見出し画像

粗利益率を上げる方法を考えてみる

我が社は、法令遵守はもちろん、正直商売がモットーです。
ただ、あまりにも正直に価格を付けすぎるので(要は安売りしすぎ)、社長から粗利益率(以後「粗利率」)をもっと上げるようにと、毎日のように指示されています。
ある日の社長とわたしの会話です。

社長「イーボルとまではいかなくてもさ、もっと高く売れないの?」
わたし「イーボルだけに、イーボリ? 良いいいボリ、なんつって。」

社長「オリトラみたいにさ」
わたし「ボリトラ?」

社長「やっぱりABCが一番上手だよね」
わたし「エー・ボリ・シイ?」
※「えぇかっこしぃ」のようなニュアンスで

※「イーボル」とは婦人靴のメーカーさんで、小売りもしています。
※「オリトラ」とは「オリエンタルトラフィック」さんの略です。
   同じく婦人靴で、大変優秀なSPA企業さんです。
※「ABC」とは言わずと知れた、業界No1の靴店「ABCマート」さんです。

わたしの悪ボケに、一切のツッコミもないまま、社長は言いたいことだけ言って去っていきました。ボケの無駄使いです。

チェーンストアの原則では、粗利率は「一定」です。年ごとはもちろん、月ごとにもほとんど上下しないのです。世界一の小売業「ウォルマート」は、毎年の粗利率と経費率が見事に一定です。つまり、営業利益率も一定です。1万店舗以上あるのに、すごいコントロール力です。
我が社はたった72店舗しかありませんが・・・、粗利率、下げるのは物すごく簡単なんですけどね。上げるのは大変なのです。

なので今回は「粗利率を上げる」について考えてみます。

方法は、大きく3つ。
1、原価を下げる  2、売価を上げる  3、値下をしない

1、売価そのままで、原価を下げる

メーカー品・・・×
現状の生産背景からは、最も難しいです。
材料価格や海上運賃がコロナの影響で、ものすごく高騰しています。
そして、靴の生産国ベトナムのロックダウン以降、海外の大手メーカーが中国に生産拠点を戻してきたため、中国の工場は、強気です。
さらに、中国では地域によって今でもロックダウンしていたり、停電が頻繁に起きたりで、生産が安定しないため、高く買ってくれる企業の注文を優先しています。
先日も、日本の有名メーカーが値上げの話をしに来たばかりです。定番品がすごい額、値上がりすると聞いて、愕然としてしまいました。

流通経路の見直し・・・〇
問屋さん経由からメーカーさんとの直接取引にしたり、問屋さん同士でも、条件の良い方から仕入れたりすることです。
タケヤさんからの事業譲受の際に、だいぶ整理しましたが、まだまだ改善しなくてはなりません。来春から、取引額の大きい2ブランドで、流通経路の変更を決めました。
工場と直接取引にして、商品のオリジナル化も進めていきます。

構成比を変える・・・〇
原価率の低い(粗利率が高い)部門の構成比を上げ、原価率の高い(粗利率が低い)部門の構成比を下げる。
また、部門内でも取引先ごとの利益の貢献度によって、構成比を見直す必要があります。

2、原価そのままで、売価を上げる

メーカー品・・・×
我が社の意思では、できません。
メーカーの希望小売価格が決まっていて、競合他社でも扱いがあるので、むしろ値下競争をしているくらいです。
希望小売価格自体が来年の春からメーカー主導でどんどん値上されることが予想されますが、我が社の仕入価格は、メーカー価格の○○%(掛け率)と決まっているので、売価が上がれば原価も一緒に上がります
掛け率を下げてもらうように交渉するしかないですね。

オリジナル商品・・・
できれば上げたくないです。
原価がとんでもなく上がっているので、販売価格の据え置きができないかもしれないですが、最後まで企業努力でなんとか売価を抑えたいところです。

売価を上げられるとすれば、「付加価値を高める」ことです。
それは「品質」なのか、「ブランドイメージ」なのか、「サービス」なのか。

3、値下げ販売をしない・・・〇

チェーンストアの原則は、「エブリデイ・セイム・ロー・プライス(ESLP)」です。いつでも安いので、基本的には価格を上下させません。
一方、我が社は、値下げをしなかったら、全く売れなくなるかも、という恐怖心から、すぐに値下をしてしまいます。しかし、値下をする場合、販売数が劇的に増加しない限り、利益額は上がりません。

売価100 原価60 粗利額40の場合
(粗利率40%)

10%引きして粗利額40を取るには、1.33倍の数量を販売しないとなりません。(粗利率は33%)

30%引きした場合は、なんと、4倍の数量を販売しないといけないのです。(粗利率は14%)

※販売数が増加すれば、その分、変動費(経費)も増えますので、粗利額は同じでも、利益は少なくなります。

薄利多売で、粗利率は低くても、販売数量を増やして粗利額を積み上げる方法が、もはや通用しなくなっていますので、やり方を抜本的に変えなくてはなりません。チェーンストアの原則では、厚利多売なのです。(それでも売価は安い!)

値下げをしなくても済むためには

バイヤーの仕入技術の向上
やはり、バイヤーが商品選定を失敗しないことです。

選定ミスは必ずあります。二ハにはちの法則では、2割の商品が8割の売上(利益)を稼ぐと言われていますので、残りの8割は失敗ともいえますが、どんなに売れ筋ばかりを集めても二ハの法則通りになりますので、ある程度の選定ミスは仕方のないことです。
しかし、同じような形の商品を色々な取引先から仕入れてしまったり、在庫がまだあるのに、新規でまた同じような商品を仕入れしてしまったりといった、うっかりミスによる失敗(品揃えの重複)は防がないといけません。

失敗する危険性があっても、「ナイス、トライ!」となるような、新しい品種やトレンドのチャレンジは必要です。
ただ、流行が、以前失敗したことのある形(品種)の場合は、やるべきか、やらざるべきか、かなり悩ましいのですが・・・。
思い切って挑戦したら、新しい品種やトレンドを育てること(ガマン)も大切です。

そして肝は、発注する型数と数量です。
あれもこれも仕入するのではなく、売れ筋の型だけに絞り込み、さらにその中でも重点販売をする商品を決めて、積み込みをしなくてはなりません。
割引販売することを前提とした発注数だと多すぎるので、減らさないといけないのですが、どの型もまんべんなく減らすのではなく、型数を減らすことによって、1型にかける発注数は増やさないといけないのです。
二ハの法則の「二」になると思う型に、「ハ」割の数量を発注するイメージです。実際はそこまで極端ではありませんが。
重点販売品が、タイムリーな補充で売り続けられれば最強です!


以上、色々な策を考えてみました。
さらっと書いていますが、どれも難しい技術ばかりです。
難しいからこそ、上手な企業と下手な企業とで、差が付くんですよね。

やはり、売価はなるべく上げたくないので、原価を下げる努力をしつつ、値引きに頼らなくても、お客様に、履いてみたい、欲しい、と思っていただける、「最強の商品構成」を作りあげていきたいと思います!

いいなと思ったら応援しよう!