O型は「眠い」が口ぐせ?
血液型と性格との関連を論じるサイトは星の数ほど。
中には血液型と性格の関係を人類史から読み解き、例えば
O型の起源のクロマニョンは狩猟生活で集団生活なのでコミュニケーションが得意
A型は農耕民族から生まれ、季節や時間にルーズでは生きることができないからきっちりした性格が多い
などなど。
占いのたぐいでは、その正当性を示す根拠として「統計の結果です」が実に多い。
しかしその実、本当に統計データを開示したものはまず見当たりません。
統計学も舐められたものだね、と。
例えば、どんな母集団でどんなパラメータについて統計を取り、平均値や中央値、最頻値はいくらであったかなどを示した上で傾向の差異を示す、と。
で、これこれの性格について血液型間で有意な差がありますよとした上で、その根拠として人類史的な背景を仮説提示するのであればまだよし。
結論が曖昧なまま根拠らしいことを言われても、「もっともらしいですなあ」としか言えません。
大規模な反証データ
反証なら統計で示すことができます。
1991年のJNNデータバンク調べの企業アンケート(※)。
古いって?あまりにも血液型診断がもてはやされるので(日本だけだけどさ)、昔から反証データが論じられてきているということですよ。
対象は13歳~69歳の都市部住民、毎年3000人規模。
血液型、および自認する性格について問う大規模なアンケート調査ですね。
例えば「物事にこだわらない」を自分の性格と認めた割合。
1982年はAB型が最多で39.1%、88年はB型で最多となり45.1%、などなど。
結果はまちまちなのに、もっともらしい「説明」があると、思い込みも深まる、というもの。
それを狙ったのが冒頭の、「O型はクロマニョン人が‥」的人類史論でしょう。
思い込みが思い込みを補強する連鎖も考えられます。
「B型は○○なものだ」を目にして、「B型の自分は○○なんだな」と思い込む、とかね。
後付けの任意性
歴史で裏付けようとすれば、なんとでも。
O型:クロマニョン人発祥 → 狩猟生活の歴史から、集団活動で存在感を発揮 → 細事に構わない → 「物事にこだわらない」性格
A型:織田信長はA型 → リーダーシップが強く、目的のためには子供や老人が死のうと寺をも焼き討ち → 細事に構わない → 「物事にこだわらない」性格
B型:遊牧民を祖先に持つ → 開拓者の精神と自由でのびのびと暮らしたい欲求 → 細事に構わない → 「物事にこだわらない」性格
AB型:A型とB型が出会って生まれたので双方の性格を持つ。
AB型は上杉謙信がAB型なこともあり、天才肌でカリスマ性 →いくさ上手で猪突猛進 → 細事に構っていられない → 「物事にこだわらない」性格、という別バージョンもあり得るでしょう。
それで言えばB型のあり得る派生として、伊達政宗がB型→リーダーシップが強い→(以下A型やAB型と同様)。
要するに「何とでも言える」のです。
アンケート調査全体として、傾向は総じてまちまち、血液型と性格の間に相関は見られないということが分かりました。
血液型間での性格の差はないかあったとしてもこの規模の統計で表れないほど小さい、即ち血液型から自分や他人の性格を推し測ろうとしても、役に立つ情報ではない。
人生を決めてしまう血液型
日本では例えば、企業の入社試験の申込用紙に血液型欄があったりします。
血液型から予期されるその人の性格が人物評価に加味され合否に影響するとすれば、また別の問題も生じるでしょう。
そもそも人の性格って、どうやって厳密に規定されるのか。
企業や組織内部で性格上問題があるかないかを云々する時、その人に対する他者判断が価値基準のベースとなるでしょう。
つまり「自認する性格」だけでは情報として不足だ、ということ。
同じ性格でも人によって受け取り方が様々だったりするのは、別に珍しいことではありません。
上述のJNN調査では「自認」つまり当人がそれと認める本人の性格のアンケートを取ったものですが、それでも結果は有意な傾向を示さなかった。
これに受け手の受け取り様まで加味するとなると、どうやって統計を取るのか、いや果たして統計とを取る意味があるのかすら疑わしい。
差別・ヘイトの危険性
あるサイトでは、O型は「お腹空いた」と「眠い」が口癖で大抵のことは寝たら解決だとか、A型はたまに「自分ルール」が発動する(要するにわがまま?)だとか、B型は脳内で一人会話をするだとか、AB型は一人でいるのは好きだが寂しさも感じるだとかもうね、言いたい放題。
どうやって調べたんだい?
調べられないのをいいことに、言いたいこと言っているように見えて仕方がないのだが(笑)。
AB型は説明する時擬音が多い、には笑った。
こんな感じで笑えている分には良い。
真に受けず、飲みニケーションのつまみぐらいにしておけば何も問題はないのかもしれない。
しかし世の中そうは問屋が卸さず、入社試験しかり、ビジネスとして大金が動くなど、社会としては小さくない問題も。
そして人類史というならあのナチスのホロコーストや民族差別にもつながり得る。
本人の意思に寄らない血統が民族の先天的価値を決める、とされたのでしたね。
よく言われることですが、「数字はウソをつかないが、詐欺師は数字を使う」、そして「似非科学は特定の価値観と結びつく」
のです。
(※)https://www.jds.ne.jp/datebase01j/
○新刊 脳は心を創らない ー左脳で理解する「あの世」ー
(つむぎ書房、2023年)
心の源は脳にあらずとする心身二元論と唯物論を統合する新説、「PF理論」のやさしい解説。テレパシーやミクロ念力などの超心理現象も物理学の範疇に。実証性を重視し、科学思考とは何か、その重要性をトコトン追求しつつ超心理現象に挑む、未だかつてない試み。「波動を整えれば病気は治る。」こんな「量子力学」に納得しちゃう人、この本を読んだ方が良いかも!?あなたの時間・お金・命を奪うエセ科学の魔の手から自分を救うクリティカルシンキング七ヶ条。本書により科学力も鍛えられちゃう。(概要より)
○ Youtubeチャンネル「見えない世界の科学研究会」
身近な科学ネタを優しく紐解く‥
ネコ動画ほど癒されずEテレほど勉強にもならない「お茶菓子動画」
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?