「奇特な病院」作業効率科
※連作短編小説ですが、1話でも完結します。
第45外来:作業効率科(担当医 越智健斗)
整理整頓科の須藤先生に言われて、この奇特な病院の作業効率を考えて、科を整理しろという特命を受けたのは、3週間前のことだった。
俺は、まず全体像を把握しようと、各科を訪れて、様子をうかがうことにした。
そのことが、各科の先生たちの反感を買ったようだった。
暇科の日野先生には、
「この科は暇じゃないですからね」
と目をしっかり見て、お叱りを受けた。
思い通りにならない科の瀬川先生には、
「あなたの思い通りにはさせないわ」
と嫌味を言われた。
俺が言い出したことじゃないのにな。やってられないぜと思いながら、それでも須藤先生の顔色をうかがいながら、俺は、なんとか自分の仕事をやり遂げようとした。
作業効率なんかこれだけの科を作った院長が最初に考えるべきなんだと思っている。
それか整理整頓科の須藤先生の方が、みんなに恐れられているんだから立派にできるはずじゃないか。下っ端の俺なんかに何ができるんだよって心の中で思っている。
こんな目にばかり科の宮城先生に会ったときに、俺は思わず、
「なんで俺がこんなことをしなくちゃならないんですかね」
と相談したら、
「とにかく頑張ってくださいとしか言えないです」
と苦笑いされた。
なんだよ、この奇特な病院を一番必要としているのは、俺じゃないかという気がしてきて、どの科を削って、どうこの病院の作業効率を上げるかなんて大問題を俺が解決できるわけがないという思いが強くなるばかりだった。
だから、俺は、須藤先生にこう提案した。
「まず俺も作業効率科を立ち上げたいです」
そうしたら、須藤先生は、思いっきり笑い出した。
「お前、ミイラ取りがミイラになってどうする」
そうなんだ、俺は、奇特な病院の作業効率を上げるために、さらに科を増やすというミラクルをやってのけた。
秘密科の六井先生に、この作業効率科を作るって話を正式決定前に告白したら、大笑いされた。
俺は、それ以来、作業効率について患者さんからとにかく学び続けている。
「それで、作業効率を上げるには、どうすればいいと思いますか?」
それが、俺の今や名文句さ。
みんな、お大事に。
(第46外来は、魅力再発見科です)
なお、奇特な病院第1シーズンは、魅力再発見科で一区切りとなります。
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