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野の学問の現代版

新潟県長岡市郊外の成願寺温泉。
 
子供のころ法事で訪れて宿泊。
 
子供なりの怖いもの見たさから、夜中に一緒に近くの墓地に行こうとせがんで、大人を困らせたりした。
 
宿泊地の旅館には大規模な遊具が備わった公園が付随していた。
 
長大な滑り台がいくつもあり、メリーゴーラウンドも。
 
ただしこのメリーゴーラウンド、手動式。
 
脇にある手回しハンドルを大人が必死に回していた。
 
子供ながらに申し訳ない気分に。
 
そんな成願寺温泉、残念ながら2004年の中越地震で被災。
 
旅館も廃業に。
 
法事という非日常に華を添えてくれた、記憶に残る旅館でした。


失われた伝統行事

この中越地震は、小千谷・山古志地域に伝わる文化であり国の重要無形民俗文化財でもある闘牛にも甚大な被害をもたらしました。
 
牛舎は倒壊。

200頭以上いた牛も30頭程度まで減少。
 
地元では牛愛が強く、地震から20年たった執筆時現在でも、この時犠牲になった牛たちを悼んで黙とうするのだそう。
 
民俗学者・菅豊(すがゆたか)はこの小千谷地域の闘牛文化を研究対象としていました。
 
被災後は自ら地域の復興に尽力。
 
その支援活動を通じて、現地の人々とより深い関係を築いていったのでした。
 
研究者が研究対象とした地域を、単なる研究対象の垣根を越えて地域に入り込み「現地の人」と化す。
 
民俗学のように研究対象が社会や人の場合、研究においては対象を離れた「客観性」は美徳ではなく、むしろ現地の人と研究者がともに進めていくべきものだ、ということなのでしょう。
 
この底流には、研究は専門家だけのものではない、すなわちそれは公益に資する為のものでもある、という視座があります。
 
これを菅は「新たな野の学問」と称します。

学問は何のため?を改めて問う「野の学問」

野の学問を最初に唱えたのはあの柳田国男。
 
西洋に追いつき追い越せの風潮の中、帝国大学を中心とした官製アカデミズムに対するアンチテーゼとして生まれた概念です。
 
しかしそうは言っても、物理学や天文学の研究を公益との関連で語ることには、民俗学にはない独特の難しさがあります。
 
公益、つまり「役に立つかどうか」を第一義的な課題として基礎科学研究に取り組んでいる研究者はいないでしょう。

いや、人間は多様。

そういう人もいるかも知れない。

断言は慎むけれども、少数派と言うことはできるんじゃないかな、とは思います。

これは基礎研究が企業の研究所や応用分野での研究とは大きく異なるところ。

基礎研究とて社会の一部

そうは言っても、研究者が無関心でいてよいはずがない。

今自分のやっている研究の帰結が、どのような影響を社会に及ぼすのかについて。
 
研究者の勝手な想定や望みとは異なる力学が働き、思わぬ影響を社会に与える可能性がないとは言えません。
 
原子核研究は、直接的には爆弾開発を目的として大きく進んだ例であるという点で適正な事例とは言えませんが、それでもやはり基礎研究と社会へのインパクトとのつながりを論じる上で大きな示唆を与える材料とはなります。
 
政府と民間企業の思惑も絡み、原発推進政策が推し進められた結果の原発事故が科学不信を招いた実例も考え合わせると、自然科学、なかんずく基礎物理学研究における「野の学問」とはいかにあるべきかを、現代に生きる私たちはもう一度問い直す必要があるのかもしれません。
 
私が提唱している(広まってないけどさ)セカンドオピニオンインサイエンス(SOS)は、科学研究が絡む政策決定の場に、研究者だけではなく社会の様々な分野の人が参画し情報を密に交換しようという構想。
 
その為にVRを駆使したプラットフォームづくりを計画しています。

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