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健全な恋愛体質 #Case1

自分にないものを持っている人はみんなかっこいい。
特にそれが自分も欲しいと思うものだったらなおさらだ。

私は少女漫画を読みすぎたのかもしれない。
恋って、心臓がバクバクして、顔が赤くなる感じがして、味わったことのない感覚になる。


「これが『恋』なのかぁ!!!」


あのドキドキ感がたまらなく好きで、その感覚に味を占めた私は、
「スキル:誰でも好きになれる」を簡単に発動し、簡単に恋に落ちて、簡単にドキドキしていた。

小中高とそれなりに恋愛もしてお付き合いもしたけど、高校時代は既婚の先生のことを好きになってしまい、もちろん叶わぬ恋でただただその先生に質問をしに行くためだけに物理を勉強した毎日だった。
だから高校生カップルとか制服デートなんかはあこがれだけで終わった。

大学に入ってこれまた楽器のものすごくうまいサークルの先輩のことが好きだった。先輩は授業の空きコマに個人練習にも付き合ってくれて、その練習の時なんてまるでデートの待ち合わせに行くときみたいだった。
大好きな先輩が時間を私のためだけに使ってくれる90分。
幸せ以外の何物でもなかった。
でもその恋は、同じサークルの同期の子に宣戦布告され、砕け散った。かわいくもなんともない、楽器もあまりうまくない、なんかどんくさい。そんな私が勝てるわけなかった。当然の結果だし、全私が大きくうなずいて納得していたから、そんなに未練はなかった。

そして大学3年の春、叶わぬ恋に3年を費やしたところにまた違う風が吹いた。

コンビニのバイトを始めたばかりで、その日が初めての朝勤務だった。
私の働いていたコンビニは駅の近くで、朝は電車が駅に着く時間になると同時に高校生や通勤の方のラッシュが始まる。朝は夜勤の人が一人いて、そこに朝勤務の人が一人、同時に店長かマネージャーが出勤でメンバーは通常3人だ。その辺のことも知らずとりあえず時間の少し前に休憩室についた私の目に飛び込んできたのは、映画館の上映スケジュールの裏にびっしり書かれたメッセージ。夜勤のお兄さんが書いてくれた伝言だった。

『marinさんへ
今日マネージャーが時間どおりに出勤できるかわからないそうなので、売り場に出たらやることを書いておきます。
7時半までにトイレ清掃と外清掃をお願いします。この時間の外清掃は落ちてるゴミを軽く掃くだけで大丈夫です。
終わらなかったらその時はその時で(^^)
もしかしたら朝ラッシュを二人で捌くことになるかもしれないので、レジ操作とかわからないことがあったらいつでも呼んでください。
よろしくお願いします。』

(なにこれやさしい)
(恋に落ちる音)

この後3か月くらいでこの夜勤青年(私と同い年だった)とお付き合いすることになったのでした。

私が恋に落ちた要素
①初めての朝勤でめちゃくちゃ不安なところに優しい言葉(しかも手紙)
②超絶忙しいところを二人で乗り越えるという初めての共同作業感+達成感
③叶わない恋ばかりしてきたここ数年の中で最も手が届きそうなこの感じ

今これを書いてて思うことは、
「チョロすぎだろう」ということ。

健全な恋愛体質になるまでの道のりはまだまだ長そうだ。

(Case2へ続く)

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