軟弱絶望都市(障碍者年金文学)
せかいはごみとくずとくそでできている
TV司会者、虐待パパ、
フェミニスト、地下アイドル
かわいそうだから愛をあげる
TV司会者、虐待パパ、
フェミニスト、地下アイドル
実はみんなわたしよりかしこい
バスターミナルでは隣のババアが割り込みする、
汚いジジイはわたしで射精する、
向かいのベンチでバカップルが対面座位
かわいそうなのは誰なんだろう、
救いたいのは誰だろう、
そもそもわたしなんかの愛で世界は生まれ変わるかな
コロナウイルス、B型作業所、
統合失調症、不合格通知
ふざけんなぶちこわしてやる
コロナウイルス、B型作業所、
統合失調症、不合格通知
を思えば思うほど自分がきえる
わたしに人権を与えなかったあの男はピクシブで働いて
わたしの悪口で賢くなったあの娘はミスiDになった
うらやましいのは誰なんだろう、
暗殺すべきは誰だろう、
そもそもわたしなんかの呪いで世界は滅亡するのかな
こんな田舎から飛び出したい
できることならいっそ母親とか殺したい
こんなこと考える時点で来世が確定しちゃうよね
しあわせになったら消滅するかな
業あるものに輪廻があるんでしょ
いつもと違う道を歩いたらナンパに遭った
死んでしまえよのなか、と言い共同作業した結果
妊娠してしまった
誰にも内情を言えず、既成事実を作り上げる日々
一世一代の大演技を親の前でして、友人の前でして
結婚式もなんとか終えて、生まれた赤ちゃんは死んだけど
悲しいとか思えるまで辿り着けたことが嬉しかった
不幸と不幸の間にあるしょうもない幸せのにおいは忘れがち
思えば浮気なんてどうでもよかったし
お義母さんのいじわるもいまならかわいいと思える
おたふく風邪にかかり、いともたやすく今日が峠
旦那が連絡に気づく前に死んでしまいそう
TV司会者、虐待パパ、
フェミニスト、地下アイドル
みんなそれなりにかわいそうできたなくて
みんなそれなりに正しいのはわかるけどさようなら
相変わらずバスターミナルでは隣のババアが割り込みする
汚いジジイはわたしの周りをうろつき、
あのカップルはどうしているだろう、
ピクシブの男もミスⅰDの女も
みんな知らない間にどうでもよくなっちゃった
風邪で遠のく意識の中でぐるぐる考える……。
わたしの来世。
明日があるならほしい。
風邪で遠のく意識の中でぐるぐる考える……。
あの人のこれからのごはん、どうするんだろう
せめて最後はチキン南蛮を食わせてやりたい……
あ、もう無理そう
わたしの人生がA5サイズ3枚で終わる。
よのなかはくそだった、生命の誕生もあまり意味がない
くそみたいなゲーム。むくわれない運命。それでも。
「――――ご臨終です」
*
こうすべきだとか
これはだめだとか
言ってるのうんざりしてたら
たどり着いたの ノンバイナリー
これさえあれば逃げられる
これさえあれば解決する
きいて私のセクシャル ノンバイナリー
あなたの気持ちはわかりません
きいて私のセクシャル ノンバイナリー
私のことわかんないなら私もわかんないよ
それでいいでしょ
人間わかりあうことはない
だから話をやめて
虹色の海にでも飛び込みなよ ノンバイナリー
こうすべきだとか
これはだめだとか
言うのうんざりしてたら
たどり着いたの ノンバイナリー
これさえあれば逃げられる
これさえあれば解決する
だけど好きな人はいつまでも現れないし
胸の奥で渦巻くリビドーは
今にもタナトスとして召喚されてしまいそう
ねえほんとうにノンバイナリー?
ほんとは好きな人が好きなだけなの
好きな人に振り向いてもらえないだけなの
それがほんとうのわたし
この世で一人しかいないわたし
きいて私のセクシャル ノンノンバイナリー
あなたの気持ちを知りたいの
きいて私のセクシャル ノンノンバイナリー
きっとこの気持ちは伝わるはずだよ
これに決めたの
あなたといっしょの国に住むの
だから切り出して
その両手に持ってる虹のバラ束
私のものでしょ ノンノンバイナリー
わたしノンバイナリー
*
うるわしく生まれてごめんね
きれいになってごめんね
ほんとのほんとにごめんね
いきつくとこまでいった
女ってこれ以外にどうやって出世するの?
いやだなあ わたし ばかなのに
どうしよう わたし ばかなのに
お姉ちゃんたちは
わがことのようによろこんでくれるけど
帝は日に日にだめになっていく
このままでいいわけないのに
このままでいいわけないのに
なにもできなくて…梅雨
なにもできなくて…冬
殺すなら殺してみなさいよ
わたしのせいじゃないもん
みんなよってたかってさわぎたて
わたしがきれいなのは
美人でそんでもって
自分に抗わないだけなのよ
楊貴妃はかわいそうだと思う
美人とはかわいそうなものだと思う
美しいから余計なものを選んじゃう
未来はここまできた
女もこれ以外に出世することができる
楊貴妃もこれならばかじゃない
楊貴妃もこれならばかじゃない
漢文の先生は伝説として楊貴妃を語るけど
帝をだめにした実績がある
楊貴妃は失敗である
楊貴妃は失敗である
それが美談になって…現代
それを疑問にする…令和
殺すまではなかったと思う
でも楊貴妃は大罪だろ
玄宗ってどんな人だったの?
楊貴妃には希望を見たの?
それは否定しないと
自分に抗いなさいってのよ
楊貴妃はかわいそうだと思う
*
五万円ちょうだい
お金使いすぎた
親に怒られるから
明日までに五万円ちょうだい
おじさんボッキしてんの
ボッキしてるでしょ 触ったげる
ホテル行こうよ
そしたらなんでもできるね
おじさんおっきいね
おじさんタバスコ好きだね
おじさんピザおいしい?
