彰(すぎやま あきら)プロフィール】

◎立命館大学 産業社会学部卒
 1974年、(株)タイムにコピーライターとして入社。
 以後(株)タイムに10年間勤務した後、杉山彰事務所を主宰。
 1990年、株式会社 JCN研究所を設立
 1993年、株式会社CSK関連会社 
 日本レジホンシステムズ(ナレッジモデリング株式会社の前身)と
 マーケティング顧問契約を締結
 ※この時期に、七沢先生との知遇を得て、現在に至る。
 1995年、松下電器産業(株)開発本部・映像音響情報研究所の
 コンセプトメーカーとして顧問契約(技術支援業務契約)を締結。
 2010年、株式会社 JCN研究所を休眠、現在に至る。

◎〈作成論文&レポート〉
 ・「マトリックス・マネージメント」
 ・「オープンマインド・ヒューマン・ネットワーキング」
 ・「コンピュータの中の日本語」
 ・「新・遺伝的アルゴリズム論」
 ・「知識社会におけるヒューマンネットワーキング経営の在り方」
 ・「人間と夢」 等

◎〈開発システム〉
 ・コンピュータにおける日本語処理機能としての
  カナ漢字置換装置・JCN〈愛(ai)〉
 ・置換アルゴリズムの応用システム「TAO/TIME認証システム」
 ・TAO時計装置

◎〈出願特許〉
 ・「カナ漢字自動置換システム」
 ・「新・遺伝的アルゴリズムによる、漢字混じり文章生成装置」
 ・「アナログ計時とディジタル計時と絶対時間を同時共時に
   計測表示できるTAO時計装置」
 ・「音符システムを活用した、新・中間言語アルゴリズム」
 ・「時間軸をキーデータとする、システム辞書の生成方法」
 ・「利用履歴データをID化した、新・ファイル管理システム」等

◎〈取得特許〉
 「TAO時計装置」(米国特許)、
 「TAO・TIME認証システム」(国際特許) 等

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