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あとを絶たない陰謀論

世界は秘密結社に支配されている、とかのやや食傷気味な陰謀論。

もはや化石?

いやまったく、デラお元気です(笑)。


いつまでしゃぶるのそのネタ

例えばそれはフリーメイソンだったり。
 
フリーメイソン、正しくはフリーメイソンリー(Freemasonry)は、陰謀論者が好んで「影の世界支配者」に仕立て上げる団体。
 
実際には推薦人と数千円の年会費で入れるただの親睦団体なのだが。
 
お笑いさんが、本業で売れなかったのか変な言説広めちゃうし、まったくもうね。
 
確かに数百年の歴史がありかつその発祥ははっきりせず、対外的な事業以外は秘密のところもあり、なかなかミステリアスなところはあるのだが。
 
だからと言って、宇宙人と結託して高度な軍事技術を持っているとか、某政府に働きかけて戦争を起こすとか、はたまた株価を操作し社会に混乱をもたらしているなんてねぇ。

ミステリアスなものにネガティブさをリンクさせるってどこかこう、クラスの内気で無口な子をいじめちゃえ的根性と構図が似ているような。
 
それにしても都市伝説って便利な言葉だと、つくづく思います。
 
嘘と明言して吐く嘘ほどウソっぽくもなく、かつ信じることに対する自己責任性を強調しながらつける嘘。
 
こう書くと「お前もフリーメイソンの回し者だろ」という輩も出てくるし、で。

陰謀論は他にも、ワクチンにはビル・ゲイツによってマイクロチップが入れられているとか、大地震は地震兵器によるものとか、闇の勢力によって航空機から有害物質が散布されている、などなど。
 
STAP細胞はアメリカ政府の謀略でつぶされた、なんてのもありましたねぇ。
 
もはやバイトの面接に落ちても彼女にフラれても、階段でこけても政府の陰謀か?

原因不明は気持ち悪い

拙ブログ「信仰心と男の勘違い同根説」で、エラー管理論と宗教の起こりの関連について書きました。
 
よく分からない原因不明の現象に接した時、その背後に何者かの意図を感じるかどうか、が身辺の危機への対処に影響し、「感じる」傾向の強い方が身を危険にさらす確率が減る、と。
 
たとえその原因が、あなたに襲いかかろうと意図している猛獣であったとしても、単なる自然現象であったとしても、です。
 
その結果、何者かの意図なるものが元々は存在しなかったとしても、あたかもそれが存在するかのように感じてしまうように人類は進化した、と。
 
自然現象ではない場合、つまりこの感じてしまう何者かというのが実際に存在する場合、それが(当然だが)神やら悪魔やら妖精など神秘的なものなどではなく、他人のしわざであった場合、それでも「何者かの意図を感じてしまう」感性は身の安全の役に立つだろうか?
 
答えはイエス。
 
この「身の安全」の意味は、社会生活上の「安全」ということです。
 
他者(人間)の意図を感じるということは、自分以外の人間も自分と同じように心を持っていることに想像力が働いている状態。
 
その人なりの経験をしており、独自の知識に基づき目的や信念をもって行動し、感情を持っていることを認めるということです。
 
それらを導きとしたコミュニケーションは円滑になり、複雑な社会生活は適正なものとなります。
 
この想像力発揮が行き過ぎ、自然現象にまでこの想像力が働いてしまうことが、歴史的には宗教発生の要因となったのでした。

そしてこれがまた日常生活レベルでは、件の陰謀論の源ともなり得ます。

不確実性と心理的コントロールの喪失

自然現象のように把握が困難で不確実な現象に対し、その背後に特定の意図的なものを感じ取り、整合的な枠組みをひねり出して、理解できないものの中に秩序を見出し予測可能なものに昇華させる、この生理が陰謀論を生みます。
 
心理学者のWhitsonとGalinskyは、被験者をコントロール感の無い状態、即ち自分のどんな努力も無駄となる状況下に置いたところ、被験者が陰謀論的な思考に陥りやすいことを実験的に示しました(※)。
 
この論文には、陰謀論が生まれる初期段階としてのゲン担ぎとかまじない的なものが例示されています。
 
例えば野球でピッチャーが交代する時、交代するピッチャーはファールラインを右足で越えるか左足で越えるか決めている、というもの。
 
あるいは勝ち続けている限りヒゲを伸ばし続け負けたら剃る、とか。
 
もちろんヒゲと試合の勝ち負けは無関係なことは当人も百も承知でしょう。

しかしそこは勝負の世界。

なにか得体のしれない力みたいのを感じ、すがる気持ちがそうさせるのかもしれませんね。

余談ですがこの論文には、ゲン担ぎとはちょっと異なりますが、スカイダイバーがジャンプ直前に視覚的ノイズにより存在しない人物を見てしまう事例を挙げています。
 
私(種市)はこれを書いている現在スカイダイビング歴26年ですが、そのような経験は全くありません。
 
そして飛行機から飛び出す瞬間に存在しない何かを見たなどと報告した人も、周りに一人もいません。
 
幻覚が判断を狂わせるようなレベルで生じるのであれば危険ですが、幸いそのようなことは少ないようです。

陰謀論につけ入らせないメタ視点を

ま、それはともかく、誰でもコントロール不能の感覚は心細いもの。
 
その感覚を低減し把握感・コントロール可能感を生み出すのに陰謀論は役に立つ、ということですね。
 
陰謀論的な誤認識は、直観重視の認知活動でより鮮明になります。
 
メタの視点で多面的に物事を捉える、その為にもより多くの知見に触れる、即断しない等の合理性を持った論理思考が求められます。
 
専門家が陰謀論を意図的に振りまく現状もあります(「デマを吹聴する『理論物理学者』保江邦夫」)。
 
「8時だョ!全員集合」でおなじみのザ・ドリフターズが、日本人の精神を破壊するためにGHQとユダヤ人によって仕組まれたものだというトンデモ陰謀論もあります(※2)。
 
一見するとばかばかしいようですが、流布しているのは著名人。
 
それなりの影響力があります。
 
情報を受ける我々は、論理や合理性を保ち、適正な探究心で対抗するしかないでしょう。
 
(※)”Lacking Control Increases Illusory Pattern Perception”, Jennifer A. Whitson and Adam D. Galinsky, Science, 3 Oct 2008, Vol. 322, Issue 5898, pp. 115-117
DOI: 10.1126/science.1159845
 
(※2)
「人生で大切なことはオカルトとプロレスが教えてくれた」(大槻ケンヂ、山口敏太郎、角川学芸出版、2015年)
 

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