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【 ZINE REVIEW 】 COLLECTIVE エントリー ㉘ 柏倉 風馬 『Blur』(山形県西村山郡大江町)

COLLECTIVE は47都道府県の様々な地域で活動する ZINE 作家さんたちが、距離や時間、キャリアの長さ、年齢はもちろん、住んでいるところの過疎化が進もうが進むまいが関係なく参加できます。地元にリトルプレスを扱ってる本屋がない、中心街の書店に納品したけど無名すぎて埋もれてしまう。ZINE 文化がないので、そもそも売れない。だからと言って東京の書店は緊張してしまう。作ってもどの店に置いていいかわからない。どこで売ればいいかわからない。そもそも売れるのかな。見てくれてるのかな。という悩みを抱えてる若者に東京以外の地域で会う機会が何度かあって、そんな現場の名前の声がバネとなって生まれたのが、この COLLECTIVE というイベントです。

茨城を拠点にリトルプレスレーベルを運営している crevasse と一緒に立ち上げました。今年で3年目。東京以外からの得体のしれない有名無名関係のない ZINE を大歓迎しているのと、たくさん集まっても埋もれさせないぞというのと、参加してくれたからには個別に向き合う、というのがほかの ZINE イベントとの違いであり、ぼくらの意地です。だって MOUNT ZINE 一択なんて退屈じゃない?

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身体性をテーマにした絵

山形はデザイン性の高いスタイリッシュなお店が多いけれど、地元に根付いて店主が一緒に笑ったり泣いたりしてくれるようなお店があまりない。セレクトのいい本屋はあるけれど、若い作り手が新しく作った作品を見せ合い、語り合うような場所はないという。クリエイティブな学生が多い街なのに! デザイナーが作ったスタイリッシュなお店やギャラリーは学生にはオシャレすぎて入りにくいという!なんてこった! 先輩がやってるカフェに行くので精一杯だそう。最初に COLLECTIVE 構想が浮かんだのは、地元・山形のこういったクローズなカルチャーシーンを目の前にしてのことだった。

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なので、山形からのエントリーがうれしい。自然に包まれながらも、地域に根付いたレベルの高いクリエイティビティや、音楽カルチャーが盛んな西村山郡大江町から、美術家・柏倉風馬さんによる ZINE『Blur』が届いた。製本せずにカードを封筒にまとめるタイプの ZINE 。アラカルト的に好きなページだけ選んで飾ることができるのが利点。身体性をテーマに絵画制作をしているという柏倉さんの『Blur』。まるで摘出された内臓のような、生きた肉体の一部のような、生命力の強い肉塊が、モノクロームで描かれている。『Blur』=『ぼかし』の技法を使うことによって、見る側はピントが合わないような錯覚に陥るので、そこにある肉塊が実際そこにあるものなのか、フィクションなのかわからなくなる。物理的な視点を切り落とすことで、脳が視覚を補おうとする力をうまく使って、描いたものにもう1つ別の「見たままではない」軸の意味をつけようとしている。目に見えているだけじゃない新しい意味を、会場で見てる人と一緒にあーだこーだ言うのが楽しい、1つのアートピースと言える ZINE です。

山形をどうぞよろしく。もっとたくさんいそうなのにな、山形。


レビュー by 加藤 淳也(PARK GALLERY)


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作家名:柏倉 風馬(山形県西村山郡大江町)
山形を拠点とし身体性をテーマに絵画制作をしています。
https://www.instagram.com/wahgrahf
【 街のオススメ 】
菓房 かしくら ... 僕の実家でお菓子屋さんです。
http://www.yamagata-kasi.com/kashi/data/0174.html

   


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