『わたしのつれづれ読書録』 by 秋光つぐみ | #43 『くるぶし』 町田康
2024年8月22日の一冊
「くるぶし」町田康 作 (GOTOGOTO BOOKS)
詳しいわけでは全くないのだけれど、俳句や短歌、詩に興味があって、今年は特に大河ドラマの影響もあり、和歌を読んでみたいとぼんやり思っている。
そうこうしているうちに年月が過ぎるばかりで、実際に本を手にする機会を逃しているのだけれど‥
「イマダ」と思い立ったときにハッ身体が動くので、そのときは勢いと流れに身を任せる。その勢いの果てに出会ったのが今日の一冊、町田康による前代未聞のパンクな歌集『くるぶし』である。
そもそもこの日は、別にお目当ての本があって大型新刊書店に立ち寄ったのだけれど、そこには在庫がなかった。肩透かしを喰らい、何か一冊でもゲットしたい気分だった私はなんだか納得がいかず、文芸、文学、詩の棚を何度も巡っては悪あがきをする。
そこで、バチンと目があったのが『くるぶし』の背表紙だった。
書店には文字が溢れ、デザインが溢れ、多くの情報が溢れている。目的があっても、無目的にでも、ぶらりと一歩進むだけで、次々と、常に新しい出会いが生まれる。本が私を待っているかのように。それが書店のおもしろさなのだ。わかってはいるけれど、また、体感した瞬間だった。そして何度でもその体験に、私は喜びを得る。
紫あるいは濃紺の紙に、緑に彩られた活版印刷の文字がギラリと光る。厚さ 17mm の背表紙が、私の視界に入ったその一瞬で、その仰々しさに痺れ上がった。
棚から右手でスッと抜き、ひらりと返した表紙を見て、今度は震え上がった。かっこいい‥。とにかく良い装丁。というかひたすらに私の好み。
ページを開く。目次はなし。いきなり『ボンジョビ』の五文字。
続く『モカシン』『中目黑』『生肉』‥と各章ごとに名付けられたタイトル、私の思考回路は狂い始めた。
「これヤバい‥(震)」私はそのままレジへ、購入し、真っ直ぐ帰宅。説明のつかない、突き抜ける衝動を抑えきれず、早速その晩から読み始めた。
‥もう、この歌たちを、理屈で語るのはやめよう。感じよう。
己の中で何がうずくのか、くすぶってるものがあるのであれば、どの歌に目覚めさせられたのか。この本を衝動買いしたその晩から私は、読みながら、笑ったり、切り裂かれたり、痺れたりしている。何かを感じている。
詩歌集というものに触れたいと思っていたいちばん最初の頃の気持ちを、ぶん殴られて、いきなりパンクスに振り切ってしまった。
私の詩歌集読書、波乱の幕開けである。(続く)(かも)
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