おじさん風呂入ろうよ
おじさん気持ちいい?
痒いとこあったら言って
わたしは大丈夫
全然大丈夫もっとして
おじさんお金ないの
通帳見せて
五千円しかないじゃん
どうしてくれるの
番号おしえないし
ラインもしない
ほんとムカつく
おじさん嫌い
帰んないでおじさん
タバスコ持って何すんの
ちょっとかけないでよ
しみてしみて痛いんだけど
触んないでおじさん
せめてゴムはつけて
そこばっか突かないでよ
あんたばっかイッてるんだけど
何がなんだかわからない
おじさんホテルどうすんの?
わたし置いていかれるの
おじさん一人にしないで
おじさんのキスは臭い
漢方かなんかのんでるね
わたしと結婚したいんだったら
今すぐ腎臓売って払って
おじさんどうする?
もう朝日が昇ってるよ
わたしホストに振られちゃった
結婚しちゃおうかもう
おじさんどうする?
中出ししちゃって
子ども育てられる?
なんてね生理来てない
おじさんタバコ買わないで
ずっとそばにいて
もう一回しようよ
おしり舐めてあげる
あーあ行っちゃった
ろくでなしだわ
ポッケに五万円入ってる
淡雪のタルト食べよ
あーおいしー!
あーほんと生きてる
おじさんありがとう
結婚指輪ありがとう
Squeeze ANGEL
*
僕の夢は世界征服、ツイッターで世の中の建前を剥がしていく
僕の夢はバイトを辞める、うまい方法があるはず
僕はバニラカーで発情する、どこもかしこも卑猥だと思う
ほら そこにはチャットレディがいる、天神本店
僕は彼女と話をして、あれをやってもらう。彼女は大学生だって。コンビニでアイスを三つ買ったらそれが夕食だって
僕は世界征服をするための予定表を配り、意見を仰ぐ。彼女はいくつか質問して、僕の作戦に賛成する
僕の夢は世界征服。今日も福岡天神駅をパトロール
僕の夢は市民を幸せに導く。天神に大金をはたき二時間かけて帰る
僕は恐らくエリート。世の中の道理はすれ違う誰よりも知っている
僕は今のところニート。親を泣かして貯金を下ろしてく
僕は世界を回している、コーヒーを三杯飲んで
世界は僕を恐れている、僕のツイートは不適切だ
僕は彼女に話をして、今度はこれをやってもらう。彼女は店を辞めるって。大学も辞めて海外へ
僕が立てた予定では今、僕は三つの県を併合してるはず。彼女はそんなこともあったねと言いながらモノを片付ける
僕の夢は世界征服。今日も公園で人を捕まえて僕の手下を探す
イタリアもそう遠くないだろう。僕は親を黙らせ百万を手に入れる
僕の夢を叶えてみせる。僕に問う。僕にとって世界とは
僕の夢は世界征服。僕は世界の手下にならない
僕は世界征服を果たしていない。ずっと前に目指してから僕は変わらない
親を騙してもソープ行っても好きな子がいなくなっても変わらない
ただ目の前に大きな鏡が一つ
そこにはおっさんになる僕が映る
僕は長い長いツインテールが好きさ
僕はツインテールの下僕さ
言われるままに金を払う
ロングロングツインテール ver.1
*
硫酸入りの雨が降って
わたしたちまち消えていく
六本松の開発は無かったことになった
薬院大通のパフェのクリームも溶けた
護国神社のデートの思い出も紛失した
移動しながら爛れる歩行者
お肉のクリームの向こうには
剥き出しになっていく眼球
実はそれすらもお肉であるため
わたしの視界は淡く滲んでいく
眼鏡をはずした世界は
座高が低くなる世界は
それでも生きていたのでうつくしかった
たしかにそこには街があった
やがてコンクリートも酸に喰われて
お肉のスープに溶け込んでいく
世界滅亡作戦大成功
誰のもくろみかは誰も知らない
でもわたしはこの結末を待っていた
あなたとわたしがひとつになることを
あなたとだれかがしあわせになることを
だれかとだれかがなかよしになることを
わたしたちやっと死ねたんだね
なにもしていないまま
なにもおこらないまま
なににもならないまま
酸雨前線
*
近親相姦
職場恋愛
児童誘拐
援助交際
君アダルトビデオになるなかれ
山手線に日本人は少ない
印度人のおねえさんは
鼻くそみたいな石の指輪つけて
花のようにほころぶ笑顔の
共産党みたいなおっさんは
ただニュースを見てるだけだ
中吊りには兄妹の恋愛
君オズワルドをどう思う
君アダルトビデオになるなかれ
どの駅にも風俗の看板は
手当り次第に市民を誘惑し
君が中洲に抱いた蜃気楼は
東京じゃ有難みがない
お冷はないが
ほうじ茶をどうぞルノアール
解凍したプリンに生クリームをのせて
さらにゲロマズ
リストカットしている店員
張り切った田舎のバンギャ
ひいてはまなざしに感じいる風俗嬢
ここは東京 アンダーコントロールシティ
5人に1人スターになって
5人に4人スターをやめられる
君アダルトビデオになるなかれ
歌舞伎町はなんにも楽しくない
トイレするのにコインが要る
ロックカフェロフトに行っても楽しいのはイベンターだけ
話してみたらつまんないやつばっか
きたない菓子持ってくんな
キングクリムゾンが似合う新宿
君がっかりすることなかれ
ちゃんとお金を払えば楽しい
高い食べ物を買うのだ
ちゃんとおいしくて帰れる
何から何まで千疋屋メロンパフェ
瑞々しく皮がバチバチのブルーベリー
赤ずきんの絵本みたいなストロベリー
言うまでもなく花形女優に
添える生クリームは真の贅沢を語る
漬物になったメロンは海を思わせ
見よ、東京の人は大人になってから恋をするんだ
東横インのおにぎりはからからに干からびて
どういうわけか甘じょっぱい
