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カラスからの警告

「カラスが窓ガラスに向かって突進して来たんですよ」

そんなことある?

と思いつつ、そう言えば昔、母の運転で車の後部座席に座っていたとき、フロントガラスに鳩が体当たりしてきたのを思い出しました。
どん!と鈍い音がなって、
「え、今のって…鳩?まじ?」
と驚き合って、当たった部分を内側から見ると、鳩の体液なのかなんなのか、脂っこい丸い汚れみたいなのが見えて、気持ち悪かったな。

だから、通っているジムの受付のお姉さんに、冒頭のカラス突進の件について聞かされたとき、最初は信じられなかったけれど、そういうこともあるかも知れんと納得しました。

思えばその日が、全ての始まりでした。

カラスに襲われる


”襲われる”ほどでもないのですが……。
まず、その日の帰り道。
公園の桜の木を見上げながら歩いていると、ありえないぐらいの低空飛行、かつ物凄いスピードで、私に向かって一羽のカラスが飛んできました。
小さな黒い塊がみるみる大きくなって、
うわ、こいつ完全に私にロックオンしてる、と気付いたときには、私の体はほとんど固まっていました。
5mくらい近付いてきたところで、慌てて避けました。
カラスってめっちゃ頭良いって聞くし、出来るだけ近付いてからでないと、避けても避けた先に方向転換されると思ったんです。

あれがツバメだったなら、
「もうすぐ雨が降るのかな」
以外に特に思うことはなかったでしょう。
なんなら、可愛いな。ラッキー。
とさえ思ったかも知れません。

でも、今度の相手はカラスです。翼広げたらさ、結構でかいんよ。
怖いっていうか、不気味でした。
偶然なんだろうけど、偶然とは思えなかったです。
なんにでも意味を見出そうとするのは人間の習性だけれど、あのカラスにはまじで、意図があるとしか思えませんでした。

つ(憑)かれてる?


なんの映画だっけな。
エクソシスト系の洋画だったと思います。
昔観た映画で、悪霊のいる場所に動物たちが野生の本能かなんかのバグで自殺しに来る。
みたいな内容のものがあって、それを妙に覚えていたから余計に、私何かに取り憑かれてんのかな、って瞬時に疑いました。
とにかく、カラスの動向に意志を感じ取ってしまいました。

そしたら、さっきまで綺麗だと思っていた桜とか、たまに寄るイタリアンのピザの看板とか、幼稚園から聞こえる園児たちの遊び声とか…。
いつもの景色たちに、避けられているような感覚に陥りました。
自分が景色の中でひと際浮いていて、全く馴染めていないんじゃないかって。
大袈裟ですね。
いや、ほんとそう。
でもね、それくらい凄かったの。
無っ直ぐに、躊躇なくこっちに向かって来るカラスって、結構インパクトよ。

やたらとカラスに遭遇する


それからというもの、やたらとカラスが目につくように。
日本って、こんなにカラス多かったっけ。
ゴミ置き場のゴミ袋は、カラスによってぐちゃぐちゃに破られて、中の生ごみが汚らしく散乱していました。
まさに荒らし中の現場に遭遇したときなんか、路地裏で不良に絡まれまいとするいじめられっ子になった気分で、静かに遠ざかりました。
駅でも、横断歩道でも、家の前でも……。
いつでもカラスに監視されてるような、居心地の悪さを覚えました。

ある日、SNSのリールで、カラスが男子高校生を追いかけまわすおもしろ動画を偶然見つけました。
そのコメント欄には、
「面白い!最高」
というものがほとんどだったのですが、私は笑えませんでした。
嫌な予感がしました。
若干ノイローゼっぽくなってたのかな。
もうカラスにまつわる全てのことが、私に対する何かしらの警告・暗示のように思えてきて、その予感が何かが分からないことに対する不安と、必ず不吉なことが起こるという予感が、ぶくぶく膨らんでるみたいでした。

夢に出まくる


どうしてくれんねん、
と思いながら起きた朝でした。

カラスの大群が私の寝ているベッドの中に入り込んで、くちばしで体中をつつかれる夢に、うなされて起きました。
それまでは、自分でもちょっと過剰反応してるなと感じていたので、家族にも友人にも、特に話さなかったんです。
話す必要のないことでした。
でもさすがに、睡眠に支障を来す段階になって、母に話してみました。

「あんたそれ、それこそあれちゃうん。フロイトの。夢なんたら」

私も、そうかも、と思ったのですぐに調べました。

”カラスに襲われる夢”

そこに書かれていたのは、
まぁ、やはりいろいろと不吉なことが書かれてあったのですが、主に「病気や事故などの災いの訪れ」を表すとのことでした。

そんでその日の昼過ぎ。
40度近くの高熱が出て、座るのもやっとで、喉は焼けるように痛く、水も飲めない状態に。
今すぐエクソシストを!
と言いたいところですが、冷静に発熱外来に予約とって行きました。

コロナ陽性でした。


初めて感染したのですが、いや、今までも何度か濃厚接触者になったし、無症状なだけだったのかと思います。
噂には聞いてたけど、めっちゃしんどかったです。
体中が痛かったけれど、特に、脳手術の傷跡がやたら疼きました。
しかもその状態が、だいたい四日間続きました。

やっとゼリーを食べられるようになった頃、興奮気味に
「あれ!予知夢やったな!」
と母と姉に言うと、

「あんた家の前の電柱に先月から貼り紙あるの、知ってたん?」
と聞かれてきょとん。

恐るべし無意識


私の家の真ん前にある電柱は、地域のごみ置き場に指定されています。
外に出て確かめに行くとそこには堂々と大きく

『カラス注意!!』

の貼り紙が。
もう一か月もそこにあるとのことでしたが、私は言われるまで全くきがつきませんでした。
絶対に毎日見ていたはずなのですが、無意識に沈められていたのでしょうか。

「あんたってたぶん、無意識に作用されやすいタイプやん」

言われたときには、そうかも知れん、と真面目に納得しました。
そう考えると、日々、意識的にも無意識的にも、人間の体って忙しなく外部の情報に反応してるんだなと改めて思います。

カラスからの解放


まだ多少倦怠感は残っているし、発症前よりも味覚も嗅覚も鈍い気はするけれど、
あれ以来カラスからのメッセージ(自分が自分に送ってただけだけど)は、ピタリと止みました。

読み返してみて、まだ若干興奮している感は否めないのですが、
潜在意識が形を変えて夢に出てくることもあるかも知れんなぁ。
と思うのと同時に、ビンビンに影響を受けやすい体質であるという自覚も芽生えました。

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