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猫背で小声 | 第14話 | プーさんの電話

ぼくはカフェが大好きです。自分の世界に入り浸り、自分しかできないことを小さな席でコソコソとする感じが。

横を見れば知らない人たちが、セッセセッセと自分の宿題をしています。例えるなら、

しきたるば ずんばのごとし

雰囲気ことわざ。ロバート秋山のネタです。ロバート秋山のように自分の好きなことが世の中に評価されたら、どれくらい嬉しいでしょうか。

かぎてなお そうかまん

これからも自分の好きなことばかりして生きていきたい。



さて、前回 はプーの話でした。

「今回もプーの話です。」

と、いうわけにはしたくありません。自分の中で作った予定調和に逆らいたかったんです。

31歳を迎えた年末。ぜんぜん忙しくないぼくは “プレッシャーにならない程度に” できる年末のアルバイトを探していました。以前、年賀状の仕分けのバイトを経験してはいましたが、『何か違うことをしたい』という気持ちがありました。アルバイト情報が掲載されている本をジロジロと粘着質に見ていたぼくの目に飛び込んできたのは、某デパートが年末に送る商品の仕分け業務と、コンビニでよく見かける年賀状の印刷業務。すぐに興味が湧きました。特に仕分け業務は黙々と仕事ができると想像でき、自分に向いてるかもと感じました。

「よーし、これだ !! 」

と思いましたが、普段ぼくは人と会話しておらず、面接のアポを取る電話が想像以上に高いハードルだということに気がつきます。普通の人なら電話なんて生活の一部にあるでしょうけど、ぼくにとってはこの『電話』というものに物凄く高い壁を感じるんです。電話をかけるということを頭の中で何度もシミュレーションするのですが、用件を言葉としてまとめるのに苦労しました。

待ってはくれんよ、さて、戦(いくさ)

呼吸を整え、デパートの採用担当に電話をしました。電話がかかる「プルルルル」という音で緊張感は MAX です。

「もしもし、採用担当です。」

デパート側に電話がつながりました。

「そちらで募集している求人に応募したいのですが。」

ぼく。

うまく話せたとか、うまく用件を伝えられたとか、記憶はありませんが、話を聞いている途中で何故かデパート側に自ら『断りの言葉』を伝えてしまっていました。


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なぜだろう、せっかくのビッグチャンス。

『ぼくにとってはビッグビジネスだったかもしれないのに』
(小籔千豊より引用)

これが『引きこもり』特有の自信のなさなんだと、ふと思います。電話をしているうちに仕事に対するプレッシャーが頭の中で増し、今までの自信が消えてしまうのです。しかし「こうはしておれん」ということで、気落ちしているぼくに次の考えが浮かびました。


「そうだ、年賀状の印刷業務があったわ。さぁ電話だ !! 」

デパートへの電話の経験のおかげで緊張は少しおさまりました。今度は自分でも納得できるような電話ができ、面接も終わり、是非ともうちでアルバイトしてほしいという返事をもらいました。

デパートか印刷会社か。どちらに縁があって、どちらに行くのが正解なのかは空の上にいる神様とやらが決めると思いますが、人生経験が浅いながらもきっと印刷会社に縁があったんだと、結論づけました。

さてさて、こうして年末のバイトを始めることになります。
やっとこさ。


最後に、


『縁』というのはどこで生まれるかわかりません。つまずいても、人とのつながり、縁で、つまずきが修復されることもあると思うので。縁は大事にしたいものですね。


印刷会社 採用担当御中

「御社が第一希望であります。」


【 おまけ 】

先日、このエッセイに「文章がとても良いので、文章を書く時に気を付けている点や、コツを知りたい。」という質問が届きました。

まず、文章が良いと言ってもらえるのはとても嬉しいです。話す言葉にさえ自信がないので、文章を褒められることはエベレスト級の褒め言葉と位置付けています。

さて質問に対しての回答ですが、文章を書く時にはなるべく自分が話しているような感じで書いています。文章をただ書いてもつまらなく、味気ない感じになってしまうので、できるだけ『話す感じ』で文章を書いています。次に、気を付けている点ですが、『自分が面白い気持ちで書けているか』を重点にしています。『おもしろい芸人さんのことが好き』なように、自分が自分の書いた文章にとっていつまでもファンでいられるように「自分はおもしろいんだ、おもしろいんだ」と呪文を唱えながら書いています。後から見て、自分が思い出し笑いできるような『チョイ笑い』できる文章が理想です。

コツというと偉そうですが、『話すように、かつ、おもしろ風味を入れて書く』ですかね。いくらつまらない人でも、どこかおもしろい部分はあると思うので。その『おもしろい部分を見つけて文章』に、です。

つまらない人を文章でおもしろくしたいんです。

質問に答えているうちに自分は『こども電話相談室』の永六輔になってしまったんじゃないかと、とても気持ちよくなってしまいました。

昭和生まれの例え、スミマセン。

ー 近藤 学

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近藤 学 |  MANABU KONDO
1980年生まれ。会社員。
キャッチコピーコンペ「宣伝会議賞」2次審査通過者。
オトナシクモノシズカ だが頭の中で考えていることは雄弁である。
雄弁、多弁、早弁、こんな人になりたい。
https://twitter.com/manyabuchan00
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