COLLECTIVE レビュー #36 iSOP『架空の4人格』(福岡県)
前回、イラストレーターのびちゃさんの ZINE「AKUBI」のレビューで、福岡から届く ZINE が好きだ、ということを書いたので今回も福岡から届いた ZINE を紹介しようと思う。
COLLECTIVE ZINE REVIEW #36
iSOP「架空の4人格」
音楽と ZINE は相性がいい。レコードが出れば音楽雑誌はレビューで彩られるし、そもそも音楽雑誌自体がファンジンみたいなもので、ミュージシャンのインタビューも行われれば「ライナーノーツ」といって、楽曲の解説なんかも行われたりする。CD に付属するブックレットも、もはや ZINE といっても過言ではない。音楽では表現しきれない自分の中の感情を、ZINE にするという行為を、もっと音楽家はやってもいいのかもしれないと時々思ったりする。音楽家は音楽だけやればいい、という時代はとっくに終わっているし。
それを踏まえた上で、今回紹介する ZINE「架空の4人格」を手に取ってみると、少しだけ奥深く楽しめると思う。作者は、iSOPさん。福岡を拠点にサウンドクリエイターとして楽曲制作を行なっているいわゆる音楽家で、今年発表したばかりの自身の作品のジャケットのアートワークを自ら手がけたことから、表現の幅をコラージュ作品へと広げている。つまり、この「架空の4人格」という作品は、iSOPさんの中にある4つの人格の、それぞれの表現を落とし込んだ1冊だ。
退廃的な風景写真を得意とする IAN JOSEFERISH、宗教画のコラージュが印象的な SUSAN PORTOTOF、ミニマルな盆栽をアーバンなアートプロフダクトへと昇華させる OZZ KATE、魚や動植物、人間の眼や内臓や骨を素材に、コラージュすることで、もう1つの命を再構築する PANISH MONOLITH。この4人のアートワークが、32ページの ZINE に凝縮されている。イニシャルを並べると iSOP となる。
音楽の幅を超えた、iSOPさんの表現の集大成。もしくはアンカーポイントとも言える多才ぶり。コラージュ作家が陥りがちな「足し算」が多少気になるけれど、人生で初めての ZINE にしては、かなり高いクオリティだと思う。コラージュも今年はじめたというから驚きだ。
個人的には、それぞれの人格の背景というか、物語、ステートメントが、もっと知りたいと思った。どこかで教えてくれないかな。
1人の人が作ってると思うとシンプルにじわじわと来るものがある。
ちなみに今年は福岡からはもう1名。「あの日のうどんのことならもういい、」を書いた長野さくらさん。好きな ZINE の1つだ。福岡には 10zine という ZINE のイベントを行うレーベルがあってそれも気になっている。
福岡、いいな。
レビュー by 加藤 淳也
---- 以下 ZINE の詳細とそれぞれの街のこと ----
【 ZINE について 】
“架空の4人格で形成されたZine” というテーマのもと、初めて Zine を作成しました。今まで音楽制作を中心に行なっており、今年自身初の EP を発表し、その EP のジャケットをアナログコラージュで作成したことをキッカケに現在アナログコラージャーとして音楽とアートの活動を行なっております。
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