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【 ZINE REVIEW 】 COLLECTIVE エントリー ㊽ SANTABUNNY 『SANTABUNNY DRAWING BOOK -BLUE PRINT-』(埼玉県さいたま市南区)

COLLECTIVE を開催しているパークギャラリーでは、普段はジャンルを問わないカルチャーギャラリーとして、必然的にイラストや写真の展示が多いのですが、COLLECTIVE をきっかけに、なるべく多様な表現による展示を受け入れられたらと思っています。例えば音楽。もう3年前かな、毎月のように弾き語りのイベントをパークで開催していて、毎回大好評でした(多い時で30人は入るんですよ)。例えば衣服のブランドの新作の展示、受注販売会。1つのバンド、ミュージシャンの過去のライブ写真やグッズ、関連の DM 、チラシなどを展示するドキュメント的な企画もありました。解散が決まっていたので、それを惜しむファンのひとたちが集まってたのが印象的でした。UNKNOWN というタイトルで作者の名前を伏せて様々な種類の作品を展示した時もあります。過去一番ひとが来たのは Mirraz というバンドの畠山さんの写真を展示した時のサイン会でしたね。雨のパークの外に行列ができて、整理券を配ったの懐かしい。いろんなことを挑戦してきました。これからもどんどん発案して挑戦していきたいと思っています。本や、言葉の展示をしたいなと、ずっと思ってるんですが、いまひとつ、いい案が出ない。どなたか、とっておきのネタあったらぜひパークで。

さて、改めて。ギャラリーということでやはりイラスト、写真が多いですね。中でも写真は、ギャラリーを運営する前から仕事で関わっていたこともあるので(学術的に詳しくはないですが)いい写真がどういうものかくらいは見抜ける気持ちでいます。イラストに対しては、技術的なところがまったく無知なので、好き、か、わからない、かのまずは2択。うまいとかへたとかで見ることはなくて、その人とナリ、つまり個性で見ることが多いですね。絵に人柄が乗っかってるようなのが好き。だから、その人の絵が好きというより、その人のファッションとか、その人が好きな花とかカレーとか、暮らしとか、そういうのも好きですよね。ぼくの勝手な予想ですが、潜在的に、そういう風に、イラストをというより『イラストレーター』としてのアイデンティティを見る人、増えてると思います。SNS が加速させてますよね。ぼくは、わたしは、こうだ、という姿勢が、評価につながっていることが多いですね。だから、イラストの人にアドバイスを求められた時に(ぼくなりに)伝えることは2つ。まずは、自分に正直な状態で絵を描くこと。もう1つは、とにかく数を描くこと。です。詳しくはまた今度。

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毎日の青い風景

今回紹介する ZINE は、カジュアルなアート制作をテーマに、デザインやラジオ、イラストなど、国内外で幅広く活動するアーティストの SANTABUNNY(サンタバニー)さんの ZINE『SANTABUNNY DRAWING BOOK -BLUE PRINT-』。SNS に毎日のようにアップしてきた、SANTABUNNY が見てきた『日々の青い風景』をイラストで描きまとめた1冊。1枚1枚が独立した絵にも見えるけれど、どことなく終始一貫した時系列が流れているようにも見える、セリフのない絵本のようなつくりが特徴的。アートワーク集としてみると何気ないページネーションも、絵本(または漫画)だと思ってみはじめると大胆なカット割に見えてきて、躍動感が気持ちがいい。字幕のない海外の映画作品を見ているかのよう。デザイナーというだけあって、青の配色やレイアウトが気持ちがいいのも特徴。

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最後に、自分の幼少時代のエピソードが文章で掲載されている。断片的でノスタルジックな記憶と、ほろ苦いロマンス。これを読んだ後に、本誌を見返すと、まるで SANTABUNNY さんの思い出を疑似体験しているかのような気持ちになれる。いや、逆に言うと思い出を描くことへ、ものすごい執着を抱いているように感じる。その時の、熱量が、大人になって、いま爆発しているような感じ。自分の思い出を切り取ってアートとして表現する。小説家とか、そういう人の表現技法に近いのかなと思った。

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誰かの思い出っていうのは、それだけで、味があるなと思う。こうして「伝える」ことで記憶というブラックボックスから出てきて、息をしはじめる。多少の脚色はあれど、生きるのを楽しむというのは脚色を楽しむということだからいいと思う。

多くのパーソナルな ZINE たちの中に潜む『ノスタルジー』というスパイス。それを嗅ぎ取って自分のノスタルジーと交錯させて楽しむのも、COLLECTIVE の楽しみ方の1つかも。


レビュー by 加藤 淳也(PARK GALLERY)


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作家名:SANTABUNNY(埼玉県さいたま市南区)
1982年生まれ。2004年よりカジュアルなアート制作をテーマに、都内を中心に創作活動開始。近年は地方イベントや台北での企画展にも参加。
2020年、SNSで毎日アップした青い絵をまとめたイラスト集「BLUE PRINT」を発売。stand.fmにて毎朝ラジオを配信中。
趣味、キャンディーを投げること。
https://twitter.com/santabunny
【 街の魅力 】
子供達が沢山います。
【 街のオススメ 】
① カフェ ニコル ... 美味しいコーヒーとケーキ。ゆっくりした時間が味わえる。
https://www.urawacafenicole.com

② 浦和競馬場 ... 公園として開放して居て、のんびり散歩できます。
http://www.urawa-keiba.jp

  



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