新宿の女衒は吉田豪に比べれば
圧倒的に強かさに欠けすれっからし
ゴミ箱とトイレに厳しい新宿の
交番は意外と楽観主義
ここは千葉ニャンニャンベッドタウン
田園風景は日本の心ね
これがなきゃ東京じゃない
君アダルトビデオになるなかれ
一時間くらい時間ないと
冷静になって評価できない
東京にいるやつは未完成ばっか
みんなどっか違うとこ行く
東京よりヤクザなインターネット
インターネットでまた会おう
東京 20220216
*
はあ わたし しあわせ しあわせ
もうこれでいい これでいい
わたし むくわれなくていい
ただ見てるだけでしあわせ しあわせ
風呂が壊れた家
間違って住んじゃった
今日からここでひとりきり
ひとりになっておもいきり思い出す
西日が照らす部屋
あなたを思いながらWi-Fiつなぎ
読みかけの本を眺めて
何も入ってこない
友達からもらった紅茶入れて
ティーパックを一時間そのまま
とんでもなくどす黒くても
ぜんぜん味がしない
寄せ集めたコレクション
全部あなたのほしかったもの
あげるチャンスないまま
どんどん溢れていく
ツタヤで売れなかったタロットカード
デッキを作ってやってみるけど
不吉なカードばっかりで
それでも悪い気はしない
あなたとお揃いのロクシタン
毎日塗り込んで朝へ飛ぶ
この頃着替えると寝る以外
何もできていない
はあ わたし しあわせ しあわせ
もうこれでいい これでいい
わたし むくわれなくていい
ただ見てるだけでしあわせ しあわせ
初恋があるとしたら
半年前の飲み会で
一晩で終わってしまった
なんとなく好きになって
なんとなくいやになる
そういうものじゃない? それは別として
街に立つ女の子がかわいいから
のぞいてみたけど
お金払えば偉くなれるって
これはいろんなものを
超越した恋なの
私は教徒 あの子は神
あんな文才 あるんだろうか
外にも過去にも未来にも
独り占めしたい
ラインきいて 待ち合わせし
出てきたのが知らないおじさんだとしても
私はめげないと決めた
ごめんねとか言われても困るよ
私を追い出さないで
はあ わたし しあわせ しあわせ
もうこれでいい これでいい
わたし むくわれなくていい
ただ見てるだけでしあわせ しあわせ
相席居酒屋で
ナンパしてきた人と
付き合って
デートして
プレゼントして
実家行って
同棲して
なんの感慨もない
このおだやかさだけで
人生が決まってしまうもんだなあ
もうすぐ結婚するけど
あの家が手放せないでいる
コップ
マグカップ
雑誌
フラッグ
スクラップ
フライヤー
DVD
CD
ZINE
レコード
コロナであげれなかったプレゼント
メルカリでいつまでも売れなくて
ホッとしている
むくわれないままがいい
どうせなら
むくわれたなら
むくわれたとしたら
うらぎるなら
うらぎるとしたら
ゆるせないものを
ゆるしてしまうな
はあ わたし しあわせ しあわせ
もうこれでいい これでいい
わたし むくわれなくていい
ただ見てるだけでしあわせ しあわせ
むくわれた
むくわれてしまった
離婚した
むくわれた
誰かを傷つけた
ずっと傷つけたかった
ようこそいらっしゃいました
今日からあなたはおばさんです
かわいそうじゃない
ただの肉のわたし
むくわれている
*
原始の記憶(キャベツ畑と豚)
畑を作る
妙齢のおばちゃん
またたく間に
ズボンが透けて
真っ白いもち肌
ぱつぱつの体躯
まるい汗がしみ上がって
小2の僕がざわめいてる
僕の恋は、野心は
何も学校の中だけじゃない
通学路のキャベツ畑で
僕の夢はふくらんでいく
戦争は忘れてしまった
フラッシュバックするとしたら
宇宙人の到来と警告
宗教の智慧と享楽
今はただ
脱いだあとの靴下の
臭い匂いしか脅威はない
僕の心は
ちっぽけなヤシの木は
その実 宇宙より遥かなロマンがあるはずで
またちっぽけな木を生やし
君の人生を侵食する
ああ おかあさん
僕はあなたから逃れられない
ああ おかあさん さようなら
そっくりのまがいものを見つけて旅に出る
*
隼雄は語らない
どうすれば
人の話が聞けるかを
言葉を尽くして
意味をかき消す
かたや
僕は喋りたい
どうすれば
話を聞かずに済むか
言葉をこぼして
意味をかき消す
見てごらん
この世には要らんものが多すぎる
この本は要るのか
この紙は要るのか
買っちゃったら仕方ない
仕方ないけど捨てる
いつか捨てる
君は捨てることができない
君が注いできた血税は
ただ金から金へと交換されただけなのに
君は無駄なものを抱えて
老後を憂うんだ
衛は気づかない
気づいているのに
聴こえないふりをする
例の如く嘘を吐いて
死ぬまで黙っておくのだろう
かたや
僕は見つけたい
皆が見つけていること
僕は見つけていない
見つけてばかりだ
大事なことばかりだ
聞いておくれ
この世には大事なことが多すぎる
あの本は取っておいてね
あの紙もしまっておいて
買った時点で挑んでいる
いつかわかる
君はこの呪いを解きにかかる
君が注いできた血税は
それなりに意味があり
世界に花を咲かせたと思う
君は慈善活動をして富豪になるんだ
君が注いできた血税は
それなりに意味があり
世界に徳をもたらしたはずだ
君はすこし邪悪を学んで
長生きするんだ
君が注いできた血税は
*
このままじゃだめだとか
働いてこそ人権があるとか
納税しないといけないとか
思って面接に行くけど
なんでか受からない
スーパーのバイト受かったことない
