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フルーチェ「簡単、ミルクと混ぜるだけ!」

子どもの頃同じマンションだった友達の家は、7人家族だった。5人兄弟にお父さん、お母さんで7人である。私は兄弟が弟しかいなかったので、賑やかな家が羨ましかった。
その家とは幼稚園の頃から家族ぐるみのお付き合いで、お互いの家へお泊りするほど仲が良かった。あんまり頻繁に行き来があるのでそのうち事前の電話連絡もしなくなり、ある朝起きたらその家の2歳の赤ちゃんが私の胸の上に乗っかっていたこともあるくらい、家族同然の付き合いだ。

上から2番目の女の子が私と年が近かったので、特によく遊んだ。
ある日、いつものように友達宅で遊んでいるとその子が「おやつ食べよう」と冷蔵庫から大きなボウルを引っ張り出してきた。

なんだろうと覗き込むと、中で白い液体が波打っている。

「フルーチェ」だった。

桃やいちごのソースに牛乳を混ぜてつくる、杏仁豆腐のような甘いおやつである。
恐らくフルーチェの素一袋分を丸々使ったのだと思う。
ボウルいっぱいのそいつは、「フルフルのフルーチェ」というより、「ブルンブルン、タプタプのキングスライム」だ。

彼女はボウルにもともと突っ込んであったカレースプーンでフルーチェの一山を崩してパクパクと食べ、当たり前のようにスプーンを再び突き刺して冷蔵庫へ戻した。

・・・驚きのあまり、私はその後自分がフルーチェを食べたかどうか覚えていない。
きっと、彼女の家ではあのやり方でフルーチェをシェアしていたのだ。
ボウルいっぱいのフルーチェを、5人の兄弟たちが代わる代わる、冷蔵庫から取り出し、一山たいらげ、また戻す。
子ども心にカルチャーショックを感じたが、羨ましい気持ちもおさえられなかった。

フルーチェは今も発売されているようである。検索してみて欲しい。
パッケージには、カクテルグラスに盛り付けられたフルーチェが載っている。

ボウルいっぱいのフルーチェを抱え込んでカレースプーンで豪快に頂く光景も、想像してみて欲しい。



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