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粒ぞろいヒロイン(2/2)

 覚えのある匂いが鼻をついた。覚えのある黒いランドセルや小物などが目についた。胸の奥からジワジワと懐かしさが込み上がる。だがそのせいで、麗司はより大きなショックを受けた。

 部屋の奥のベッドの上に少女がひとり横たわっていた。稔里だ。丸い顔。太めの眉。低い鼻。そこまでは麗司の記憶の中の稔里と一致していた。だが、肌は青白く、腕や頬は極限まで肉が削げ落ち、長い髪はボサボサでまったく艶がなかった。

 麗司は噛み切らんばかりに唇を強く噛んだ。変わり果てた稔里の姿を直視することができず、そっぽを向く。だがここは彼女の部屋。幼い頃は頻繁に遊びに来ていた。そのため、前棚つきの学習机やカラーボックスいっぱいの漫画やラノベなど、当時もここにあった品々が目に映り、当時の記憶が否応なしに蘇った。太い釘を打ち込まれたように胸が痛かった。

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