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明日の私自身は勇気を意識することができるだろうか

久しぶりに、多角的に刺激溢れる映画を見た。

エゴの強い社会のルールや、性差が作る偏見や抑圧に反発するということはとてもストレスフルなことであるが、それに彼女達らしいアプローチで立ち向かっている姿が勇敢で…、(その勇敢であるという言葉に落とし込めないくらいの力強さだ!)きっとその態度でしかいられなかったのだ。彼女達をアクティブに奮い立たせるのは決して怒りだけではなく、「ハイクを使ったファッションショー」というアイデアやクリエイティビティもそうさせる。一貫した姿勢と強靭さを作るのも結果その社会全体の抑圧が起因していて、苦しさや悲しさに背を向けないという意思表示にも感じる。主人公には沢山の挫折が襲いかかるが、彼女自身が自分らしく生きるということに対峙するものとしては非常に大きく重荷な事象ばかりであるように最初感じたのは私がこの映画の撮影地や説明なしに上映中止となったというアルジェリアからは遠い日本で暮らしているからだと思ったが、よくよく考えると似たような出来事は他の国でも、そして日本でも、具象化された現象は違えど繰り広げられている事である。そう思うと他人事ではないな、自分の身にもいつか起きる事かもしれないなと背筋が伸びるし、私自身も緊張しながら「こんな時自分だったらどんなアプローチをするのだろう、どうやったらこの悲しみを乗り越えられたのだろう」と同時に考えることを止めることなく視聴した。

明日の私自身は勇気を意識することができるだろうか。
私の場合は時に大きなストレスが精神の限界を迎えるとその圧力を時に心の中で無かった事にして放っておく事に専念していたような人生ではあったが、それは自分や環境に余裕があるからこその逃げでもあると思っていて、そうではいられなかった映画の彼女達を見てからだと、どうしても向き合う事への重要性と意識が自分の中にふつふつと生まれる。私にとっては外の世界全てが刺激的で、情報過多であるほど疲弊感を誘発させる。こう捉えてしまうのも自身が内向型の思考であるからであり同時にアクティブなことに対し消極的でもあるからである。そんな私でもこの映画を見た後なら普段は耐えられそうにないストレスにも前より触れられるように、解消できそうな気持ちになっている。

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私の内的世界は圧倒的にアイデアの恵みに溢れている。その内側の思考に触れる時間を人生の中でより多く選択するということが創造性への直結であり私自身の自分らしさを尊重することである。その世界を自分で選択し責任を持つ事自体が自分にとって重要で、端から見れば自分の世界の殻にこもるだけのように見えているものだとしても私にとっては最短で世界全体を見る行為だと思っている。

勿論私も生活していく中で外的要因でも形成される自我もあり、他者との関わりから自身を見出す事もある。そして出会う他者達も独自の自分らしさを構築していて、自分らしくあるプロセスもそれぞれ自由に選択しているものなのだといつも再意識している。もしかしたら新しい土地、職場、環境の中で0から1に自分らしさを再構築したい人もいるかもしれない。 相手の思う自分らしさを許容したり適切な距離を探ることが必要な事で、互いに圧力だと思わない意識を作ることになる事なのではないかと映画を見て改めて思う。

私も自分の作詞した音楽が「ふさわしくない」と言われ放送を取り止められたり、当時通っていた高校の文化祭で装飾として使用するイラストに「その高校の制服を着た”茶髪”の女の子」を描いたが「ふさわしくない」と言われ使用させてもらえなかった。わざわざ別室にまで呼ばれて指導しているような言い方で!まるで悪い事をしてしまったかのようだった。 一過性の正義は凶器にも、狂気にも感じることがある。私達も時代を作る参加者だし、地球の共同制作者だ。これから私たちにはどのような選択が必要だろうかとずっと考えていきたい。そしてこれらの私の言葉や感想が、様々な抑圧への様々な戦い方の後押しとなれたら。


【著者】なみちえ(アーティスト)
1997年生まれ。東京藝術大学先端芸術表現科在籍。着ぐるみなどの立体造形を中心に、ラップ・詩・歌・身体パフォーマンスを用いる。KAAT×高山明/Port B「ワーグナー・プロジェクト」(2017)ワーグナークルー。未来ドラフト2018 ムラサキスポーツ賞・オーディエンス賞受賞。東京藝術大学学内賞平山郁夫賞受賞。
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