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生き永らえる誤情報

情報社会と言われて久しい現代、意図的な誤情報の流布は珍しくなく。
 
双方向型のSNSともなると伝搬速度がこれまた速い。
 
歴史を振り返ればデマ拡散に関する著名な事例もいくつか存在します。
 
それらの多くは誤情報であることが発覚するまで、そして当事者の謝罪に至るまで、非常に長い時間を要しています。


最後は自白、の古典的事例

例えば19世紀中頃、フォックス姉妹は霊媒として活動し、足の関節で出す音を幽霊が意図的に出す音だと称して多くの人々を欺き、一大ムーブメントを巻き起こしました。
 
しかし、彼女たちがそれを告白したのは事件から40年も経った後のこと。
 
社会的信用を失った2人(次女と三女)は、最後にはホームレス同然の生活に。
 
代償はあまりにも大きかった。
 
しかし棺桶までウソを持って行く人も多いことを考えれば、彼女たちの態度は潔いものとは言えるかも知れません(時間はかかり過ぎたけど)。
 
逆に現代日本にあって、未だに彼女たちをホンモノ、つまり霊の意思表示を媒介した能力者として評価する手合いがいることには呆れざるを得ない。
 
真実を差し置いて、なにを守ろうとしているの?

エルシーとフランシスが妖精の写真を偽造した事例もとても有名な事件です。
 
どんな写真か、は検索すれば出てくるでしょう、「エルシー フランシス」でも「コティングリー」でも。
 
彼女たちがウソを認めたのは実に66年後でした。

一貫してそこにある「己の利益」

研究不正

日本でも小保方晴子がSTAP細胞の存在を主張し、耳目を集めることに。 

研究不正というウソが発覚し大きく報じられたのは2014年、これを書いているたった10年前。
 
やはりと言うべきか、当事者によるウソ認定も不正行為の謝罪も、現時点でまだありません。
 
未熟さによる手落ちだったという趣旨での謝罪はありました。

しかし事実関係はそのようなレベルのものではないことを示しています。
 
そして当然のごとく彼女を擁護する層もいまだに一定数あり、やれやれ。

一般向け講演でデマ拡散

理論物理学者の保江邦夫は、2020年に携帯電話の5G電波がコロナウイルスを活性化させると講演。
 
この主張の内容は、科学的に根拠が乏しいというより、それを否定する科学的根拠が明確。
 
要するに彼が示すその根拠なるもののデタラメさは、物理学の専門家には一目瞭然なのです(拙ブログ「デマを吹聴する『理論物理学者』保江邦夫」)。
 
専門家がその専門分野で明らかな誤情報を、専門外の一般の人向けに振りまくのはこの上なく悪質、と個人的には思います。
 
当然のようにこの件も、当人による謝罪は今に至るまでなし。

Youtubeに上がっていた動画は、いつの間にか消えてました。

さすがに後ろめたかったか。

年齢的に考えれば、彼はウソを墓場まで持って行くつもりでしょうね、間違いなく。

学界を巻き込み教科書レベルまで広まったデマ

専門家のウソと言えば、考古学分野の藤村新一事件は忘れてはなりません。
 
彼は、日本における旧石器時代の存在を示す石器捏造を行ったことで有名な人物。
 
不正発覚前、彼の「功績」は一般向け歴史書にも載るほど広範に知れ渡り、新設された東北旧石器文化研究所の設立にも参画、そして複数の受賞歴も。
 
この事例は、最終的には当人の謝罪という結末を迎えました。

しかし最初の偽装から見て少なくとも20年かかったうえに、不正が明るみに出たのは本人の申し出などではない、残念ながら。

メディア関係者の隠し撮りによって彼が自らの手で石器を埋めているところが公開されたのがきっかけでした。

それがなければ、おそらく彼はその後も世間を欺き続けていたことでしょう。

なおこの件に関しては、藤村個人ではなく何らかの組織的なかかわりの可能性も指摘されています(※)。

誰でも自分がかわいい、は免罪符たりえない

意図的な誤情報が謝罪によって幕を閉じるとしても、なぜこれほどまでに時間がかかるのか。
 
まず挙げられるのは、その目的が売名による経済的利益にあること。
 
非を認めることで予想される不利益と対比すれば、すんなり謝罪とならないことは容易に想像できます。
 
ビジネスが軌道に乗れば乗るほど、有名になればなるほど、後戻りもできなくなるでしょう。
 
フォックス姉妹はこのケース。
 
イスラエルのディスコでの奇術ショーでキャリアをスタートさせたユリ・ゲラーも、ひょっとしたらこのクチだったのかも知れません。
 
自己正当化が長期化することで、実際には誤情報を広めていてかつその自覚が当初はあったとしても、自分の行為を正当と思い込むようになることがあります。
 
これには虚言癖、もしくは統合失調症や解離性障害等の精神疾患が要因として考えられます。
 
誤情報が誤情報であることを示す明確な証拠がない場合、もしくはそれがあったとしても、それまで享受した上述のウソのメリットを手放したくない欲求が強ければ、そのまま逃げ切りを図るモチベーションが働くでしょう。
 
保江は講演の動画を削除しました。

しかし講演をし一般の人をあざむいた事実は消せません。
 
撤回も謝罪もない以上、私はこの問題を追及し続けます。
 
金(広告)のとれる情報が重宝される社会。
 
リポストやシェアで真偽不明な情報が拡散されやすい現代に生きる私たちは、誤りが誤りであることを認めずこれを覆い隠そうとする、社会と個人の心理の力学の存在にも気を配る必要があります。
 
(※)「神々の汚れた手」(奥野正男、梓書院(2004))
 

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