【ネグレクトと放任子育てはダメ】子供への関心が薄い親のリスクとは
子を持ち、親の立場になると「自分はちゃんと子育てできているだろうか?」という漠然とした不安を感じることはありませんか?
また、「私は子供の自主性を尊重して放任主義的な子育てをしています」というある種ほったらかしな子育ては良さそうにみえますが、実は落とし穴があるということもご存じでしょうか?
今回は「子供と親の距離感」、特に子供への関心度や物理的な距離が離れていることについて調べてみました。この記事の結論は以下の通りです。
放任主義とは親が子供に要求しないが、子供の要求には反応すること
無関心とは親が子供に要求せず、子供の要求にも反応しないこと
行き過ぎた子供への無関心=ネグレクト、無関心は最も子供に悪影響
半年以上のネグレクトを経験すると成長過程で何かしらのトラブルを抱える
放任しすぎは将来の子供の攻撃性を高める
共働きだと特に無関心や放任になっていないか注意
無関心と放任主義との違いは?
あなたは子育てについて、子供に無関心であることと放任主義の違いや線引きを明確に説明できますか?
ここでは無関心と放任主義の定義や違いを明確にすることで、子育てに無関心であるということがどのような状況なのかについて理解を深めていきましょう。
無関心と放任主義の定義
心理学者ダイアナ・バウムリンドの研究により、子育ては4つのスタイルに分類できることが知られています。そして2つ尺度の強弱によって4つの子育てスタイルは明確に定義することができます。
2つの尺度は以下のとおりです。
これらの尺度から、示させる4つの子育てスタイルは以下のとおりです。
ここまでを整理すると、
無関心:
4つの子育てスタイルの中ではもちろんネグレクトに該当します。放任主義:
ネグレクトと比較して親子関係を構築しようとする傾向にあり、反応性でみるとネグレクトと対極に位置する寛容な親に分類されます。
行き過ぎた子供への無関心=ネグレクト
親が子供に対して無関心であることが、食事を与えない、不潔にする、病気やケガをしても病院に連れて行かないなどのレベルまでゆくと「ネグレクト」とみなされます。
ネグレクトの状態は児童虐待に該当しますので、まずはここをおさえておきましょう。
半年以上のネグレクトを経験することで成人までの成長過程で何かしらのトラブルを抱える
「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」というビスマルクの名言があります。
ネグレクトのような児童虐待レベルの子供への無関心がどのような結果になったのかを歴史から学んでみましょう。
あなたは「ルーマニアの孤児」という言葉を聞いたことがありますか。
1966年にニコラエ・チャウシェスク政権下で、人口増加を目的とした政策がとられました。その内容は、中絶や避妊の禁止、子供がいないことへの課税など、子供がいないあるいは生まないことに対してペナルティを課すようなものでした。
その結果、出生率は増加しましたが、孤児院に置き去りにされる子供が増加し、孤児院は過剰業務となり、孤児たちの世話が十分になされず、結果的にネグレクト状態の子供が大量に生まれました。
6ヶ月以上ネグレクトされた環境で育った子供には将来的に、以下のようなリスクが生じます。専門用語が混じっていますがざっくり言うと発達障害のような症状でしょうか。
不注意や過活動
脱抑制型対人交流障害(人との交流や行動、情緒に問題が出やすい症状)
自閉症スペクトラム障害
そして、6歳までに半年以上のネグレクトを経験した子供は、11歳の時点で衝動的な態度や行動が目立つようになります。
さらに、半年以上のネグレクトを経験することで成人までの成長過程で何かしらのトラブルを抱え、社会に出てからもメンタル的なサポートが必要なほどに生きづらさを感じる場合もあります。
以上から、親ができることとして
「子供にネグレクトを半年以上経験させないこと」
これは最低限守るべきポイントだということがわかりますね。
たとえ夫婦共働きで忙しく子供を託児所や親戚に預けがちだとしても、預け先がネグレクトをしていなければ良いわけです。きちんと預け先で子供がケアされていることを確認しましょう。
もし数カ月近く育児放棄するような状況を確認したのであれば、しかるべき相談やケアをすることが大切です。
ルーマニアの孤児に関連して、子供との関わり方について気になる方にはこの記事もオススメです。
親子関係で子の人生は大きく変わる「三つ子の魂百まで」は本当だった
ここまでは、ネグレクトにおける子供の影響について述べてきましたが、親がどのような条件で子供に無関心となりネグレクトの傾向が強まるのかについてもまとめておきましょう。
ネグレクトをする傾向のある親の特徴としては、以下の通りです。
うつ病
アルコール依存症
薬物使用
その他の精神疾患
これらの特徴に共通していることは、親がメンタルになんらかの疾患を抱えている場合が多いようです。
親である自分が果たしてメンタルが弱いのか?という疑問については性格特性のビッグファイブ(Big5)による性格診断を実施することをオススメします。
5つの性格特性のうちの神経質性 Neuroticism(不安傾向)の項目が高い傾向にある方は、メンタルが弱い傾向にあります。