やっぱねそうだよね
データ入力の仕事2年したから
そっちやれよとか思われる
菊地成孔似の店長
貧乏な菊地成孔似の店長
私をおもしろがるも
本社の指示を却く力はない
ルミエール志免店
お肉が安いスーパー
世紀末のパン売り場
万引きし放題
30番はここを通る
店長が私を見つける
バイト受からなくて秋
いつまでもすね齧る
データ入力2年やったから
派遣に登録すればいいんだよ
ニート始めて3年目の春
やっと気づいてきました
福岡といえども
派遣の仕事は大体コルセン
今すぐ自己実現するには
誰かのわがままを聞いてあげなくちゃ
半グレのおっさんに
工藤という苗字を褒められて
全然うれしくねえよ冬
毎日沸騰していく感情
ジェイピーツーウェイ渡辺通
パーソナルスペース超狭い
みんなエリートコールマン
感動し放題
でも4日で辞めちゃう
教官に顔向けできない
バイトできなくて夏
いつまでもすね齧る
アルバイター工藤
*
何で彼が消えたのか
誰がわかると思う
誰かがわかったなら
みんなわかるはずさ
何で彼が黙るのか
みんなわかると思う
どこまで黙るべきかを
みんなが確認し合う
彼は何もしないことをやった
何もしないということは
何かをするということ
何かをしてもなお
実績をつまないということ
彼はこの世で一番の贅沢をした
何が彼を踊らすのか
誰がわかると思う
誰かがわかったなら
いつかみんなわかることさ
何故彼は歌うのか
みんなわかるはずさ
彼は歌うことくらいしか
人権が与えられないのさ
彼の名はスペード
彼はジェントルマン
彼はスマートなエリート
彼はミュージシャン
彼は何もしていない
空気を汚すこと以外は
彼はつまらない男さ
音だけが友達みたい
何で彼は間違ったか
誰もわかっちゃいない
わかったつもりの奴はいるが
誰もわかっちゃいない
何で彼は駄目な奴なのか
みんなわかっているようで
何一つわかっちゃいない
彼さえわかっていないから
彼の名はスペード
彼はジェントルマン
彼はスマートなエリート
彼はミュージシャン
彼は何もしていない
音で部屋を濁す以外は
彼はつまらない男さ
自慰だけが楽しいらしい
彼の名はスペード
*
私は純白の騎士
嘘じゃないよ 本当だよ
私は世界を救う義務がある
私には悪意が意思に聞こえる
文字しか操れない
すっかりアラサーになった
アラサーだから
この力を魔法とは呼べない
見つめてこの瞳
感じてこの波動
私はあなたを救う義務がある
あなたは呪われている
だから私の言葉を読んで
私は怒りの戦士
躁鬱じゃないよ 話を聞け
私は世界を𠮟る必要がある
その善意は考え直す余地がある
文字だけでわかってくれ
まだまだ三十に満たない
三十に満たないから
この力が芯を食うことはない
見つめてこのオーラ
感じて次の未来
私はあなたを信じるためにいる
あなたは恵まれている
だから私の言葉を読んで
私は愛の伝道師
愛なんてのは伝染病でしかない
愛なしで生きていく必要がある
最悪の大前提を考えておけ
文字でそれがわかるのかしら
まだ2000年しか経ってない
戦争から100年経ってない
まだまだ考えることはある
見つめて今の風景
感じて過去のエラー
私はあなたを育てるためにいる
あなたは将来有望
だから私の言葉を読んで
私はただの看護師
セクハラは恋愛になりえない
私は負けない自信がある
いつか劇薬が手に入るから
文字は私にとって必要不可欠
まだバイタルは大丈夫のはず
まだまだ無理ができるはず
次の打つ手を考えなくちゃ
見つめて無駄な情報
感じて贅沢な余裕
私はあなたを糧にする必要がある
あなたも未来の国に行く
あなたの気持ちを聞かせて
お注射いたします
*
ステップを踏んで
タンバリンを鳴らす
小麦粉を思い浮かべて
猫をはべらかす
アパートだし
あまりドタバタしてはならない
タンバリンはうるさい
あのCMも見なくなった
猫を買うなんて
夢のまた 夢
身の丈に合った暮らし
そんなの目指したら
私はどこにいるんだろう
なんとなくで夢を見て
夢に色をつけて
像が崩れて 大失敗
今はピザポテトを食べる
誰か言っていたよね
7万あったら満足できると
一週間に一回
たんまりお菓子を買う
袋にいっぱい
三千円で足りる
アイスは買えない
バスに乗ったら 溶けないか保証できない
油と糖分を食べて2年もすると
おばちゃんになっちゃった
かつては少女だったんだけどね
暇つぶしには自信がある
なんにも誇れない
なじめないから
世界に 社会に 田舎に
言いたいことなんて
マイクを向けられても
ただ黙ってしまう
たしかに私はつまらない
でも
誰かのせいにできるほど
頭よくないし
ちゃんと働いたことないし
人のことよく知らない
普通じゃないから
たまに思うことがある
あのCMみたいに
ステップを踏んで
タンバリンを鳴らして
猫と踊りたいと思う
普通じゃなくていいし
ずっとこのままだとしても
変わりたいと思わない
ただ
いつもと違う道に
踏み外したいと思う
家に向かうバスじゃなくて
コンビニに向かうバスじゃなくて
もうすぐ閉まる遊園地や
チケットの高い水族館とか
でも 三千円じゃ圧倒的に足りなくて
反対向いた足並みを
目的の方へ整える
何事もなく帰るけど
私のことを
かわいそうだとか
やさしくしてあげようとか
してくれた この町を出たら
どうなるんだろう
お父さんも
お母さんも
いなくなって
私一人になっても
そのときも私は
でくのぼうで
あんぽんたんで
きまじめなままかな?
