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だましのテクニックとしてのマルチプルアウト

マルチプルアウトはマジシャン、心理学者などの他、占い師もよく用いる心理術の一つ。
 
マルチプルアウト(multiple outcomes)、すなわち「多数の結果」の派生語で、事前に様々な結果や反応に対する対応策を準備しておくことからその名がついています。
 
例えば、「あなたは最近、大切な何かを失ったように感じます」というようなあいまいな主張を提示し、クライアントの反応を見極める。
 
主張のあいまいさ、解釈の範囲の広がりで、クライアントにとって提示された情報を自分自身に関連付けることが容易になり、結果として相手(占いなら占い師)の主張の信憑性が高まります。
 
マルチプルアウトとは要するに、心理的な操作を通じて、より確信を持って占いの結果を受け入れる傾向にクライアントを誘導する技術です。

占い師(インチキとしての)はどのようにこの手法を駆使するのか。


マルチプルアウト、その概要

占い師はマルチプルアウトの手法を駆使し、クライアントの反応を観察しながらその場で結果を調整し、あたかも本当に予知能力があるかのように見せます。
 
クライアントの微細な反応、体言語、表情変化を注視し、それらの情報を使って最も適切な「アウト」を選択することで「占い」を成功させます。
 
占い師が「最近、何かに悩んでいるようですね」と述べたとき、クライアントが同意すればその問題をさらに探求します。
 
一方否定的な反応があれば、占い師は「それはあなたが問題から逃げている証拠かもしれません」と別の角度から話を進めます。
 
要するにクライアントがどの結果を選ぶにせよ、占い師は自分の言葉が「当たっている」ように見せる。
 
未来を予知する能力を持つかのように見せかけるための戦略、それがマルチプルアウト。
 
簡単に言えば、クライアントの反応を読み取りもっともらしい結果を提示するための、一種の即興技術に過ぎません。

クライアントの反応に基づく結果の操作

占い師のあずさはクライアントの芳雄に対して「あなたは近いうちに旅行に行くでしょう」と。
 
この予言に対し芳雄はどう反応するでしょう?

その反応如何で、あずさはその後に与える解釈を変えます。
 
もし芳雄が驚いた顔をしたならば、あずさは「実はあなたがまだ予定していない旅行の必要性が急に現れるでしょう。それは意外な楽しさをもたらすはずです」などとフォローアップします。
 
一方、もし芳雄が否定的な反応を示したならば、あずさは「旅行と言っても比喩的な意味です。新しいプロジェクトや人間関係の変化というようなことです」と、別の解釈を提供します。
 
また、芳雄が無反応だった場合、あずさは「それはまだ先のことかもしれません。しかし、機会があれば新しい場所や経験に開かれていることが重要です」とさらにアドバイスを追加します。

研ぎ澄まされる即興性

マルチプルアウトの原理の核心は、「多数の結果」への事前準備。
 
マルチプルアウトを実行するためには、まず複数のあり得る結果を適正に想定し、それらに対する適切な反応を準備する必要があります。
 
例えば、「あなたは近い将来、大きな変化を経験するでしょう」と予言した場合、占い師はクライアントが肯定的に反応した場合の対応と否定的に反応した場合の対応の両方を準備しています。
 
肯定的な反応であれば、それを深堀りするための質問やアドバイスを、否定的な反応であれば、その状況を解釈し、新たな視点を提供するための追加の予言を準備しています。

このような柔軟性は、占い結果が個々の顧客に合わせてカスタマイズされているという印象を強め、顧客の満足度を向上させます。

マルチプルアウトを利用することで、顧客の問題や状況のパターンについての、可能性のある幅広い領域をカバーすることができます。
 
多角的な準備と即興性。

これが、本当は個々の詳しい事情など一切知らないクライアントの反応に、占い師が対応するのに非常に役に立つ。

占い師が顧客の反応に柔軟に対応することを可能にし、結果的にそれが占いの信頼性と説得力を高めます。
 
マルチプルアウトが、占い師があたかも本当に予知能力を持っているかのように見せかけるための基盤となる所以です。

心理的な罠に警戒を

占い師が使用するマルチプルアウトという手法は、見事な心理学的手練と言えます。
 
それは、占い師があらかじめ数多くの可能性を準備しておき、クライアントの反応や提供された情報に基づいて適切な「結果」を提示し、個々のクライアントにうまくカスタマイズされ、「信憑性」を高めた結果を提示する方法です。
 
これは真実を予測または露見させる超自然的な力ではなく、認知の偏見や心理的な操作に依存する手法であることを理解することが重要です。
 
それゆえに、占いの結果に全面的に依存するのではなく、それがあくまで一つの視点や参考の一つであることを認識する必要があります。
 
特に、マルチプルアウトのような心理的な操作が使われている場合、自己啓発や決断を下す際のヒントとして占い結果を活用する一方で、結果を絶対的なものとして受け入れるのは慎むべきです。
 
さらに、占い師に与える情報は自分のプライバシーにも関わるため、情報の提供には十分な配慮が必要です。
 
占いはエンターテイメントの一部として楽しむべきであり、それが自己理解や自己啓発の一助となることはあっても、それを生活の全てに影響を及ぼす唯一絶対の道しるべと考えるべきではない、と言えるでしょう。

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