診断の結果、自分の神経質性が高いことがわかった場合は、無理せず周りのサポートを活用しながらネグレクトにならない環境を維持していきましょう。子育ては長丁場ですので決して無理をなさらぬように。
性格特性のビッグファイブ(Big5)について詳しく知りたい方は、この記事がオススメです。
【保存版】田舎でもできる子どもの才能を見つける時短スキル【Big5】
無関心が最も子供に悪影響
親が子供に無関心でネグレクトを行っていた場合、この4スタイルの中で子供に最も悪い結果をもたらすことがわかっており、前述のとおり子供にとって百害あって一利なしということが明確になっています。
ここで、ネグレクトの親にありがちな行動パターンを紹介しましょう。
子供に愛情を示さない。
無関心でよそよそしい。
子供の精神的な支えにならない。
子供をしつけたり、監督したりしない。
子供の学校での活動や成績に関心がない。
子供の生活全般に興味がない。
また、恐ろしいことに、ネグレクトされた子供は、自分の子供に対してネグレクトを行うリスクが2.6倍も高く、虐待に至るリスクは2倍高いこともわかっています。
ネグレクトは親子で引き継がれていく可能性が高いということはぜひ心に留めておきたいですね。
子供への要求度が低すぎる「放任しすぎ」は将来の子供の攻撃性を高める
ここまで読んでいただいて、「ネグレクトはよくないのはなんとなく分かるし、そんなことはやっていない」という声が聞こえてきそうですね。
確かに現在の日本では児童虐待レベルのネグレクトはそれほどないかもしれません。
ネグレクトは言語道断なので優しい親のほうが良さそうだと思いがちです。
たしかに過剰な手出しや口出しをしないことで子供の自主性を育てることも重要です。
しかし、寛容で子供に介入しすぎない親もネグレクト程ではないものの子供の将来に悪い影響を与えることをご存じですか?
素行の悪い子供を矯正しないと成人になっても暴力的行動が目立つ傾向にあるというデータがあります。
ある程度子供の自主性に任せた方がいいものの、暴力など致命的な問題には親が毅然と対処するべきだということです。
じつは6歳の時点で暴力的な行動が目立っていた子供は、15歳の時点でも同様に暴力的な行動が目立つことが知られています。
一方で、6歳の時点で落ち着いていて暴力的な行動が少ないと評価された子供は、15歳になっても暴力的手段を使わない人物に育っていました。
このことから、6歳の時点で攻撃的な子供はその後も暴力をふるう傾向にあると予測できます。
さらに、問題行動が時間の経過とともに重症化していく症状を「DBD(Disruptive Behavior Disorder)マーチ」と呼ぶようです。
子を持つ親であれば、自分の子供が狂暴なまま大人になって欲しくないですよね。
そんなあなたに朗報です。
子供が4歳のうちに社交性を身につけていた場合、6歳時点での攻撃性は低く、DBDにも陥らないことがわかっています。
逆に4歳までに社交性が身についていなければ、後々攻撃性の高い子供になりかねないということです。
つまり、4歳までは子供の思うまま好き放題にさせるような放任主義的な子育てはせずに、お友達と仲良くすることやケンカしても仲直りをすることなど社交性を身につけさせるために親は介入するということが必要です。
このように、「うちの子はここまでなら大丈夫、ここを超えたら注意しよう」ある程度子供の自主性に任せつつも最低限の介入ポイントを年齢に合わせてあらかじめ考えておくことが大事だと思います。
まとめ
結論として、0~6歳の時期に親子の関係が不健全であれば子供の将来にマイナスの効果をもたらす可能性が高いということでした。
子供は幼い時ほど親のサポートが必要です。夜泣きやイヤイヤ期など親にとって疲れるイベントはたくさんあります。
しかし、子供と向き合っている日々こそが子供の将来性を高める行動を親であるあなたがちゃんととっている証拠なのです。
参考文献
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3. Nagin, D. S., Tremblay, R. E., Bates, J. E., Brame, B., Dodge, K. A., Fergusson, D., Horwood, J. L., Loeber, R., Laird, R., Lynam, D. R., Moffitt, T. E., Pettit, G. S., & Vitaro, F. (2003). Developmental trajectories of childhood disruptive behaviors and adolescent delinquency: A six-site, cross-national study. Developmental Psychology, 39(2), 222–245. https://doi.org/10.1037/0012-1649.39.2.222
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