どうして私はムーが読めないの

初めに言っておくが、私は問題がある時大体幽霊で解決する。どんなに探しても寝間着が一セット見つからないのも、コップの水をこぼすのも、私が統合失調症なのも私に憑りついている幽霊のせいである。その筋の(霊能力者ってこと)人に見てもらったら、統合失調症は幽霊の仕業ということで決着ついたが、ひとまず守護霊だからということで除霊はされなかった。除霊というより幽霊に挨拶程度のことしかしなかったようだ。それ以上幽霊について訊こうと思ったら、恋愛しろだの就労支援に行けだの言うので、今後ご意見を頂戴することは無かろうと思い、立ち去ってしまった。

そんな奴がムーを読んでときめくのか何度か試してみたが、全然ときめかない。唯一ときめいたのは大槻ケンヂが紹介した記事で、バンドマンが幽霊にストーカーされている話だった。あれは面白かった。身につまされるから。
私がムーを読んでときめかないのは、そういう幽霊につらい目に遭った話がなかなか取り上げられないからである。ムーを買ってみると、イルミナティカードは予言していたみたいな話から始まって、UFOや異人類について特集していたが、いまいちときめかない。陰謀論について色めきたいならもうちょっと題材に工夫すればチョロいはずだが、そうしないのはかつてのオカルトブームの反省だったりするんだろうか。

この世界は全部作られたものなんだという天地がひっくり返るような体験はムーが提供できる世界の外側にありふれている。何でも、なんにでも、意識が芽生えて記録づけられるから、少々違うことでビビってしまうのである。何にでも、おかしいだの普通じゃないだの言えるから。今となってはムーを読む人はある程度ビビりに達観した人が購読しているんだろうなと思う。本気で自分の闇に取り組むことを余儀なくされたスピリチュアル初心者はしかるべき所に通っている。私だったら占いに行きまくっている。占いに行って、大丈夫と言われてもなおだいじょばないので、違う人にかわるがわる見てもらっている。同じ人に一年もせずに占ってもらうと、同じことで悩んでいることが恥ずかしくなってしまうのでやめている。私の場合悩みを占うことで改善したとは思わない。ただ、占ってもらって、未来は明るいと言われて帰るだけである。未来は明るいとだけ言わない占い師を信頼している。

スピリチュアルというのは、遭遇した事物にプラスして「スピリチュアル」と検索すればスピリチュアルを齧れると思う。それで済むようなスピリチュアルこそ現代の少年少女趣味である。それでは済まされない、例えばものすごく気になるクラスメイトがいて、そいつに毎晩犯される夢を見るくらいのトラウマは、もはやスピリチュアルではなく精神分析学の世話になるところだろう。そうだなあ。そうだよなあ。現代の神秘はいつも科学によって解き明かされてしまう。解き明かされないものがあるだろうか、それにムーは挑んでいるのかもしれない。とはいえ。ムーにも科学にも喩えられない問題がある。問題があると言っていながら、それは例えばなんなのかが言えない。私の悩みはもしかしたらフロイドやラカンを読めば解決するかもしれない。そう思いながら読まずに過ごしている。

私の悩みを一つ上げましょうか。ツイッターを見て、タイムラインを見たら、これは私についての見解だとなんでも読んでしまう。それはタイミングが悪いのがある。例えば警察から電話があった時に、小林銅蟲が「クレタ人からの電話です」かなんかツイートして画像に警察の漫画のワンシーンがあった時とか。この人は私のことをネットストーカーしてるんだと思った。あとは純粋にツイートの前後が変わっていたように感じたのでツイッターの仕様を弄れる人なんだと勘違いしていた。あとはいろいろある。あるアカウントをずっとランジャタイ国崎の裏垢と思ってヲチしていたとかもある。いろいろある。
事象に関して言えばいろいろあるけど、それらを統合して一口に言えないものかと常々思う。勘違い、というのは一つの案だが、そうじゃなくて私が思いついた発想を否定できずに育てた結果がこれだと思う。いちいち私の関心事について「それは違うよ」と言ってくれる人が欲しいが、小林銅蟲をどう説明すればいいのかわからない。そう、世界は説明で作らないといけない。自分を守るためには誰かに助けを求めるのは当然だが、助けてというにも苦労するというわけだ。助けてほしいのをカウンセラーに言っても理解されない。ましてや友達。助けてほしいのをどうにもできずにここまで来てしまった。小林銅蟲とか検索しろよで解決するが、検索してもその人の人となりが私と関連付けられるところまで読めやしないのだ。

ムーはそういったターゲティングをすればうまくいくと思うのにそうしないからいつまでも読めない。ターゲティングとは言っても、単におかしなことを言っているツイッターユーザーを見ればいいのだが、それを炙り出すにはどうすればいいのか。普通に、統合失調症治療薬名で検索かけてブラウジングすればいいと思うけど、そこで統合失調症を統合できたりしないのかなと思う。統合失調症に頼るのはムーにとって敗北なのだろうか。統合失調症に関連して、グループホームに通う人たちにとってムーは贅沢品に入ると思う。買おうとは思わない。私も買いたくなかったけどふと買ってしまった。身の丈にギリギリ合わない贅沢をするのが最近好き。でも贅沢をするのは実はうんざりしている。どうせ贅沢をするなら一回の投資で持続できるものを、と思って本ばっか買ってるが報われない。今までいろいろ言ってきたけど、買ったムーは報われないままだ。残念だ。月刊ムーは読みしろが膨大すぎて手の施しようがないのがある。もっと読者はお前だと切り込まれたい