マガジンのカバー画像

長編小説『暮れなずむ秋と孤独な狛犬の歌』まとめ【完結済】

39
周囲から孤立している「僕」と自称狛犬の少女が、神社で歌の練習を通して仲良くなっていく話です。
運営しているクリエイター

#中学生

【長編小説】暮れなずむ秋と孤独な狛犬の歌 #1

10月2日(水)――(1)  僕は青空が嫌いだ。  理由は至極簡単、嫌なことを思い出すからで…

2

【長編小説】暮れなずむ秋と孤独な狛犬の歌 #2

10月2日――(2)    反射的に顔を上げ、声のした鳥居のほうを見る。  すると鳥居の下に…

1

【長編小説】暮れなずむ秋と孤独な狛犬の歌 #3

10月2日――(3) 「……は?」  少女がなにを言っているのか、咄嗟に理解できなかった。い…

3

【長編小説】暮れなずむ秋と孤独な狛犬の歌 #4

10月2日――(4) 「次、反対の腕だ」 「ああ、うん」  少女は態度を変えることなく、手当…

2

【長編小説】暮れなずむ秋と孤独な狛犬の歌 #5

10月3日――(1)  どんなに憂鬱でも、学校は休まない。  これは僕が半年前から自分に課し…

1

【長編小説】暮れなずむ秋と孤独な狛犬の歌 #6

10月3日――(2)  それが夢だということは、すぐにわかった。  だって僕が見ている光景は…

3

【長編小説】暮れなずむ秋と孤独な狛犬の歌 #7

10月3日――(3)  チャイムの鳴る音がして、僕は嫌々目を開ける。  その一瞬だけで、教室に気だるげな空気が蔓延しているのを肌で感じた。 「――それじゃあ、今日はここまでにします」  司会を務めていたらしい小山田さんの声に、僕はぼんやりと黒板に目を遣る。  そこには曲名の横に正の字が追記されている。おそらく、僕が居眠りしている間に多数決を取っていたのだろう。しかし、票数は見事に分散し、決定には至らなかったらしい。 「続きは、金曜日の学活でやります」  小山田さんの終了を告

【長編小説】暮れなずむ秋と孤独な狛犬の歌 #8

10月3日――(4) 「おお、アキじゃないか! また来てくれるとは、ワタシは嬉しいぞっ!」 …

1

【長編小説】暮れなずむ秋と孤独な狛犬の歌 #9

10月3日――(5) 「そうしたら、なんの話をしようかなあ」  足をぱたぱたさせながら、少女…

1

【長編小説】暮れなずむ秋と孤独な狛犬の歌 #10

10月3日――(6) 「――……と、まあ。こういう感じの曲だ。アキ、どうだった? ……アキ…

3

【長編小説】暮れなずむ秋と孤独な狛犬の歌 #11

10月4日(金)――(1)  かつて賑わっていたらしい商店街は、高齢化の煽りを受けて、ずっ…

1

【長編小説】暮れなずむ秋と孤独な狛犬の歌 #12

10月4日(金)――(2)  クラスの選択曲決めは、難航を極めた。  そもそも、昨日の学活の…

4

【長編小説】暮れなずむ秋と孤独な狛犬の歌 #13

10月4日(金)――(3) 「ふーふふふんふーん、ふーふふふんふーん、ふーふふふんふー、ふ…

1

【長編小説】暮れなずむ秋と孤独な狛犬の歌 #14

10月4日(金)――(4) 「それじゃあアキ、まずは腹式呼吸の練習だ」 「え? 歌の練習じゃないのか?」  少女と向い合せに立ったところで、僕は首を傾げた。 「良い歌声のためには、声の出しかたから練習すべきなのだ」 「へえ」 「というわけで、腹式呼吸の練習から始めるぞ。それができたら、喉の開けかたを教えよう」 「よろしくお願いします、コマせんせー」 「うむ、良い返事だ!」  張り切った様子で、ではアキ、と少女は姿勢を正す。 「足は肩幅に開いてくれ。次に、肩をぐっと上げて、す