見出し画像

【 ZINE REVIEW 】 COLLECTIVE エントリー ㉒ 望月 純 『カルマ・スーダラVOL.1/モヤモヤ君ノート』(千葉県南房総市)

47都道府県から ZINE を公募し展示・販売するエキシビジョン COLLECTIVE は、距離はもちろん関係なければ、作家としてのキャリア、ZINE のフォーマット、知識なども不問。生まれたところや皮膚や目の色で何かを決めるようなことはしません。間柴のフリッカー・ジャブのごとくノーガードでぶち込んでいきます(例えが古い)。もちろん年齢も不問、ゆりかごから墓場まで。ZINE というメディアが三世代、四世代にわたって続いていけばいいなと思っています。とはいえ現状平均年齢は20代後半。いろいろな世代からのアプローチを期待しています。

画像1

ただ欲望の赴くままに手を動かすこと

海がきれいな千葉・房総半島から届いた1冊の ZINE『カルマ・スーダラ VOL.1 / モヤモヤ君ノート』。

会場に来てくれた人はわかると思うけれど、自由気ままに筆を動かしてのびのびと描かれた表紙のインパクトがすごい。作者は、80年代をイラストレーターとして過ごし、90年代に房総半島の最南端の港町に移住。現在は IT の仕事をしながら暮らしているという1955年生まれの望月純さん。過去3年の参加者の中でももちろん最年長。自分の親の年齢を超えた人からエントリーがあるなんて想像もしなかった。アートに年齢なんて関係ないね。当たり前のことを気付かされた(ちなみに ZINE の厚さも今回集まった ZINE の中で最厚だ)。

画像2


「わかっちゃいるけどやめられない」という開き直りの境地に『カルマ・スーダラ』と名付け、欲望の赴くままに筆を走らせることを決めた本紙。漫画というフォーマットは借りているが開始早々コマ割りなんて特に意味を持たなくなる。圧倒的な量のドローイングというより落書きの断片(落書きの断片とは作者談)と、あちこち方々より拾い集めた言葉のツギハギは暴力的。効きすぎてチャクラが開くスパイスといった感じ。

画像3

「理解できない」と閉じてしまうことはかんたんだけれど、ここは COLLECTIVE。みんなちがってみんないい。何度も何度も読み込んでいくうちにジャズのインプロヴィゼーションのように思えてくる。絵が鳴ると、言葉が鳴る。興が乗るとセッションの数が増える。阿部薫かよっ。ページが進んでいくうちに渋さ知らズオーケストラ(地底レコード)みたいになってく。ツギハギだったはずの言葉が繋がって見えてくる。これはもう幻覚だ、と自分を疑う。いつしか、欲望の赴くままに手を動かすことで生まれていたはずの絵が譜面の上に並んだ音符のように見えてくる。そうなってくるともはやプログレッシブ。ピンク・フロイド、もしくは往年のレッド・ツェエッペリンのようにも思えてくるから不思議だ。元イラストレーターだけあって線がしっかりしてるのがそこに至る理由かと思う。時々ハッとするくらい生々しい線に出会える。

絵と音楽のスキームって一緒なんだなって思った。

表紙のインパクトで偏見を持たず、このオーケストラ、またはビッグバンドの音の波に飛び込んでみてはいかがでしょうか。なんで最後感動したんだろう。ふしぎ。


レビュー by 加藤 淳也(PARK GALLERY)


名称未設定 1

作家名:望月 純(千葉県南房総市)
1955年東京生まれ。1980年代後半は東京でイラストレーター。
1990年頃より南房総の南の果ての端っこの小さな漁港の町に在住。現在はIT労働者として開発業務に勤しみつつ作品づくりという日々也。
https://www.instagram.com/mtzq1955
【 街の魅力 】
海がきれいな何もない田舎町
【 街のオススメ 】
① 小さなおうち ... ビニールハウスのユニークなカフェ。
https://shinos5.wixsite.com/chiisanaouchi

② 古民家ギャラリーMOMO ... 有機野菜中心の料理がおいしい 。
https://mina-pre.chiba.jp/archives/1412
【 同じ地域で活動するひと 】
坂本一樹 / 日本画家
https://sakamoto-ikki.com

真彩 / 美術家

桧山薫 / 彫刻家

ひやまけいこ / 画家

岡田修平 / サーファー、J'sオーシャンワークス


🙋‍♂️ 記事がおもしろかったらぜひサポート機能を。お気に入りの雑誌や漫画を買う感覚で、100円から作者へ寄付することができます 💁‍♀️