月がきれいなので。とっておきの写真を送ります
これは旦那と結婚する前のおはなし。
「月がきれいだね」
これを『アイラブユー』という意味合いで使う男についてどう思うか、ある日友人とお酒片手にぐだぐだと語っていた(事実月のとってもきれいな夜だった)
「その『自分は人とちょっと違う感性をもってますよ』的な感覚が嫌なのよ!」
友人はビールを机の上に叩きつけるように置き、声高に言う。何があったのかは知らないが、とにかく彼女はメールで「月がきれいだね」なんて送ってくる男が相当いやらしい。
「かなは?どう思う?」
「そうだなぁ……」
月は好きだ(なんせ昔天文学者になりたかったのだから)。しかし確かにそこに隠れたメッセージを込めてくるのがインテリっぽくてわたしも少し受付無い。なんだろう、めっちゃメジャーなことなのに、俺って文学とかもちろん嗜んでますしね、みたいなニュアンスを出してくるのが嫌なのかもしれない。
「確かにいやかも知れない……」
「でしょーーー!」
その時だった。旦那(当時は彼)からラインが入った。表示された文字にぎょっとする。
『月がきれいですね』
うわっ、咄嗟に声が漏れる。
「どうしたの?」
「話していたら来ちゃったよー!うぇ。そのタイプだったか」
すると続いて『新着メッセージが届きました』の文字。
「月の写真が来たっぽいねwww」
二人で画面を開くと、そこには裸でうつ伏せに眠るわたしが写っていた。
「!?」
手にはブラジャーを握り締め、下半身はジーンズを脱ぎかけて諦めた後。パンツが半分くらい見えている。場所はうちの廊下だった。
『先日飲んだ時に、泥酔して行き倒れた姿です。月があまりにもきれいだったので送ります』
そうきたか!たまらず爆笑してしまった。そしてなんだかたまらなく彼のことを好きになったことを覚えている(自分のときめきポイントは、未だに自分でもわからない)
結婚した今も彼は時々わたしの泥酔して行き倒れた姿を写真に収め、送ってくれる。今は2人の子供つき。
泥酔したとんでもない姿をも、面白がって愛でてくれる旦那。
そしてそんな寛容さにときめくわたし。
今日も家庭は平和だ。
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