テレビをつける
本田翼が踊ってる
踊れない
踊れそうで踊れない
おこづかいだけでは
ポテトチップス食べ終えて
誰もいないキッチン
おたまとしゃもじ持った
今日はここまで
今日はここまで
今日はここまで
*
血溜まりのココアに
吸った煙草を押し付ける
きゅうと冷えて
ニコチンがカカオに着床する
堕胎した僕のリビドーは
どこから来たのかというと
百道浜の向こうから
愛宕神社の近くの
寒い寒い迷子の切れ目から
さまよいやって来た
僕のアニマ・アニムス
僕の出来損ない
僕の現像失敗
は、僕のことが大好き
世の中と親が大嫌いで
嫌いなら嫌いな分だけ
僕への思い入れは厚くなる
僕のこと愛してるというなら
だったら生まれてみてよ
僕が君を愛してあげる
そしたら君はがっくりして
できない理由が口を阻み
それから君は深刻になり
今日に至る
僕は平気だよ
今までもこれからも
似たようなものさ
ただ楔を打つとしたら
総括しなければならない
君の辿った道筋は
記憶に値するのか
僕が
君を
認知して
不都合なことがあるか
不都合だらけじゃないか
だから勇気が出ない
君を証明する
君は怒る
僕は女と寝る
君は悲しむ
でも知ったこっちゃないね
君はいないんだから
しかたないから
今日は眠らないでおくよ
夜が明けたら
何かいいことでもあるかな
なかった
君は僕になれなかった
僕はしかたなく妻と別れ
一人でコーヒーをすする
君はコーヒーを飲むことができない
君の五体不満足を僕は知らない
生まれなかった僕は
生まれた僕だからと言って
もの申すことは特段ないが
結末は死の前に迎える
「実は
私は一介の紋白蝶で
私はあなたの夢でした
そういうことにしてください
私は報われることに執心して
報われることから遠ざかった
大事なことは
現像できただけ
成功していたのかもしれない」
僕は思うんだけど
僕は肉体があるぶん
回り道をしているんじゃないのか
僕は君に比べて
ずいぶん失敗しているんじゃないのか
なあ君
僕のこと好きか?
だったら
僕のこと現像してくれよ
その
あるのかないのか
わかんないような眼で
僕の気持ちを君は読まない
君は完結しているからな
最初からな
僕は僕を現像する
白いカンバスを
ひたすら赤く塗っていく
僕の国
君が写っていく
書いても書いても
破っても書いても
君は完結しているからな
本当に完結したからな
そこに余白はあるのか
塗っても塗っても
まだまだ真紅には程遠い
これが未完成であるように
僕はこれからまだ伸びていく生を眺めてく
水子に捧ぐ
*
むかしむかし、あるところに
人の女を好きになった男がいました
相手がわるかったので
男は全身牛肉のように叩き込まれて
博多湾に沈められました
男の体は日本各地の生活排水を含み
東京に着いた頃には完全体になりました
男は元通り男に戻りましたが
身分証明も何もないので
街の暗がりでたむろしていました
むかしから男は
不幸な女によくもてました
男自身はとくに不幸というわけではありませんが
女たちは居心地の良さを求めていたのでしょう
女たちは男に精液を求めました
妊娠する気はなく
中絶を繰り返す遊びがしたいのでしょう
男は毎度申し訳なさそうに
膣内射精をしました
一度死んだからか、女が身籠った話を聞きません
がんがんやって何度も出して
そうやって男は存在していました
女が友達に紹介すれば
友達も男と関係を持ち
その友達が友達を呼び
男は毎晩誰かに射精していました
ある日男は
やっと自分が疲れたことに気が付きました
射精をすることで
自分は存在してもいいと思ってきましたが
試練の時が来たのでしょう
でもどうも乗り越えようとは思いません
一度死んだから
ガッツがないのでしょうか
女たちは男と連絡が取れないことに
これと言って困ることはありませんでした
他にも射精するような奴はいるからです
ひとりだけ
男の身を案じた女がいます
男が殺されるきっかけになった女です
自分は関係ないと思っていましたが
男に情を持っていたかと言えばその通りでした
折しも男は博多に戻りました
海へ還れば完結すると考えました
献花のあるところへ足を運ぶと
かつて首ったけだった人
仕事先によく来ていた太客の女がいました
二人は博多埠頭のホテルへ行き
ピザを二枚たいらげて
何度も互いを撃ち殺しました
うちころしてもうちころしても
渇いたままです
男は生活排水のにおいがする
白濁の液体を指で掬って眺めて
もうすぐ自分が消えることを確信しました
彼の精液に命はありません
彼が消えてからの話で
彼と関係した女たちに
水子が多発しますが
彼の子供として生まれる命は一つもありませんでした
彼は再び死ぬ前に、自分の精液を眺めた時に、
「おれは実のところ
この女が大っ嫌いだったのだ」
とわかりました
男は美しいが憎たらしい女に
自分を突っ込んでいる時が一番感慨深かったのです
それに気づいた頃には
次を考えるのもばかばかしくなりました
男はさいご、女に
「またね」と言いました
自分に対する最大限の皮肉でした
家に帰った女が
小学生の娘をしつけているのを感じながら
ひっそりと男は海の藻屑になりました
今日も誰かが死んで誰かが生まれ
誰かが気づき誰かが忘れますが
男は何も為しませんでした
男はこの世で何もしないという贅沢をしました
何も成さなかった彼は二度と
生まれ変わることはありませんでした
神話「水子の父神さま」
*
ねえ!なんで!いったい!どーして!
