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スプーン曲げは簡単

超能力ネタでショービジネスを成功させた人と言えばユリ・ゲラー。
 
2024年現在の日本でも、この名前を聞けば多くの人が「ああ、あの人ね」と。

子供も真似する、ショーの天才

彼が日本のテレビに初登場したのは1974年。
 
十八番のスプーン曲げの他にも、テレビの視聴者宅にある動かなくなった時計を、テレビ越しの念力で動かして見せる技も披露。
 
1974年と言えば私は6歳でした。
 
看過され、家にあったスプーンを試しに曲げて見たら、結構簡単に曲げることができました。

簡単すぎてがっかり?いえ、当時の私は大興奮。
 
近所の子供たちを集めて曲げて見せ、みんなが驚いているのを見て感動して涙が出たのを、今でも思い出します。
 
実際にはユリ・ゲラーとは異なり、いかにも力任せに手でぐいっと曲げて見せているのだが、スプーンが曲がるという現象が外形的に同じというその一点で、子供というのは興奮できるんでしょうね。
 
逆に大人になった今、曲げようとしても結構難しいことに驚きます。
 
スプーンの品質も色々ある訳で。
 
現代を生きる私の手にするものに比べ、50年前のまずしかった我が家にあったスプーンが比較的粗悪だったことは想像に難くありません。

超能力もスプーンしだい?

一般的にはステンレス鋼はクロムを含んだ鉄合金ですが、スプーンに使われるステンレスは多くの場合ニッケルが含まれています。
 
その方が耐腐食性があるから。
 
さらにその方が、光沢が生まれ高級感が出る。
 
ボルトやナットに比べ、スプーンにニッケル含有ステンレス鋼がよく使われるゆえんです。
 
そして一般にニッケルを含むと硬度は下がりますが、スプーンに求められる硬さはいかほどもないわけで。
 
美しさを勘案したら、ニッケルは混ぜとこうよとなったのでしょう。
 
もちろん硬さの要素は素材だけでなく、スプーンの形状にもよります。
 
おそらく私が子供のころ曲げたやつは、薄っぺらい代物だったのでしょうね。

難しいのは見せ方

スプーン曲げを、タネや仕掛けのある手品としてでなく超能力のように見せるには、それなりの技術が必要でしょう。
 
実は曲げるのがムリなほど硬くもないスプーンをさも硬いかのように見せる演出。
 
力入れてるのに、軽く曲がった(あるいは自然に曲がった)かのように見せる演出、など。
 
スプーンの柄の細い部分をつまんで持ち、その手を上下にゆすると何となく曲がってきたように見える、というのも多用される技。
 
話術も大事でしょうね、「ほら、柔らかくなってきましたよ」とか。
 
高級スプーンで検索するとよく出てくる、柄の断面が丸っこいのは曲げにくいから、スプーン曲げには不向きです。
 
いや仮に曲げやすかったとしても、高価な時点で不向きでしょうけど。
 
あとは見せ方のバリエーションでしょうね。
 
コツをつかみ、かつスプーンの選択を誤らなければ、両手を使わなくても曲げることは可能です。
 
スプーンを投げ上げて、落ちてきたら曲がっているよ、とか。
 
ユリ・ゲラー本人というより、後発の超能力少年が見せたんじゃなかったかな。
 
投げる直前に自分の腿に押し当てて曲げてから投げると(もちろん気づかれないように)、あたかも空中で勝手に曲がったかのように見えます。
 
人は信じたいものを信じる、とはよく言われますが言葉の魔力にも結構弱い。
 
近年はあまりマジックとは言わず、超魔術とかイリュージョンとか言いますが内容は同じです。
 
ショーとして見せ、ショーとして楽しむ分には問題ないでしょう。
 
ただ、見せ方として「これはタネも仕掛けもないよ、本物の超能力だよ」というスタンスで来るものには注意したい。
 
無いものをあるように見せる、もしくはあるのに無いかのように見せる技は(練習は必要ですが)割とたやすいことは、大学のマジックサークルにでも顔出せばすぐに実感できます。
 
ましてや今日のプロのマジシャンのテクは、テーブルマジックから、車や飛行機、万里の長城など大掛かりなものを駆使したものまですさまじく、スプーン曲げなど子供だましもいいとこでしょう。
 
しかしそうは言っても、超能力と称する技をマジックかどうか識別するのはなかなか難しい。
 
単におなじことをマジシャンがやったからって、超能力が存在しないことの証明にはなりません、論理的にはね。

科学者集団がだまされた

そんな中アメリカのマジシャン・バナチェックは超能力を全否定。
 
超能力と称するすべての技をトリックで説明できる、とします。
 
1979年、ワシントン大学は超能力専門の研究機関・マクドネル超能力研究所を設立。
 
実験に協力する超能力者を募集したところ、応募したのがバナチェック。
 
彼は自らを超能力者と偽り様々な実験に協力。
 
研究者がトリックを見破ることができるかどうか、「逆実験」したのでした。
 
そして実際、4年間にわたって彼は科学者たちをだます、つまりトリックのないホンモノの超能力者と信じさせることに成功したのです。
 
彼の当初の仮説は、科学者と言っても超能力があると信じている科学者は、その信念に沿って実験を記録するであろうことを実証すること。
 
奇しくもその仮説を裏付ける結果となってしまいました。
 
この事件を機に、超能力の科学研究は下火に。
 
余りに識別が難しいのです。
 
マジシャン・ジェームズ・ランディが主催する「100万ドル超能力チャレンジ」は、バナチェックも審査員を務める超能力コンテスト。
 
トリックの無いホンモノの超能力者と認定されれば100万ドルの賞金を得られるわけですが、ついに1人の賞金獲得者も出ないまま2015年、1964年より続いたコンテストは終了しました。
 
「ホンモノ」はいないのでしょうか。
 
現在はマス(大衆)の脳の遠隔同期現象の実証研究が、ロジャー・ネルソンを中心として国際的に取り組まれています。
 
日本では明治大学・石川幹人教授が参加しています。
 
脳の興奮状態が、未知の物理作用により地球規模で伝染するというもの。
 
研究者たちは、有意にその効果はあるとしますがどうなのでしょう。
 
信念に惑わされない、結果の蓄積を望みます。

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