29本目「ザ・タワー」【ほんのりネタバレ】
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映画についての基本情報
公開日:2024/4/12
監督:ギョーム・ニクルー(フランス)
まえがき
確か、「私はフランス語映画を観ると寝てしまう」という話を前に書いたかと思う。
しかし、先日観た「落下の解剖学」は全編フランス語であり、しかもアクション皆無であったのに眠気が襲ってこなかった。私はフランス語映画に勝利したと言えよう。
その余勢をかって観に行ったのが、このnoteで紹介する「ザ・タワー」である。「マンションの外が、謎の暗闇になっていて出られない」という設定はいかにもソリッド・シチュエーション・ホラーって感じである。予告で観た感じ謎も多く、好奇心をそそる。
フランス語+ホラーという未知の可能性を信じてペーパーは劇場に向かった。
感想など
この映画の感想を一言でいうと、「やりたいことはなんとなくわかるが、それはダメだろう」の一言に尽きる。
マンションの中に多様な人種が住んでいて、争う。
時間の経過とともに人心が荒廃して様子が変わってくる。
迫りくる死の受容。
この辺のことがやりたいのは、なんとなく分かった。
ラストの感じなんか特にそうだろう。主人公は身内の死に絶望し、それでも生に執着し、手段を選ばなくなり、しかし最後には死を受容するに至る。そんな一言でこの映画は終わる。
その間マンションの他の人々は同じ人種のみで協力し、食料を「生産」し、外敵(とみなした他人種)と戦い、新たな信仰まで生じる。
マンションの壁もどんどんマーキングされて汚くなるのはわかりやすい。
そういうところはいいのだ。やりたいことは多分しっかり出来ているのだ。
それ以外がダメなのだ。投げっぱなし過ぎるのだ。
多くの人が魅力を感じたであろう設定、「マンションを封鎖する闇」なんかも、何の説明も考察も劇中で話されない。そこにあって、出口を塞いでるだけ。殺人の手段に使われることもあったか。
封鎖の度合いもよくわからない内に進行していくが、何に連動してるのか全く説明がない。
そして、作品の舞台を長期スパンにしたせいで設定に無理が生じている。
この作品は5カ月→2年後→5年後と時間が進行していくのだが、登場人物が食ってるものの描写が雑すぎて、「そうはならんやろ」とツッコミをいれてしまう。犬猫を交配させて畜産まがいのことをしても、人間で同じことをしても、生み出せるカロリーは知れているだろう…。とても「5年」という時間に説得力を生み出せるものではない。
総じて、ワンアイデアだけで押し通そうとした感が強い。
そして、その方法は観客に疑問を抱かれた時点で失敗しているのだ…。
ペーパーお勧め度
★2。
最初の15分、シチュエーションが確立する過程は面白い。
その他の部分が気に入るかどうかは、状況の粗をどれだけ許容できるかにかかっているだろう。
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