ねえ!なんで!いったい!どーして
会ってくれないの
私あなたのこと好きなんだけど
それだけじゃ駄目かなぁ
ねえ!なんで!いったい!どーして
会話してくれないの
私あなたより馬鹿なんだけど
質問したら駄目かな
愛してる
愛してる
言ってみただけ
誰かが言ってたの真似する
愛して
愛して
私のこと破滅させてよ
あんただってしたことあるでしょ
私だって
あんたのやり口がわからなくはない
でもやらない
やって後悔した
あんたが見つめる虚空の訳
真っ黒な闇の深淵
飲み込まれる覚悟ができなくて
ねえ・なんで・いったい・どーして
付き合ってくれないの
私あなたのこと好きなんだけど
それじゃあ駄目だよな
ねえ・なんで・いったい・どーして
自分の話ばかりするの
私カタカナ弱いんだけど
検索したら駄目かなぁ
愛してる
今度会おう
そう言われたけど
何の期待もできない
愛して
愛して
私は何も言ってない
ただ今よ壊れないで
あなたっていうのは
要するにシンジくんなわけでしょ
でもアスカはいない
私はボブが似合うでしょ
寺山修司は時代錯誤
いわんや、庵野秀明
光に飲み込まれて消えろ
ねえ・なんで・いったい・どーして
愛してくれないの
こんなに尽くしてきたじゃん
尽くすだけは駄目だよな
ねえ・なんで・いったい・どーして
肝心なこと教えないの
私馬鹿だからわかんないよ
職場行ったらだめかなあ
ねえ・なんで・いったい・どーして
愛してくれないの
こんなに尽くしてきたじゃん
尽くすだけしかできないよ
ねえ・なんで・いったい・どーして
肝心なこと教えないの
私馬鹿だからやっちゃうよ
君のことずっと呪っちゃうよ
*
おいおいおいおい
やくざが捕まらない理由がわかるか
悪いのは罪だからだ
私は冷めた目をして
親を騙してお金を盗む
へへへ 悪いな 生きるためよ
この金でタロット占いに行くんや
今後を知るのは今後と同じ
シング・シンガーソング
それはシンプルにパクっていこう
ランダムダイナマイト
運が悪けりゃ捕まる
ランダムダイナマイト
それにしても悪い気はしない
ゴボウの良し悪しがわからなくていい
君にはどうせ関係ないことさ
おいおいおいおい
眞子さまの字がちゃんと書けるか
大事なことは存在すること
私は知らん顔して
コロナ真っ只中上京していく
へへへ 悪いな 自己実現よ
この金であんちゃんに何かおごるわ
情けは人のためならず
I should be so lucky in love
何を隠そうモテるためね
ランダムダイナマイト
そりゃハズレくじもひくさ
ランダムダイナマイト
それにしても悪い気はしない
人の芝生は青けりゃ青々しい
君はどうせまさっているから
ランダムダイナマイト
*
僕のお父さんは昔大麻をやって
宇宙人と交信した
その時見つけた人が僕のお母さんで
すぐに会えるけど 得体が知れない
僕はお父さんのことが嫌いで
なぜなら大麻をやったせいで
僕が何者かわからないからだ
お父さんと喧嘩した夜
僕は月めがけてジャンプした
上に向かって跳んだだけなのに
月をつかむことができた
月にはキャベツのはぎれと
うさぎのふんとにわとりがいた
うさぎは洞穴にいるらしかった
まさか月に行けるとは思わなかった
月がこんなにつまらないとは思わなかった
月には通りもんがあると思っていた
あとやきもちと抹茶もあると思っていた
空腹には困らないと思っていたが
実際にあるのは蓮根や茸とたけのこだった
キャベツで飢えをしのいで
星を色で分類していたら
背中に吹き矢が刺さった
抜いてみると手紙が結んであった
「もしもし わたしです はやく わたしを みつけてください」
不気味な流れ弾だなあ
何かのまちがいだろう
僕は手紙を虚空に投げ捨てた
そしたら背中に吹き矢が十本刺さった
「はやく見つけて」
「ここから連れ出して」
「はやくしないといなくなるから」
「いいかげんにして」
「道草はやめて」
「今すぐここにきて」
「自分で考えて」
「急いで走ってきて」
「ばかやろう」
「あんたなんか宇宙人よ」
矢継早に言葉が飛び込んで
いったいこいつは何者かとおどろいた
僕は裏紙に指で書いた
「いまから行きます」
なんにも納得していないのに書いた
僕は
火星に行って喘息を起こし
水星に行って乾燥肌が悪化し
木星に行ってすこしまどろみ
金星に行ってやけどして
土星に行って都会にかぶれた
天王星と海王星が
人目も憚らず愛し合ってるのを見て
愛とは何かを考えていた
愛とは言語裏にあるもの
だとしたら
僕は今何を成しているのだろう
ごめんよ きみ
僕はまだ迎えに行けそうにない
片思い
*
恋しないといけない
恋しないと僕は
世界を呪ってしまう
恋しないといけない
恋しないと僕は
明日にでも死ぬ
誰でもいいんだ
誰かに恋しないと
今すぐに耐えられない
恋したことなんて
あったかないかわからない
恋したら変わるんだろう
こんな僕でも生きてくくらいに
恋しないといけない、手近なものから始めよう
いとこを性的な目で見て
おじいちゃん家を出禁になって
恋しないといけない
正社員の後をつけて通報されて
全然かまわないよ
どうだっていいんだから
でも恋しないといけない、恋しないと死ぬんだ
僕はずっと駄目だったんだ
今変わらないと死ぬ
恋しないと死ぬ
やっと恋を見つけた
報われなくて
もっと惨めで
悲しくなる
恋すればいいもんじゃない、それはそうだけど
恋しないといけない
恋が無くなったら真っ暗
こんなの恋じゃないとか
何とでも言ってみろよ
恋なんかするためにあるんだ
ないならないでいいならよかった
僕は恋をしている
報われるために
自分を変えるために
明日を生きるために
あの子を好きだとしても
どうせ手近なものなので
僕は僕のままなので
何も起こらない、でも僕は生きている
あの子に望みを託す
