COLLECTIVE レビュー #29 えだ 『町の空似』 (愛知県)
今年は例年に比べて ZINE らしい ZINE が多い(ZINE らしさとは)。参加の条件を「ZINEと呼称しているもの」と制限したのがよかったのかもしれない。参加の申し込みがあったけれど断った人も何人もいた。これは ZINE ですかね?と事前に相談してくれる人もいて、申し訳ないけれどその時点で ZINE ではないかもしれないと伝えたりもした。ZINE としてエントリーしてくれたけど、その人の SNS を見たら「小冊子」って書いてあって断った例もある。
だから ZINE らしい ZINE 、しかもそれが COLLECTIVE に向けて作られたものとなると、さらにうれしくなる。
COLLECTIVE 2022 ZINE レビュー #29
えだ 「町の空似」
奥付に For COLLECTIVE と描かれた1冊の ZINE が名古屋から送られてきた。作者は、東海エリアを拠点に油彩画家として活動する、えださん。普段は懐かしいと感じられる風景を油絵で描いているそうだが、今回の ZINE は、懐かしく感じられるモノトーンの風景写真と、詩的なエッセイでまとめられている。
タイトルは「町の空似」。他人の空似という言葉があるように、はじめて訪れたにもかかわらず、どこかなぜか不思議と懐かしく感じる、つまり「似ている町」がある。そう察知したえださんが、訪れたその場所場所で感じたことを、綴っている。これを読んだひとも同じように懐かしく感じるだろうか。そんな問いからはじまる。写真が1色刷りなのは、モノクロ写真のようにじっくり形やパーツの配置を見てほしいからとのこと。
みんながなんとなく感じている現象に「名前」をつけて楽しむ。ある種の発明だなと思った。ぼくがタモリ倶楽部の放送作家だったら即採用してるところ。町の空似。すばらしい感覚だな。
まっすぐな散文も、手で1つ1つ組み立てられたレイアウト(デザイン)も、ところどころで挿入されているイラストも、青い糸も、全てにあたたかみがあって、ZINE らしい ZINE だなあと思わず、ニヤニヤしてしまう。
ちなみに人気のあまり前期で即ソールドアウト。惜しい。もっと多くの人に届けたい ZINE だったな。サンプルは会場で読むことができるので、ぜひ、会期中に手に取ってみてほしい。
明日からきっと、訪れた先々で、懐かしいなと感じたら「町の空似」という言葉が浮かんでくると思う。そんなふうに感じさせるのも、いい ZINE のあり方だと思う。あと、もう、どれだけがんばっても手に入らないというのも、なんだか ZINE らしくていいじゃないですか。
再販希望。
レビュー by 加藤 淳也
---- 以下 ZINE の詳細とそれぞれの街のこと ----
【 ZINE について 】
自分の思う何となく懐かしい風景は、他の人から見たらどうなのか気になり、ZINE にしてみました。写真を単色印刷しているので、白黒写真のようにじっくりと見てもらえたら嬉しいです。
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