【長編小説】陽炎、稲妻、月の影 #39
第5話 呻く雄風――(9)
この土地に人間が定住するようになってほどなく、俺は生まれた。
いや、生まれたという言葉は正確ではないか。神様というものは、人間の願いが寄り集まった結果、それを叶えるものとして顕現する。だから「生まれた」というよりかは「発生した」という言葉のほうが、張本人としてはしっくりくる。
ともかく、俺が土地神としてこの土地を見守るようになったのは、ここに高校が建てられるよりも、世界規模の戦争が起こるよりも、もっともっと昔、人間からしたら気が遠くなるよう