報われなくても
このままでも
明日なくなったとしても
僕はこうするしかないんだ
恋なんて
やっぱりするんじゃなかった
恋しないといけない
*
首相と結婚しなくてよかった
日本中の森羅万象が私に降り注ぐ
私の彼もなかなか禍々しいけれど
銃で撃たれたら雨は降らない
人と結婚するということは
国を作ること
家庭にしろ社会にしろ
そこで一芝居打ったり
駆け引きするのは当たり前
だとしてもあなたの背中に
張り付いている 大きな龍
背負うのは 知っているのは
私だけでいい
あの首相は奥さんを使うのね
奥さんはサクラだね
いやな男だほんとうに
世の中そこまでつまらなくない
あなたが何かをするまでには
でもあなたは銃で撃たれた
一芝居を打った
その後世界は変わるかな
最初から自民党が勝ってたよ
かわいそうだな海軍隊員
お国のためと自衛隊に言わせるのは
世紀末だと思う これは遅れてる
自衛隊は自分を守るためのもの
だとしてもあなたの背中に
みなぎっている にせものの桜
背負うのは 知っているのは
私だけでいい
見えないものも信じてね
見えるものもないんだから
みんなそれぞれあるってこと
それさえわかればなんでもいい
私は何かするべきだわ
首相と結婚しなくてよかった
抱えきれないものを目の当たりにする
どうあがいても無理をやりすぎる
だったらあなたとロイホに行ってる
総理と結婚しなくてよかった
*
買い物するときは直帰がいい
袋下げたままマックには行かない
ロイホで食べるならパフェがいい
死んでもステーキなんか食べない
こだわりが強いので
人より苦労することはあっても
こだわりは選び抜いているので
人よりいい思いをしている
ゴシゴシタオルは母親が買ったほうがいい
死んでもキオスクとかで買わない
どうせ一個だけならフランフランがいい
妥協しない ぶち上げる時にはぶち上げる
たとえこだわりが強いせいで
地層のヒビに入って死んでも
今まで生きてきて楽しかったので
少なくとも文句は言えない
まあこれから運が悪くて
革命を起こさないといけなくても
さっき柿の葉寿司食べたからいいかな
僕のお父さんも
そのまたお父さんも
自分のやってることが褒められたもんじゃなくても
ただ生きるとか生かすで終わったのだから
僕もそうありたいと思うよ
どうせ死ぬならシンプルがいい
家にゴミを置いて死にたくない
意味がわからないのに徳なんかつまない
わけわからないのに優しくしたりしない
たとえそのこだわりのせいで
少しくらいつらい思いをしても
これからもこだわるためには
仕方のないことだと思う
こだわることで死んだとしても
こだわり抜くものだろう
それが僕のこだわり
僕のお母さんも
これからの僕の奥さんも
ちょっとくらい出来損ないを責めたりしない
ただ今だけと思っていればいいから
もう少し生きてみようと思うよ
僕のお父さんも
そのまたお父さんも
自分のやってることが褒められたもんじゃなくても
ただ生きるとか生かすで終わったのだから
僕もそうありたいと思うよ
おこだわり
*
書けない
書けない
かえでちゃんは一年に一回
それだけでいいと思ってたよね
ほんとうは一年に二回なんだよ
そうやって
一生懸命やってるときに
もっと上を言うから
亡くなっちゃったのかしら
一生懸命やって疲れるなら
もっと雑にやりなよ
ああそれができていたなら
それができていないから
かえでちゃんは
言わないことが多すぎる
統合失調症友の会はみんなそう
かえでちゃんは
傷跡で多くを語ろうとしてる
それは違うよと
言うのをぐっと堪えて
一つの趣味として
リスカを眺めていた
かえでちゃんは
死ねば儲かると思っていた
葬式は自己表現だと
でも私葬式に呼んでもらえなかった
死ぬということは
計算外の取りこぼしを
拾い集めることができない
死ぬのはちがうけど
かえでちゃんは
生きることもちがうのだろう
かえでちゃんの映画は
まだまだ撮り足りない
私が彼氏になって
いつまでもかえでちゃんを
不幸にして幸せにしない
不幸とか幸福とか
誰かの作った箱の中なら
ほっとするかもしれない
「統合失調症って
神様に選ばれた病気なんだよ」
って次会うなら言うつもりだった
かえでちゃんも
神様に選ばれていて
神様との距離がわかったなら
人生始まってくるんだろうね
かえでちゃんに棲む神様は
かえでちゃんのことどうしたいんだろ
まだまだわかってなかったんだよ
統合失調症も
甲状腺との因果関係も
わかんないまま死ぬって悔しくない?
わかんなくていいか
生きろとは言わないけど
死んでほしくなかったとか言わないけど
台風が過ぎた後の冷たい風を
感じるのは生きてこそじゃない?
幽霊になってもわかるのかな
風を聴いて心ときめかないのかな
このときめきは逆に
死にたいと感知するのかな
私の死にたいは
穴があったら入りたいくらいで
死にたいは
いくらでも替えが利く万能な言葉
かえでちゃん見てたらそう思う
かえでちゃん
私は私で私を超えていくよ
死ぬというのもまた選ばれた
そう思うことにしたよ
赤ちゃんがお母さんを選ぶように
死ぬことも予約でいっぱいなのだから
死ねておめでとう
次は誰かの神様になってね
かえでちゃん
*
博多の森に住んでいる 西鉄バスで都心へ
おかげで博多の名物がわからない
福岡は物価が安いときいております
東京に行かないとわからない
どうやら私は博多美人
ルーツは五島列島と別府・鹿児島
どうやら私は博多美人
九電のおかげでここまで大きくなりました
これから飯を食う!親のお金で
そして暇を潰す!人のお金で
さらに嘘をつく!神の言葉で
だからなにかしゃべる
私はしゃべります
よくわからないけど生きているので
レガネットで買ったいちごを
いろはすで洗って
汚い公園で食べる
いつまで経っても
あいつは来なかった!
