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物理学者と霊との共同実験

アリゾナ大学の心理学者、ゲイリー・シュワルツが2011年に発表した、霊(”spirit”)と共同して行った、霊の存在を可視化する実験について、紹介しましょう(※)。
 
この実験のポイントは、霊の存在を示すシグナルに対する、実験者の存在による擾乱の可能性を排除する点にあります。
 
つまり、実際の実験時に実験者はそこに不在であり、完全自動化の下で実験を行うのです。
 
この実験に協力してくれる霊は二人いて、これ以前にもシュワルツの実験に協力してくれた霊だとのこと。

名前までありますよ、スージーとソフィア。

シュワルツが名付けたのか、霊に聞いたのかは知りませんが。
 
実験に協力してくれるほど知己のある霊がいるというだけで驚きです。
 
驚きというより、どうやって実験に協力してくれるくらい親しくなれたんでしょうね?


実験の概要と結果

実験では、パソコン画面に表示したパワーポイントのスライド上のメッセージと音声で、スージーやソフィアに手順を伝えます。
 
あるタイミングで彼女らに、実験室に用意した光の一切入らないチャンバーに入り、それを「あなたの光(”your light”)」で満たすよう要請します。
 
30分の後、チャンバーからの退去を求めます。
 
日中の時間帯は実験者が直接行い、それにプラスして夜間、実験者不在の下コンピュータの自動制御で同様の実験を行います。
 
実験開始時刻は乱数で決定されるため、実験者も知りません。
 
またスージーとソフィアのどちらがどのタイミングで呼ばれるかも乱数で決定されます。
 
日中と夜間それぞれで、スージーとソフィア各々に対しチャンバーへの出入りを4回ずつしてもらい、チャンバーの中をCCDカメラで撮影し捉えられた光をFFT解析する、というのが実験の全体像。
 
で、結果を言えば、実験者の存在の影響だけでは説明できない像の変化が見られた、と。
 
チャンバーに入ることを霊に要請したタイミングでとられた映像は統計的有意な明るさの増大を示した、ということです。

霊が存在しない場合(PreとPost)に比べ、スージー(Spirit 1)とソフィア(Spirit 2)がいる場合の方が明るい。
"Photonic Measurement of Apparent Presence of Spirit", EXPLORE, March/April 2011, Vol. 7, No. 2.

霊以外の可能性についての考察

これに対する考察としてシュワルツは、2人の霊とのコミュニケーションがうまくいき、彼女らの協力を得て実際に例の存在を示す結果が得られた可能性はあるとしつつ、それ以外の可能性、決定補強理論とレトロPK(念力)の二つを挙げます。
 
前者は、実験の設計段階や実際に実験を行っている時に、実験者が無意識のうちに仮説を支持する結果を得やすくするような(今の場合では「霊の存在が示されてほしい」など)決定をする可能性、後者は、実験者が実験データを解析するときに、実験時のランダムなイベントに時間をさかのぼって影響する可能性。
 
そんなこと起こるのか?
 
そうだとすれば今後の課題は、この結果が霊の存在を示すのか、決定補強理論によるものなのか、レトロPKによるものなのかを特定する実験の設計、ということになるでしょう。
 
それ以前に、出た結果は結果として、その追試ですね。
 
霊にお願いした通りのことが起こって、それが記録に残るようなことが、しかも実験者の影響を排除した環境下で本当に起こっているのかどうか?

科学としての応用性

明治大学・石川幹人はその著書の中で科学の満たすべき10の条件を挙げています(「なぜ疑似科学が社会を動かすのか」、PHP研究所、2020)。

その中で、社会的な営みの上で満たすべき条件の三つの内の一つとして「応用性」を挙げています。

応用性とは、観測された効果が社会的に利用可能であると推測できるかどうか、効果がないのに誤解の上で利用(悪用)される恐れはないか、ということの価値判断。

この点で言うと、この実験の結果は、もしそれが正しいと判断されたら、その応用性はどう考えられるでしょうか?

例えば、チャンバーに霊が入った状態を「イエス」、入らない状態を「ノー」として、霊との質疑応答をする、なんてのが考えられます。
 
こっくりさんみたいだけど、それで例えば未解決事件を解決するなど常人が知り得ない知見を得ることができれば、エビデンスとしては大きいですよね。

たとえ事件の被害者が命を落としたとしても、なお意思を確認して事実関係を確かめることができるとしたら‥。

それだけで殺人事件は激減するでしょう。
 
果たしてそこまでの効果・応用性を、この研究に期待できるのか?

現状では大いに疑問ですが、ともかく今後のこの界隈での動向に注目です。

(※)Gary E. Schwartz, “Photonic Measurement of Apparent Presence of Spirit Using a Computer Automated System”, EXPLORE, Vol. 7, Issue 2, March – April, Pages 100-109.
DOI: 10.1016/j.explore.2010.12.002
 

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