10−3:労働における五つの次元
前回のnoteでは、仕事の定義について説明しました。今回は「仕事」の対をなす「労働」について深掘りしていきます。
ドラッカーが伝える「仕事と労働のバランス」を取るために、「労働」の定義を知る必要があるんですね。ドラッカーは労働についてこう言っています。
働くことすなわち労働は人の活動である。人間の本性でもある。論理ではない。力学である。そこには五つの次元がある。
またまた抽象的で分かりづらいですね。「仕事は一面で語ることができない、多面的なもの」だと言っているわけです。もっと具体化して分かりやすく読み解いていきましょう。
①労働には「生理的」な次元がある
「生理的」とは、本能的や肉体的という意味です。「仕事には生理的な次元がある」というのは、人に仕事を課すときにはその精神状態まで心配りをしなくてはいけないということです。
当然ですが、人は機械とは違います。ずっと同じ仕事を続けるとイライラすることもあります。肉体的な疲労も引き起こします。視力が落ちることもあるし、肩が凝ってしまうこともあります。単純作業を強いるよりも、複雑な作業を依頼する方がより満足感を持って仕事することができるでしょう。ドラッカーはこう言いました。
仕事は均一に設計しなければならないが、労働には多様性を持たせなければならない。
仕事は「モノ」と同じように決まったものなので大丈夫です。でもね、その仕事が労働に変わるとき、つまり人が仕事をするときは、その人にあった形で仕事をするのが有効です。個人を尊重した働き方をしましょうということです。例えば、テレワークや時差出勤など、個人が働きやすい環境を推奨することが有効なんですね。
②労働には「心理的」な次元がある
人は労働を通して様々な感情を経験することができます。顧客から感謝されると喜んだり、事業がうまくいかなくて悩んだり、思いがけない失敗をして落ち込んだりしてしまいます。労働を通して人は成長できるし、労働を通して人は自分を知ることができます。
ユニクロの柳井さんやソフトバンクの孫さんは十分すぎるほどのお金を稼いでいるにも関わらず、労働し続ける理由は、恐らくこの心理的な次元のためです。彼らは金儲けではなく、彼らの夢や目的を実現するための手段として労働しているんです。
労働がなくなる未来は幸せでしょうか?
ロボットやAIが発達すれば人は働かなくて良い未来が来るかもしれません。でも、人は労働を通して自らの人格を形成してきました。労働がなくなるということは人格形成の手段を失ってしまうことを意味するかもしれません。ディズニー映画「ウォーリー」や大友監督の「FREEDOM」を観れば、労働を捨てた人類の姿が描かれています。それは何も起こらない日常、ただ生きているだけ、退屈な日々です。労働がない未来が幸せかという問いに「0」か「1」か絶対的な正解はありません。でも、労働も単純に悪だと断定することはできないものなんです。
③労働には「社会的」な次元がある
人は働くことで社会に所属することができます。労働は「社会との繋がり」を提供してくれます。そしてこの「社会との繋がり」こそ人が労働を求める理由の一つです。定年で仕事を引退してもなお「働きたい」と考える人がいますよね。彼らはなぜ自分の時間を使ってまで労働したいと思うのか。理由は労働に「社会との繋がり」を望んでいるからなんです。社会で働くことを引退してもなお、社会との繋がりを求めてしまうのは人間の性質です。ご高齢の方が進んでボランティアに参加されるのも同様ですね。
アリストテレスが、人は社会的動物であると言ったのは、人は社会との絆のために働くことを必要とするといったのである。
人間は社会的な動物であるからこそ、属する社会に自らを合わせる能力が極めて高いです。今までイケてない人でもサッカー部に入れば急にモテたりしますよね。偏差値の高い学校に入れば急に成績が上がったりします。人は良くも悪くも周りに合わせて自分も変化するのです。
だから、もしも憧れる人がいるなら、その人が属するコミュニティに属するのは悪い考えではありません。自然と彼に近い価値観や考え方を持つことができます。
④労働には「経済的」な次元がある
人は労働することで賃金を得ることができます。その賃金を使って、家賃を払ったり、食事を摂ったり、ベッドで睡眠することができます。そして、また労働することで賃金を得ることができます。以下そのループ。。。
要するに、人は自身という「資本」を労働を通して「賃金」に変えて、その「賃金」を「資本」に変えて、「資本」を「賃金」に変えて・・・いるのです。
⑤労働には「政治的」な次元がある
労働を行う上で「上下関係」は絶対に無視することができません。組織が正常に機能するために「上下関係」が必要だからです。仮に、上司が部下に仕事を指示するが、部下がそれを無視して行動したとしましょう。すると組織は成果を上げることができず、衰退していしまいます。「命令するもの」と「命令されるもの」が存在するのが組織であり、労働するということです。
▼労働の五つの次元
これまで伝えたように、労働には五つの次元があります。生理的、心理的、社会的、経済的、政治的という五つの次元です。これら五つの次元は、次元という言葉が表すように全く異なるものです。
私たちは「五つの次元」と「五つの次元それぞれの関係性」について、しっかりと理解しようとしないといけません。五つも次元があると考えて嫌になるかもしれません。でもね、もし仕事の生産性を上げて、働く者に成果を上げさせるためには、何らかの解決策か調整策を見つけようとしないといけないんです。
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