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映画「きっとうまくいく」からインドの教育問題と若者自殺率について考える

先日、インド映画「きっと、うまくいく」を観ました。本作は3時間にも及ぶ映画なのですが、一瞬も飽きることなく、最後までぶっ続けで観てしまいました。そしてその見応えがあまりにも素晴らしかったため、友人にもすぐにオススメしてしまいました。今日はこの映画について語るとともに、その背景にあるインドの社会問題についてもまとめてみようと思います。

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◆映画のストーリー

12億人を超える人口でその多くが労働人口、ものづくり生産の拠点、G20やBRICSに所属するなどの社会的地位、優秀な研究員や科学者、このような背景もあり急成長を続ける現代のインド。そんなインドの未来を担うエリート軍団を輩出する超難関の理系大学。大学内では、優秀なエンジニアを目指す天才がしのぎを削っていた。そんな中で主人公を含む三人のお馬鹿トリオが鬼学長を激怒させる騒動を巻き起こす。しかしその根底に描かれるのは若者の自殺問題や行き過ぎた競争社会などインドの社会問題

◆インドの教育競争という問題

この映画の中で描かれる大学はまさにインドの教育競争社会を描いています。インドは優秀なIT人材を多く輩出していることで有名ですが、その裏にあるのは行き過ぎたまでの競争社会。生まれた時から子供は「ITエンジニアか医者のどちらかになりなさい」と言われ、幼い頃から過度な期待とプレッシャーを与えられます。

映画の中で登場するラジューという貧乏学生は貧しい家庭の中で生まれたがゆえに、親から過度な期待を受けています。その期待に応えるために努力しますが、ある出来事をきっかけに退学処分命令を受けてしまい、そのショックから窓から飛び降り自殺をしてしまいます。このような競争社会に存在するからこそのプレッシャーがインドの若者を苦しめてしまっているのです。

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実際に、教育が原因で都市部の10代の自殺者数の増加が問題となっており、その数は世界的にみてもかなり多いです。都市部の家庭の場合、例えばムンバイのエリート層の93%では、幸福とは子供がエリート校に入学することと留学することだと考えています。それが子供のプレッシャーとなります。その圧力に応えられなかった子供が、毎年3〜5月の試験期間に自ら命を絶ってしまうケースが増加しています。

◆教育のあるべき姿とは

教育のあるべき姿とは、学生が「新しいことを学ぶのに興味を持つこと」だと言っています。しかし、現状は「答えを先に見つけるための競争」になっていると。

映画の舞台となる大学は超優秀。世界各国に優秀なエンジニアを送り出しています。しかしそんな大学を主人公ラージューは「ここは点数の取り方を教えているだけ。新しいアイデアも特許も何も生んでいない」と罵倒します。学長はそれに激怒。「なら君が教壇に立って授業をしろ!」と言い放ち、実際にラージューを教壇に立たせます。少し考えて、彼はそこで黒板に2つの英単語を書きます。

【ファルハーン化・ラージュー現象】

この言葉がわかる人はいるか?30秒で誰か答えろ。初めて見るその単語に対して優秀な学生は我先にと辞書を読み漁り答えを求めます。しかし誰も答えられません。それもそのはず。その問題はラージューが親友の名を使って生み出した造語であって、世の中に存在しない言葉だったからです。

初めて見る言葉に対して、学生は新しいことを学ぼうとするのでなく、1番早く回答にたどり着くために辞書や教科書を漁るという競争をした。これが大学のひいてはインド全体の現実だというのです。競争ばかりしていても何の意味もない。新しいことに興味を持つことが大切であり教育である。この映画では示唆しているのは現代の我々が忘れていることです。

◆アールイスウェル(きっとうまくいく)

この映画のキーワード「アールイスウェル」は日本語訳で「きっとうまくいく」という意味です。主人公であるラージューは苦難に陥りそうになった時、この胸に手を当ててこの言葉を繰り返します。「アールイスウェル アールイスウェル」人の心は弱いもの。何か困難にぶち当たった時、そこに逃げずに戦えるかどうかは心の持ちよう次第です。そのおまじないのようなものが「アールイスウェル」です。心の弱さを認め、でも戦うことを選択する。この映画を観た人なら誰でもこの言葉を覚えておこうと思うのではないでしょうか。


◆最後に

今ならAmazonのPrime会員なら無料で視聴できます。ぜひ観てみてください。ほんと面白くて勉強になります。


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