ラブホテル街で
何者かと目があった
ここで恋など始まってたまるか
血が凍りそうな夜は
そのままかじかんで死ねばいい
てめえふざけるなよ~
こんなことぐらいで 気にしてなんか
いないだろうな まさか
てめえふざけるなよ~
あしたも仕事なら
いつもよりまして はたらけよちゃんと
なぜなら私は生かされている
タクシーで帰って 親が払って
この期に及んで 生かされている
どうも私は博多美人
三人兄妹の末っ子で兄と姉がいる
どうも私は博多美人
きのうスマホを叩き壊しました
これから機種変!親のお金で
そしてクリスマス!人のお金で
さらに嘘をつく!神がいるゆえ
やはり私はなにかする
私はやっちまいます
よくわからないけどこれからも生きるので
***は終わったが
春吉を今日も歩く
どんなに待っても
あいつは来るわけない
キャナルシティで
SIMカードを探す
中に画像がいっぱいある
ないならないでよしとする
また***に行くからさ
どうも私は博多美人
*
蝶々たちの翅がもがれて
そのまま階段のへりに貼り付いている
どこを食べたのだろう
そこしか食べなかったのだろう
どこにいてもかべちょろがカサカサして
パナソニックの電池みたいな君は
あの訳ありな屋敷から繁殖したのかいな
幽霊においでおいでと連れてかれて
近寄った先には蛇が悶絶していた
ペットショップから逃げても
やな感じから逃げてもやはり
どこに行っても変わることはない
変わることはないのだろう
私は幽霊になんかならない
いつか死んで空気になる
誰かに取って食われて血肉になるなら
今のうちに目にできるもの
目に焼き付けておかなくちゃ
いつものドトールの特等席は
やたら股間がむずむずして
バス停にいるおじさんのとなりは
おおっぴらに発情したくなる
無理矢理にでもどうにかしたい
無理矢理にでもどうにかして
そのひずみを受ける覚悟は
絶対今のところどこにもない
1億人いるうち3万人が 死んでいく国は
社会福祉が手厚いけれど
それなりにコストを払わないといけない
生きるためにはコストを払わないといけない
私が何をしたというのだろう
私がやってきたことの罪状は
自己開示と誇大妄想だけ
ヤクザのおじさんが鼻くそをつける
汚いおじさんが胸や尻をさわって
不味い飯を食って
怒りを薬で殺して
ケータイはさわれない
もっと友達と意見を交わしたかった
けどどうだろう 縁が切れてばかりだ
もっと詩を作りたかった
けどどうだろう 詩が読めないでいる
もっと自分は認められるべきだ
けどどうだろう バイトに落ちている
悩んでいる
こいつを殺すべきか悩んでいる
こいつを殺したら
自分が手に入る気がして
殺してもまた他に殺したくなるなら
考えあぐねて やめる
ロングストロング缶を飲んでいるおばちゃん
バスを諦めてタクシーに乗った
みんな目の前にないものを信じている
それは信じちゃ駄目だと思う
信じたら飲み込まれて死んでいく
神話みたいに
部屋の隅で イエグモが
光の波に飲まれて三匹の家族を失ったように
そういや
今までずっと
何してたんだっけ
2021年の思い出
*
「二〇二〇年の思い出」
私の好きな人はダニから生まれて
そいつをメギツネと取り合っている
それを猫が馬鹿にして
蜂は余計な口出しをする
ハエがよってたかって囃し立て
それをブロックしている後ろには
巣を作れない蜘蛛が五匹見てる
昔とかげがつぶれて死んだのを
鮮やかな肉の色に見とれていた
蝶々がさかんに近所をとび回り
人類の滅亡を感じた
万博のロゴが気持ち悪くて
豚さんがこれ以上輪廻は無理だ
と言ってるみたいだった
私は天皇だから
皆のことを一番に察しなくちゃ
私は天皇だから
徳仁をいけにえにしてるかわりに
皆のこと幸せにしなくちゃ
北海道の子が狂っている
原子力発電がきっと苫小牧にできる
だから北海道はおかしいんだ
中国が核を増やしている
きっと日本が緑茶を盗んだからだ
私が抹茶を飲めなくなった二年前
きっと中国は日本から嫌なことされた
杜甫の詩を暗唱するから
どうか仲良くしておくれ
気温が40度を超える
アメリカが怒っている
私が自立できないのを
アメリカのせいにしました
白人を睨んだら
奥さんの瞳孔がひらいた
今日は終戦記念日
あやまらなくちゃ
今からちゃんとできるところ
証明しなくちゃ
ツイッターのライムラインは皆絶望
一人ずつツイートする度に
似合う曲を選んで聴く
みっつはギャラクシーエンジェル
花子さんは黒ネコのタンゴ
看護師さんはI should be so lucky
この人は春香伝のパンソリ
この人ははずれのヘルス嬢
この人は青い影
一人一人選んで歌っても
届いている訳がない
だって私は天皇なわけない
例えば天皇だとしたら
スーパーのアルバイト落ちてない
あれから一年経ったけど
やっぱり私はなにものでもなく
わかったことと言えば
実は私は猫らしい
しかもどろぼう猫だってさ
どろぼう猫は
近所のばかな猫に注意をする
猫は横切った車をみて
ありがとうと言った
猫だって
天皇だって
ニートだって
皆のこと幸せにしなくちゃ
そういえば
去年って
何があったんだっけ
*
軟弱絶望都市
西の子(@mojihype)
ありがとうございました。