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コロナとパーク ⑫ 『ヒリヒリと焼けるような写真の新多さん』

コロナ禍における、パークギャラリー発のドネーションプロジェクト GIFTED に参加してくれている作家さんの紹介を、最近の表現に関する考察や近況を交えて伝えていきます。

2020.07.17 Instagramより

フィルム か デジタル か それとも iPhone か


最近「iPhone で写真作品を撮っている」という若い作家と知り合った。

写真家の友人に「びっくりしたんだよね」と伝えたら「いいんじゃない?」という返答。他の写真家に聞いても「結構いい写真撮れるよ iPhone でも」と笑ってた。

この場合の「びっくり」は、ぼくの素直な感情だけれど、iPhone なんかで誰かを感動させる写真が撮れるわけないだろうという偏見でもある。表現を学んでいた学生の時も、写真に携わる仕事をしていた時も、コンパクトカメラなんかでいい作品が撮れるわけない、写ルンですなんかでいい作品が撮れるわけない、デジタルなんかでいい作品が撮れるわけがない、と、激動の写真の技術・表現の遷移を間近でみてきた。特にフィルムからデジタルへ移行する時期に写真家のマネジメントの仕事をしていたから、より痛切に感じる。フィルムは高い、デジタルは安い。すぐ納品できるし助かる、現場でチェックして撮りなおせるからいい、という仕事の発注者に怒りを覚えた経験もあるが、いま僕は同じ理由でデジタルでの撮影の依頼をしている。時代はかんたんに変わった。

そういえば写ルンですでも人を感動させる写真は撮れたり、デジタルでもいい作品が撮れる。もはやカメラを持ってなくてもいい写真は撮れるのだ。どこに行くのか、何を選ぶのか、なぜ撮るのか、シャッターを切ってしまう理由や、被写体の存在、出力先の方が重要であるということに立ち返っていくことの方が大事なのだと思うと、iPhone だろうが構わない。むしろ常にカメラを持ち歩いているなんて精欲的でいいじゃない(重要はテーマだよ)とある人は言って笑った。

機械に頼るより自分の目と足に頼る


最近、よく見る写真はみんなフィルム。フィルム文化が戻ってよかった!と言いながら、どれもこれも同じような写真だな、と思うことが多い。生々しくて、でもボケてて、ドライに見えてかなりナルシシスティック。友達。空。海。壁。花。街。ゴミ。自分の居心地のいい場所。限られた行動範囲、時間。インスタグラムを静かにログアウトして、旅に出た方がよっぽど感動できるシーンに出会えるなと思うことが多い。

繰り返すけれど、どこに行くのか、何を選ぶのか、なぜ撮るのか、シャッターを切ってしまう理由や、被写体の存在、出力先の方が重要で、そんなコンセプトが見たいんだろうな。写真に映らない感情が見たいんだろうなと。結局「切り取ってるものはすてきだし、iPhone でもいいと思うけれど、テーマや自分の行動範囲にとらわれないのが大事かもしれないね、と伝えた」。まさにそこにモヤモヤがあったみたい。晴れるといいな。

でも、理由とかそんなの関係ねーと言いたい気持ちもあるんだろうし、写真新世紀のステートメントの大喜利感もちょっとなあと。そんな二律背反も含めて写真は楽しい。

31_omote_tate_A のコピー


ヒリヒリと焼けるような写真との距離


好きな写真集を眺めて飲みながら『写真作品』って、もっとヒリヒリとしてたよなあと感想を抱いていたのを思い出した。写真の前に立って、ぐっと唾を飲み込む音がしたよな、と。美しく焼かれた写真には緊張と緩和があったよなと。必ず自分の作品は自分でプリントしてるそうだ。

GIFTED に参加してくれている Nitta Masanori さんの作品にはそんな「ヒリヒリ」とした感覚がある。空気を運んできてしまうような、湿度や温度を感じる、匂いがしてくるような作品を撮る人だなあと思う。景色を「掴む」「握る」というような握力の写真。その力強さに「祈り」を感じる。手紙を書いて贈るのもいいけれど、額に入れて飾っておきたい写真作品だと思います。ぜひ。

GIFTED #31 Nitta Masanori
https://parkgifted.thebase.in/categories/2632017

Nitta Masanori instagram
https://www.instagram.com/nitta_masanori/

GIFTED は、ポストカードという小さなアートピースを通じて作家のモチベーション支援を行うプロジェクト(コロナのワクチンが普及するまで続けます作家も募集しております)

小さなアートピースで作家活動を支援する GIFTED って?
https://parkgifted.thebase.in/about
加藤 淳也 プロフィール
1982年生まれ。2002年、下北沢のスズナリ横丁の小さなバーでバーテンダーをやりながらライブハウスのスタッフを兼任。数々のライブイベントのオーガナイザーを務めながら音楽レーベルを立ち上げる。2005年、写真家やアートディレクターが所属するエージェントに勤務。第一線の広告の現場で、制作のノウハウを学ぶ。2008年、ウェブメディアやギャラリーを運営するデザイン会社へ転職。ディレクターとして2012年に独立。以後、クリエイティブな機能を持つアートギャラリー PARK GALLERY として、実店舗を東京・末広町で運営しつつ、広告制作や本の編集ディレクションを手がけている。ラップユニット WEEKEND としてアルバムを2枚リリース(2012年に解散)。2016年より、毎年神奈川県で大豆の農業体験イベントを運営。

加藤 淳也 instagram
https://www.instagram.com/junyakato_parkgallery/
ラジオはじめました
https://youtu.be/lPiPHjCaPmc




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