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Twitterのパプリカ @papurika_dreams です。映画、ドラマ感想など書いていきます。座右の銘は「What would Rachel Berry do?(レイチェル・ベリーならどうする?)」基本、映画やドラマについて全ての文章がネタバレ含みます。

最近の記事

”正解”じゃないとだめですか?クドカンが山田太一から譲り受けたタイムマシン『不適切にもほどがある』

*この文章と埋め込まれている動画は『不適切にもほどがある』第7話までと山田太一作品のネタバレを盛大にしています。それぞれぜひ本編をご覧になってからお読みください。 Ⅰ、脚本家 山田太一  令和5年11月29日、脚本家山田太一が逝去した。浅草生まれの山田太一は、松竹に入社してから大船にあるその撮影所に近い川崎に居を構え、多摩川周辺の東京近郊の家族の物語を書き続けた。そして川崎の施設で最期を迎えたそうである。山田太一は言わずと知れた日本を代表する名脚本家のひとりである。『男た

    • 私たちは狂って生まれて正気になる 『ボーはおそれている』

      *以下の文章は『ボーはおそれている』と関連作品についてのネタバレを盛大にしています。もしよかったら動画を再生しながらお読みください。  Ⅰ、アリ・アスター作品の”病理”  精神医学には病跡学という分野がある。精神疾患も芸術も標準的な人間からの逸脱という点では同様であるとみなし、芸術家の作品からその作者の作家性(作者の人格そのものではない)の病理を診断する領域である。アリ・アスターという作家はその病跡学の対象にするのに十分なほど自己開示をしてくれる、もう自分だだもれな作家で

      • 『スキャンダル』/あなたは彼女たちと手をつなげますか?

        ※この文章はネタバレに全く配慮しておりません。どうぞ本編を見てからお読みになってください。 “Fox News star Gretchen Carlson dropped a major bombshell(「Foxニュース 人気キャスター、グレッチェン・カールソンが強力な一撃を食らわせました」).” 映画『スキャンダル』作中で、実在の人気キャスター グレッチェン・カールソン(ニコール・キッドマン)がFoxニュースとそのCEOロジャー・エイルズ(ジョン・リスゴー)をセクハラ

        • 『ミッドサマー』/ようこそ、ここは「メンヘラ」のいない村

           ※以下の文章はネタバレに全く配慮しておりません。どうぞ映画本編をご覧になってからお読みください。 「ねえ、わたしまた彼に電話しちゃった、彼に嫌われたと思う?またお姉ちゃんのことで不安になっちゃって。重い女だと思われちゃったよね、嫌われちゃったよね。」  『ミッドサマー』の主人公ダニが女友達と電話で話している会話だ。ダニはどうやら精神的に不安定で希死念慮の強い姉を持ち、彼女のことが心配なあまり姉が不穏な状態になると共振するように自らも不安定になるようなのだ。それに対し腐れ縁

        ”正解”じゃないとだめですか?クドカンが山田太一から譲り受けたタイムマシン『不適切にもほどがある』

          なぜ女優は年をとると道化を演じなければならないのか 下/「おばちゃん」がBadassになるまで

          (なぜ女優は年をとると道化を演じなければならないのか 上 https://note.mu/papurika_dreams/n/n35fed0103cb3 に続きます) 先日、Twitterが藤原紀香の話題で沸いていた。彼女が久しぶりに主演したドラマがどうやらあまりに仰々しく馬鹿げた演出で、それを見た人たちが高揚しながらその内容を書き込んでいるのだ。90年代後半、彼女が人気絶頂期にナンシー関がそのやりすぎ感や古典的なまでの芸能人ぶりを非常に洗練された文章で皮肉ったことを皮切

          なぜ女優は年をとると道化を演じなければならないのか 下/「おばちゃん」がBadassになるまで

          なぜ年をとると女優は道化を演じなければならないのか 上/『FEUD/確執 ベティVS ジョーン』

          『FEUD /確執 ベティ VS ジョーン』はgleeのプロデューサー、ライアン・マーフィー制作の連続ドラマだ。これは巨匠(とあえて言いたい)ロバート・アルドリッチ(アルフレッド・モリーナ)監督作品の『なにがジェーンに起こったか?』制作内幕劇を題材に2人の大女優、ベティ ・デイヴィス(スーザン・サランドン)とジョーン・クロフォード(ジェシカ・ラング)の女優人生の後期を描いたドラマである。2人は30年代のハリウッド黄金期に映画女優となり、それぞれに苦節を味わいながらスターになっ

          なぜ年をとると女優は道化を演じなければならないのか 上/『FEUD/確執 ベティVS ジョーン』

          「そのコは結局運がなかったのよ」笑いの裏に描かれるクドカンの残酷

          宮藤官九郎作品を見ていると、常に私の頭の中をある言葉が渦巻く。 「この世は残酷である」 これをひたすら伝えたくてクドカンはあらゆる物語を作っているのではと思うほどだ。それを特に強く思わせたのが他でもない『あまちゃん』である。NHK朝ドラですらクドカンはその手を止めなかった、いやむしろ他の作品よりも一層その傾向を強めたのだ。 「ま…結局は運よね、運がなかったのよ、そのコは」鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)の台詞である。これはアキ(能年玲奈)の母親 春子(小泉今日子)が音痴で

          「そのコは結局運がなかったのよ」笑いの裏に描かれるクドカンの残酷

          「ダッセェくらいなんだよ我慢しろよ!」〜『監獄のお姫さま』『あまちゃん』『マンハッタンラブストーリー』に流れるクドカンからのメッセージ〜

          【ネタバレ注意】 『ゆとりですがなにか』終了後、皆に待ちに待たれていた宮藤官九郎ドラマ『監獄のお姫さま』が好評放送中だ。日本のドラマを一切見なくなった私だが、『あまちゃん』が魂のど真ん中にどすんと投げ込まれて以来、彼のドラマだけは欠かさず見るようにしている。しかしこれから書くことを踏まえるとこのように自己言及すること自体、宮藤官九郎氏に好印象を持たれるかはわからない。 このドラマは、刑務所仲間の女たちの復讐譚コメディである。家事、子育てと仕事を両立させた完璧さでかえっ

          「ダッセェくらいなんだよ我慢しろよ!」〜『監獄のお姫さま』『あまちゃん』『マンハッタンラブストーリー』に流れるクドカンからのメッセージ〜

          『ノクターナル・アニマルズ』

          【ネタバレ注意】 人生にはその節目節目で乗り越えなければならない試練がある。夢想していたよりもずっと能力のない自分、幻想を超えて1人の人間を愛し続けることのできない自らの酷薄さ、幻影の装飾抜きにそのたび露わになる自分の実態と向き合い、決着をつけねばならない。 主人公、スーザン(エイミー・アダムス)はとても幸運な女性に見える。ここでいう彼女の幸運とはアートギャラリーのオーナーとしての名声や莫大な資産やハンサムで社会的地位のある夫(アーミー・ハマー)を持っていることを指さ

          『ノクターナル・アニマルズ』