『わたしのつれづれ読書録』 by 秋光つぐみ | #01 『自分の感受性くらい』 茨木のり子
今日から始めます《 わたしのつれづれ読書録 》。
古本屋兼ギャラリーの創設を目指し、パークギャラリーと並行して古本屋でも修行中の秋光つぐみです。
《 わたしのつれづれ読書録 》 はそんなパークスタッフのつぐみが出勤日(主に木曜日)に「今日の1冊」を紹介するコーナー。
パークで開催中の展示テーマに寄せた本、季節や世間のムーブに即した本、つぐみ自身のモードを表す本、人生に影響を与えた本、趣味嗜好まるだしの本など‥日々積読が増えていく「つぐみの本棚」からピックアップした本をお届けします。
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#01
2023年8月30日の1冊
「自分の感受性くらい」茨木のり子 著(花神社)
8月が終わり、9月に差し掛かっていますね。学生の方は新学期、会社員の方は下期のスタートなど、1年のターニングポイントとなる時期なのではないでしょうか。「がんばらないと」と気負うと余計につらくなったり憂鬱を感じることもあるかもしれません。
そんな人に「がんばれ」とは私は言えない。自分のペースで、ありのままの自分を大切に生きていられたらと願います。でもそれは決して「自分を甘やかすこと」とは違います。それを教えてくれたのが、この本。
戦後から2000年代にかけて力強く生き抜いた詩人・茨木のり子さんの代名詞とも言える詩集です。
人生で初めて得た私の師匠は、新卒で就職した会社でグラフィックデザインを基礎から叩き込んでくれた上司でした。その方が、別れのときに私に贈ってくれた1冊です。当時の私は、社会に飲まれながらも何かに抗い、何かに小さく反発していました。そんなときに与えられた
から始まる詩。胸に激震が走りました。焦りや後悔や羞恥の感情が溢れ出し、その場で消えたくなりました。
しかし、同時に
この詩を締め括るこの言葉によって、この詩集を贈ってくれた師匠から私への、叱咤激励であることも理解し、涙が溢れたことも忘れられません。
それまで何かに甘えていた私はその瞬間から、これから進んでいく道は全て、自分で考えて、自分で選択し、自分の意志で決めていこうと、奮い立つことができました。
そんなふうに感情の琴線に、瑞々しくも鋭く、触れるどころか切り裂いてくるような強さを帯び、それでいてやさしい、茨木のり子氏の言葉たちを堪能できる本。
出会ってから10年経とうとしてる今も、私の核となっている1冊です。当時の私は恥ずかしいほどに限りなく青かった。その時があって今がある。私の「青い時代」を清々しく思い出させる詩集でもあります。
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夏の終わりの疲れを誤魔化すことができない、日々の鬱屈を逃れられない、そんな時間に出会う言葉は、人生に何か与えてくれるかもしれません。
『自分の感受性くらい』は言わずと知れた名作詩集です。読んだことのある方も改めて読み返したり、未読の方は是非この機会に、茨木のり子さんの世界に触れてみてください。
PARK GALLERY
木曜スタッフ・秋光つぐみ
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